*決戦(笑)
許せないという感情の前に、
自体の把握が出来なかった。
俺達はどうこういいながら、良い決闘仲間だったはずなのに。
何故、傷つけあっているんだろう。
何があってこうなってしまったのだろう。
理由なくこうなる運命だったのか?
それとも、
王が原因なのだろうか。
だが、
俺は俺の体に住む者を、
相棒が想う男を、恨む事なんか出来なかった。
だから、何も考えたくなかったのかもしれない。
何をも責めることが出来なかったんだ。
続・彼はファラオ -6-
アテムが何とか邸へ辿り着くと、
侵入を制するものを、王が不可思議な力で全てねじ伏せて、
自室に居ないのを確かめると、
メイドから話を聞きだして、
アテムの入ったことのない地下へと進む。
廊下は薄暗く、
人が利用している形跡はなかった。
正直なところ、気味が悪いというのだろう。
アテムも王も大して気にならないが、
廃墟のような空気が流れていた。
何処からともなく臭う鉄の臭いは、まるで血のようだ。
『相棒がこの先に・・・?』
「そうでなければ、あの女にまた吐かせるまでだ。」
何故、海馬は相棒を連れてこんなところへ来る必要があるのだろう。
「決まっている、ヤツが遊戯を欲したからだ。」
心を読まれていたらしいが、都合は悪くなかった。
『だが、何故・・・?』
「貴様はわかっていない。
人は常に変わるものだ、何のきっかけがなくともな。」
それは、解っているつもりなのに。
「貴様の知っている海馬という男。
それはヤツの一面にも足らない一部で以って海馬という人間を知っているだけだ。
貴様の知っている海馬という男は、完全な海馬ではない。」
確かに、
アテムは海馬がどんなデッキを好むのか、どんなスタイルで決闘をするのかは知っているが、
過去や生い立ちに関しては、少し知っているだけで、
そこにどんなトラウマやコンプレックスを持って生きているのかなんて知らない。
『海馬は、何かあって相棒を・・・』
「理由などどうでも良い。
今はただ、遊戯を助けるだけの話だ。」
王は、躊躇いなく突き当たりの部屋のドアをあけた。
ドアノブに手をかけた瞬間に、カチリと鍵が開いた。
ドアの向こうに広がった光景に、
アテムは、
王に遊戯の写真を見せ付けられた時とは比べ物にならない衝撃を受けて、
言葉と言う言葉を失い、歩くことさえ忘れていた。
「来るとは思っていたぞ、アテム・・・いや、王か。名も無き王。」
質素な寝台にすわり、此方を愉しそうに見ている海馬と、
寝台に横たわり、目隠しをされてぐったりしている遊戯。
ブラウスは肌蹴られて、ズボンは床に落ちていて、
腕は背に回されていた。拘束されているのだろうか・・・。
肌の上で何かが怪しく光った。
空っぽだった頭にとっさに浮かんだものを必死にかき消して、
しかしそれでも尚浮かび続け、
否定の言葉はまだ忘れたままだった。
「やはりか。大層な趣味だな。」
「貴様ほどではない。」
じり、じり、と歩み進める。
「さぁ、遊戯を返してもらおう。」
「断る。」
愉しそうに笑ったのは海馬だけではなかった。
王は、ニヤリと笑っていた。
アテムはただ、見ていることしか出来なかった。
関わってはいけないと思ったのだ。
何より、遊戯が気になった。
見たくは無い。
見てしまったら、本当に全てが壊れてしまう。
そんな気がしていた。
だが、
王の言うように、アテムの知る海馬が、海馬の一面でしかなくて、
本当はこういった趣味を持つ人間であるのなら、
全くもって誰を責めることは出来ない。
受入れるだけだ。
「ああ、いい。それでいい。
貴様を叩きのめす丁度良い理由になる。」
「叩きのめす?俺をか?」
海馬は壊れたように笑い出し、
「無様な姿を晒して、俺の前に跪け」と怒鳴りつけた。
だが、それに王は屈することも、いきり立つ事もしない。
「ゲームだ、海馬。」
まるで無反応な王が放った一言、
海馬が食いつかないわけがなかった。
「ゲーム?この俺にか。死にに来たか。良い度胸だ。」
「ただゲームじゃつまらないだろう?」
何処からこんな余裕が生まれるのか解らない。
だが、
王はフフと笑って、
海馬を睨みつける。
「闇のゲーム。」
そう言った瞬間に、
王の額にウジャトが浮かび上がる。
『何だ・・・?』
思わず声に出た言葉が伝わらなかったのは幸いか。
辺りは毒々しい霧のようなものに覆われて、
床はまるで、王の心の部屋の如き石畳に、
壁もまた遺跡内部のようになっていた。
「闇の、ゲーム?」
「何がいい?そうだな、確か貴様はカードの次にチェスが得意と言っていたか。
遊戯から聞いた話だがな。」
ならばいい、貴様に塩を送ってやる、と
2人の間には、音もなく、
床には市松模様の碁盤目が浮かび上がり、
腰ほどの大きさの駒が32並べられていた。
海馬側には白、王の下には黒。
「チェス・・・?これが闇のゲーム・・・?」
「やってみればわかる。」
さぁ、最初の一手、どうでるか?
それとも出せないか?
恐れているのか?
「俺が恐れるなど!!」
一方的な展開に海馬は痺れを切らし、
しかし勝負を売られて買わない男ではなかった。
闇のゲームは始められた。
駒が大きい以外に何が違うというのか。
アテムはただそれを見ていた。
どちらに勝ってほしいか・・・?
そんなことは微塵も考えて居なかった。
大した問題ではない気がするのだ。
ただ、
遊戯だけがどうしたって傷つくのだ。
それを、癒せるのはどちらなのだろうか。
答えは、ゲームだけが知っている。
海馬の実力は知っている。
だが、
王はゲームが強いのだろうか・・・?
同じ体に住んでいながら、出会ったのはたったの数日前で、
何も知らない。
ただ、その遊戯への執着にも似た愛情が、
人を排することに戸惑いもないほど強いということだけは、解っていた。
王は自ら負けることなど選ばないだろう。
着実に進みゆくゲームを、見守っていた。
「貴様のルークは頂いた。」
王のビショップが海馬のルークを打ち破ると、
ルークは砂の様に消え去る。
「フン、ルーク如き・・・・・・!!!!」
海馬の足は、石の様に固まり、サラサラと崩れていった。
『な・・・!?』
「貴様、これは何だ!!!」
「言っただろ?闇のゲームさ。」
精神の問題だ、身体的に外傷はない、
などと、当たり前のようにそういう。
「ポーン以外の駒を失うごとに、体は崩れていく。
キングを失ったものは、最後、罰ゲームが待ってるぜ?」
始めたゲーム、
降参はしないだろうな。
「降参など、する気はない!だが、ルールも説明しないとは、姑息だな。」
「なんだ、ルールの説明がなければ受けなかったか?
それとも、
負けることを考えているのか?怖気づいているのか?」
「フン、俺は負けん。」
嘲笑う王に、海馬の心は動揺を見せる。
王は、強い。
そう感じた。
それは腕の話だけではない。
ゲームを左右する駆け引き。
王はそれに長けていた。
相手の得意なゲームで持って、自信を持たせておきながら、
すぐに自分の舞台へ仕立て上げてしまう。
それは駆け引きの強さ。
背筋に悪寒が走った。
遊戯を思えば王が勝ってほしいと思う。だが、
王の言う罰ゲーム。
罰ゲームへの過程でしかない今でさえ、
海馬の体は砂となって消えているのだ、
一体どういう罰ゲームを用意しているというのだろう。
アテムはやはり見守るほかなかった。
「チェックメイトだ、海馬。」
そう、王が笑うまで。
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背景素材:
歪曲実験室。を少し加工させていただきました。
今回は短めで。
漸く終わりが見えてきました・・・(え?)
あと、3回?位で終わる予定。
思えば、長編ものより、長くなってるな・・・。
最終的には長編が勝つのは解ってるんだが・・・。
(08.03.30)AL41