続・彼はファラオ -終-
ボクは、武藤遊戯、16歳。
この春童美野高校に入学して、とうとう高校初めての夏休み。
今まで友達らしい友達なんか居なかったから、
友達が一杯出来たこの夏は、凄く楽しみ。
新しい環境だから何か変わるんじゃないか、
楽しい高校生活が始まるんじゃないか、
そんな希望を持って過ごした一学期。
ボクは、春、いや、もう5月6月だったけど、
あの頃、周りで起きてたことは、ボクにとって、非日常的なことだった気がするんだ。
多分、ボクの心はずっと荒れてて、
現実を認めたくないような、そんな感じだったんだ。
でもね、
何だろう、今は、
ボクが望んでいた形とは違ったよ、
でも、
希望が叶っちゃったんだ。
ボクは今までとは比べられないくらい、楽しい高校生活を送ってる。
友達もゲームをする仲間も居る。
まるで夢見たいだ。
それだけじゃない、ボクの生活環境は本当に大きく変わった。
吃驚な話なんだけど、恋人が出来た。
その人は、何時も居ないんだけど居るんだ。
そう、友人の中のもう1人の人格、名は無いけど、王と呼ばれ、自称する人。
複雑なのは、
その友人アテムにも、理由はわかんないけど、告白された?のか?な?
それで幼馴染の杏子はまだアテムのことが好きだから、うーん、難しいよ。
杏子には幸せになってほしいけど、
でも、たとえ杏子の好きなアテムの中の人格だとしても、
ボクは彼が好きなことに違いないと思うんだ。
ボクが付き合ってるのが王だとしても、
杏子にはっていうか傍目にはアテムと付き合ってることになるんだよね・・・
なんか、複雑。
「どうした、相棒。」
「えー・・ってアテム!?もう驚かせないでよー。」
「そんなつもりじゃなかったんだが・・・なんだ考えことか?」
「んー、まぁね!」
キミのこと、なーんて言えないよね!
「一学期のことをね、色々考えてたんだ。」
「なんだ追試か?」
「違うよ!・・・追試は一点逃れだったよ。キミのお陰でね。助かったよ、本当に。」
「まぁ俺も相棒が追試になると遊び相手が居なくなるからな。
それに、」
そういいながら指で頭を突きながら、
「追試の存在を知るや否や、『遊戯が追試にならないようにしろ』って、
毎日うるさかったんだぜ?」
と、苦笑する。
アテムと、アテムの中の人=王は、なんだか話が出来るらしくって、
いいなぁ楽しそう。
兄弟みたいな感じなのかな?
ボクも兄弟がほしいな・・・
「キミとファラオはすっかり仲良しなんだね。」
「まぁ、体は共有しているわけだし、仲が悪いとやってられないからな。」
「割り切ってるんだね。」
教室で駄弁りながら、そんな事を話してると、
ドアが開いて、
海馬君が入ってきた。
ボクのこの一学期を語るには欠かせない人だ。
語る必要も無いんだけどね
ボクが彼を恨んだり嫌ったりしても普通だって、アテムは言うんだ。
そのくらいのことが起きた。
まぁ・・・そうなのかな。
でも、ボクが思うのは、
海馬君にももう1人人格が居るんじゃないかってこと。
誰にも言ってないけどさ。
だってあの時の海馬君は絶対にいつもの海馬君じゃなかった。
それに、あの後あった海馬君は何時もの、ボクが知ってる海馬君だった。
きっと海馬君にも別の人格があって、
海馬君はそれに気づいていないんじゃないかなって、ていうのがボクの仮説。
証明は出来ないけどね。
だけど、ボクはボクなりにボクの仮説を信じていて、
だから海馬君を責めることは出来なくて、
ただ前の様な決闘仲間で居たかったし、それを海馬君も受入れてくれて、
海馬君とボクは、以前のような間に戻っていた。
ただ、
あの事件を客観的に見てたアテムと王、特に王はいまいち割り切れないらしくて、
「海馬君おはよう!」
そう、ボクが声を掛けるたびに、
「遊戯。気をつけろ。」
ってそう、牽制するために出てくるんだ。
何を牽制する必要があるんだろうね。
「海馬君も成績表?いいよね、海馬君は・・・。」
「何がだ。」
「だって、成績良いでしょ?」
「ふん、この程度のものが出来なくてどうする。」
この程度のものに必死になってアテムに教えてもらったボクは一体・・・
「なんだ、遊戯、今回は追試じゃないのか。」
「えへへ。アテムが教えてくれたからね。」
そういうと、海馬君は睨みつけたままのアテム、いや今は王なんだけど、彼を一瞥して、
複雑な顔をした後で、
「お前にしてはがんばった方か。」ってさ。
「まぁ、遊戯が何点とろうが俺が追試などなかったことにしてやる。」
また、もう、何を言い出すんだか。
「相変わらず遊戯には甘いな、この男は。」
「当然だ。遊戯に優しくしないで誰に優しくしろというんだ。
そもそも貴様は、何故こんな学校に通っている。」
「貴様には関係の無いことだ。」
この2人、なんだか似てるよね、って、
そんなこといったらまた大問題に発展するね。
でも、解るよ。
何となくだけど、本当に憎みあってるわけじゃないんだってさ。
王は王なりに、海馬君は海馬君なりに、お互いを面白がってるんじゃないかな。
どんな形でも、仲が悪いより良いほうが良いに決まってる。
ボクは2人を見てて、なんだか楽しくなったらしくって、思わず笑う、と、
「遊戯、あまり他人に笑いかけるなといっているだろう?」
だって。
「もう、それ、意味わからないよ。それに、そんなに気にしなくたってさ、」
ボクはキミのものなんだから。
とは流石にいえなかったよ。
でも、伝わってるって信じてる。
だって、フッと笑ってくれたからさ。
そうこうして、
ボクの夏休みは始まったんだ。
沢山の友達と、決闘仲間と、
恋人と。
何となく、悩みもありながら、
それでもきっと楽しい夏が来るんだ。
夏はイベントが一杯あるから、
一つ一つ楽しい思い出を作っていこうよ。
ね!ボクのファラオ。
「どうした遊戯?」
「何でもないよ。楽しみだなってさ。」
「何がだ?」
「夏休みだよぉ・・・。もう、アテムから聞いてないの?」
そう聞けば、暫く黙りこくって、思い出したらしく、
「ああ。長期休暇か。」だって。
そんな社会人みたいなこと言わないでほしいよ。
だって、ボクらはまだ高校生。
遊んで笑って、人を好きになって、
それって普通の高校生活だよね。
だから、ボクは普通の高校生。
最初にも言ったけど、
ボクが望んでいた楽しい学園生活は来たんだ。
順調じゃあなかったけど、
ファラオが運んできてくれたんじゃないかなって、ちょっと思ってる。
あの、非ィ科学的な力じゃなくってさ。
兎に角、
ちょっと困難も事件もあったけど、
やっと、ボクの日常が返って来て、それと一緒に
順風満帆な夏休みがやってくる!
そう、やってくるハズ!
うん、きっと来るよ、
来るはず!って、
思ってた。
そして来た。
ただ、またしてもその順風満帆な普通の高校夏休みは一ヶ月しか持たなかった。
続・彼はファラオ -完-
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間に合わせの10話
あのファラオが居る限り、
社長やアテムが居る限り、
遊戯に安寧な日々は来ない。
そんな気がします。
この作品は結構感想とかいただけて、
衝撃的な思いつきの割には、楽しんでいただけたのかと思っています。
連作はココで一段落ですが、
何かネタが思い浮かんだら、また書くかもしれません。
何はともあれ、
今までお付き合いくださった皆様!
本当にありがとうございました!
(08.04.21)AL41