*しました発言アリ注意!


*アテムは駄目な子じゃないっていってやりたい(否定できていない)











続・彼はファラオ -9-





正直なところ、よく覚えていない。

ただ、
少し怖くて、
少し気持ちよくて、
とても嬉しかった。

それは体をつなげたとか、そういうことじゃない。

ドラマや漫画の女の様に、「私は遊びだったのね?」などと喚くつもりは無いのだが、
王の戯れでしかないと心のどこかで思っていた。
だからそれに溺れたくなかったのだと、今更になって思う。
自分は王の人形か愛玩動物なのだと、そう信じていた。

だから、嬉しかった。

ことに至るまでの経緯は何時もの王だったが、
触れる指は、温かかった。

自分が玩具ではなかったことに酷く安堵したと同時に、
ジワリと体にうちから、頭がそれと判断する前から、
凄く、嬉しくなったのだ。

初めてだった。
血の繋がらない人間に、こんなにも大切にされたのは。



それ以外に遊戯が覚えていることといえば、
自分を抱く男の顔に一切の余裕も冗談も無かったこと。
そして、赤い瞳。
吸い込まれるように見入って、
そこに自分が映っているのは物理的な話だけではないのだと一瞬戻ってきた我に思った。

あれから一眠りして、
すっかり何もなかったかのように日は昇っている。
こんな風に目を覚ましたのは自分だけじゃないことくらい解っているし、
感傷的でもない。
ただ隣に王の姿が見えないことが物足りなかった。

遊戯は昨夜が夢でなかった証拠を抱えながら、
のそりと起きだして、隣にいただろうその姿を求める。

王の部屋である前に友人の部屋であるこのマンションの一室は、
男1人暮らしとは思えぬほどに整理がされている。
友人らしさを垣間見て苦笑しながら、ドアをそっと開けると、
すっかり暑くなった朝日を浴びて、優雅にコーヒーなど飲んでいる姿がある。
「あ、」
と思わず漏らした声に気づいて男はふと顔を向けた。

「起きたか、相棒。」
「アテム・・・。」

キミは、知っているの?

昨日の王からの話からすれば、
お互いに知っているようだけれど。

「相棒、心配する必要はないぜ?俺は大体知ってるからな。相棒と、もう1人の俺のことは。」

そう、優しく微笑まれて、思わず遊戯も笑ってしまう。

「あの日、俺が頭痛でさっさと帰って日に、俺は俺の中のもう1人と接触した。
いや、向こうがそれを望んで・・・。初めてのことだった。」

不思議な話だが、
それから会話が出来るようになった。
そして同時に同じものを見ることが出来るようにもなった。

「昨日のことも俺は知っている。」
「昨日、え、あ、ちょ、あの、」
「大丈夫、見てないぜ?」

プライバシーの侵害だからな、と、その様子は、
不思議だ、何時ものアテムとは全然違った。

「最初は流石に驚いたが・・・俺の記憶が時々無くなるのは、
今に始まった話じゃないんだ。」
「そうなの?」
「機会があったら話しても構わないぜ?」
「聞いてみたいよ。」

じゃあ、今度な?とアテムはすっと立ち上がり、
「相棒も何か飲むか?あ、ああ、その前にシャワーでも浴びるか。」と
どうして、そんな風に接することが出来るのだろう?

もし、自分が二重人格だったら?
遊戯はそう考えてみるが、
ばつが悪くて気の利かない反応しか出来ないに違いなかった。

すごいね、というわけにも行かず、
おどおどしていると、アテムはふと振り返り、
目が合った。

「ああ、相棒、1つ頼みがあるんだ。」
「昨日の・・・こと?」
「いや、まぁ相棒のことだからこんなことがあったって誰にも言わないと思うから、
気にしていないんだけどな、」

そう、アテムは此方へ向き直った。

彼のなれた白いシャツは日差しを鈍く返していて、
その顔はとてもさっぱりしている。
妙なすがすがしさが、彼を包んでいた。

多分、
彼に想いを寄せる人、そうでない人も、
魅入ってしまうようなそんな風景だった。

「簡単な話なんだ。はっきりとした返事が欲しいだけだ。」
「返事?」
「そう、相棒から、相棒の口から聞きたい。相棒じゃなければダメなんだ。」
「ボクの?」
「ああ。そうでなければ、俺はもう前へ進めない。
俺は、ずっと足踏みをしていた。それは自分の気持ちに気づいて初めてわかった。
俺は、負けなければいけなかった。」
「負けるって、あの、」
「王との闘いに・・・。」

あと、一歩だった。
次、クリボーでも何でも、召喚できれば勝った。

そこで、アテムの心は驕ったのだ。

遊戯を守れると。
そしてあわよくば、
自分が遊戯の一番に成れる、遊戯を自分のものに出来る、
遊戯の心を奪える、と。


「闇のゲーム、あれは、心の強さ。欲を見せれば負ける。
闇とは、罰ゲームの話じゃない、自身の闇だ。
俺は驕り強欲になり闇が増した、だから負けた。」

敗因に、自分の心が映っていた。

「だが、同時に気づいた。俺は相棒が好きだったんだってな。」

「アテム・・・?」

「俺は知っている。相棒が誰を好きなのかも、その相手がどれだけ相棒を大切にしているのかも。
だが、それは、俺の想像とその相手のいうことだけで、
それ以外、何の確証もない。
相棒の気持ちに関することは、全て想像でしかない、だから、
相棒の口から、はっきり聞きたい。」

アテムはまるで緊張や興奮などないかのように、
何時も以上に冷静で、
真っ直ぐな視線は、真摯的なもの以外の何者でもない。


「相棒、いや、遊戯、俺は遊戯が好きだ。」


それを、受け止める遊戯もまたそうあるべきだった。

アテムのいいたいことは解った。
そしてそれに対する遊戯の答えは、今朝でたばかりだ。

「アテム、ボクはキミにそう言ってもらえて嬉しいよ。
確かに、ボクはキミが好きだ。でもそれは、キミの望む形とは違うんだ。
ボクが“うん”とか“はい”とか答えるには、キミと同じ気持ちじゃなきゃいけない。
だから、ボクは“うん”とか“ボクも”とか言っちゃいけないんだ。」

ふるというのは、たとえそれが事実でも相手を傷つけることだと思っていた。
だから、伝えるのは苦しい、アテムを傷つけるようで。

だが、彼が前へ進むためには、それが必要だという。
此処で自分が偽ることの方が、彼を傷つけるんだろう。

ならば、事実を告げるのみ。

「ボクが好きなのは、彼だ、ファラオなんだ。
ボクの彼はファラオなんだ。」

ごめんね。ありがとう。

そう告げた。
すると、アテムはふっと笑って、

「ありがとう。」

というのだ。

「これで、俺は、前へ進める。相棒にとって嫌な事だとは思った。
でも、1つケリがついたんだ。」
アテムは何処までも優しいのだと遊戯は思った。
彼にならば、自分なんかよりももっとイイヒトが見つかるに違いないから。
そう思えば遊戯も笑って。

「さて、シャワーでも浴びるだろう?」
アテムは何もなかったかのように話を戻し、遊戯もお言葉に甘えて借りることにしたのだ、
が、
アテムが遊戯の隣を通り過ぎる際、耳元で囁いた。


「墜とされる覚悟はしておけよ?相棒。」

え!?と声を上げた遊戯を見て、クスクスと笑ったまま去ってしまった。
固まった遊戯だけがそこに残されていて、口をパクパクさせている。
彼の前進とは、なんなのだろうか。

いや、何故そんなに自分にこだわるのだろうか。

「わかんないよ・・・。」

解るわけもなかった。






『話は済んだか?』
「おかげさまでな。」

律儀にも2人のやり取りを見ていなかった王は、
妙にさっぱりとした顔のアテムが無償に気になった。

大体のことは解っているのだが。

「相棒はあんたが好きだと言ってたぜ。」
『聞く必要も無い話だ。』
「溺れられるのは今のうちだぜ?王サマ。」
『何?』
「ダモクレスの剣っていうやつだ。」

そうニヤリと笑った。

『俺はたとえそれが知らしめる為であっても、
お前に味合わせるつもりは無いが?』
「俺はあんたの赤絨毯になるつもりはないぜ。」

負けて尚、強さを見せるもう一人の自身に、
王も笑った。




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決着はついたもよう。

泥沼は書きますが、
気持ちがあっちへこっちへ、というのはどうにも苦手です。
なので、直球(笑)

9で終わりと言うのは何だかきりが悪いので、
エピローグ的なものをつけて終わりです。

いやはや、此処までお付き合いいただきましてありがとうございました。



(08.04.13)AL41