*アテムが駄目な子すぎる





視線を受けるたびに、僅かな息苦しさを覚える。

その目は俺を見ているのか?
それとも、
あいつを見ているのか?

答えの知りたくない問を繰り返していた。




続・彼はファラオ -5-






アテムは僅かな苦しみを残して、
なにやらさっぱりした気分だった。

あれだけはっきりと見せられれば、
遊戯に問い直す必要も無かった。

ただ、
体が戻ってきたときに唇に残っていた、
溶けそうな熱は確かに彼の心へ焼き跡を残した。

気になって仕方が無い。
焼けた場所が疼きだす。

遊戯が男と逢瀬をしている場面を見てしまっただけの話。
その男が、自分の体を使っていたから、少し気が騒いだだけだ。

アテムはそう考えていた。
ただ、それが火傷では無いと知るまでに少し時間がかかっただけだった。



いずれにせよ、すっきりしたアテムは、
翌日からは普段どおりに遊戯と接することが出来た。

お陰で、今日、
タッグの大会にも健やかに出場出来たという理由だ。

「折角大会に出るんだもん、優勝目指そうね!」
「ああ、俺たちなら絶対に優勝できるぜ!相棒!」

互いに、海馬に頼まれて出ているということはさっぱり忘れており、
純粋に勝利へ意気込む。

元々アテムは強かった。
ずっと王座に座っていた海馬をあっさり蹴落としたのは紛れもなく彼だった。

ただ、これはタッグ戦。
強い決闘者であっても、連携できなければ意味が無い。

前回大会優勝のアテムが出ると前情報で聞いていた他の出場者は、
それを期待していた。
なんせ一匹狼のような雰囲気を持っているくらいなのだから。

だが、残念。

アテムの相方は、アテムが「相棒」と呼ぶほどに信頼している人であり、
タイマン勝負でもアテムと互角の戦いをする遊戯である。
勝率はアテムの方が上だが、遊戯の読む力はアテムを凌ぐものがあり、
その上2人は、互いがどんなカードを好んでデッキに入れているかくらいわかっているのだ。

遊戯は個人大会に出たことがなかったので、
正しく大穴であった。
他の出場者が予想していなかったのも仕方が無い。



そして、結果、
決勝戦、
結局2人の思うような展開に乗せられて、
あっさりと玉座は譲られた。

「やったね!もう1人のボク!」
「ああ、相棒のお陰だぜ!」

純粋に喜んでいる
今、彼の目に映っているのは、紛れもなく自分だ

彼が誰を愛そうが、
自分は、彼の良き友人で居たい

そう、心を諭し、
ハイタッチを交わした。


2人の実力と絶妙なコンビネーションを知る友人たちも観戦に来ていて、
試合後彼らの元へと駆け寄ろうと思ったのだが、

どうにも過去大会の優勝記録を持つアテムは、
その手の雑誌の記者がやってきて、
何か一言!タッグ戦はどういう心境で?相手はどう決まったんですか!などと、
完全に行く手を遮られる。

一方遊戯は、「ボクそういうの苦手だからさ、適当によろしくね!」と、
上手い具合に逃げていった。


それから、
遊戯の姿を見ていない。



暫くして解放されたアテムは、
漸く仲間の下へ戻ることが出来た。

「すげぇ人気だな、アテム!」
「まぁ、当然よね。無敗だし。」
「ああ、そう、相棒は?」
「遊戯?見てねぇけど、あいつだって優勝したんだから、
案外どっかで捕まってるかも知れないぜ?」

そりゃあ、そうだろう。
容姿の似た2人は、会場に入る時点でだいぶ間違われていたわけだし。

行方が解らないことは不安だが、
いくら見かけが中学生以下だといっても、中身は高校生だ。
きっと何とか抜け出してくるに違いないし、
案外爺さんとか来ていて、話し込んでいるかもしれなかった。


割と楽観的、というか、事情を知らない友人たちは、
ニヒルな友人を冷やかしてから、
今日の決闘について口々に感想を述べる。
同じ決闘者の友人は、自分も出たかったぜ!と悔しがりながら、
今度はタグ組もうぜ!と、笑う。

なんでもない友人間の会話。

決闘で緊張していた精神は一気にほぐされて、
表情に乏しいアテムにも笑みがこぼれる。

暫く談笑していると、
今日の大会の依頼主の優秀な部下、個人的に言えば弟で名はモクバというが、
モクバが後ろから此方を呼んだ。

『あれはなんだ』

突然声が聞こえた。
と、いうより、脳に直接届くというべきか。

聞き覚えがある。
寧ろ1人しか該当しない。

アテムの驚きようは、友人にもわかったらしく、
しかし、上手い具合にモクバに呼ばれたのが原因だと思ってくれた。

他の友人がモクバと応答してくれている隙を狙って応答しておく。
この男は無視すると危険な気がする。

・・・気に食わないが。


「(あれは、海馬の弟だ。)」
『海馬の?』
「(海馬の会社の副社長って立場だが、相棒とは遊び仲間みたいなものだ。)」
『要は、海馬の差し金か。』
「(そういう考え方しか出来ないのか・・・)」

疑り深いところは、なんだか海馬と良く似ている気がしたが、
妙なことを言っては、
今度こそパンジステークの餌食だ。

「アテム、謝礼ってことで何か食いに行かないか?って、モクバ君が。」
「え、あ、ああ。」
「どうした?って、疲れて当然だよな。」
「大丈夫だぜ?」

頭がパンクしそうだ。
耳を介さない会話というのは、異様につかれる。

「さ、さっさと行こうぜ!」

モクバの誘いに、
「俺もなんか腹減ったぜ。」
「城之内は、何もしてねぇだろ?」
と、行く気満々なのだが、

「だが、相棒が。」

相棒が消えた。

俺も消される。

本能は囁く、
いや、
さっきからずっと脳にそう囁かれ続けている。

「あ、遊戯か?そういや居ねぇな。
折角主役なんだし、揃って貰いたいんだけど・・・。
磯野ー。」

後ろに立っていた人物にそう声をかければサングラスをかけたその男がやってきて、
「遊戯探してきて欲しいんだけど?」
と、命じるが、
頼れる友人たちは、
「皆で探した方が早いぜ!」と
手分けして探そうとする。

確かにそれの方が早いだろう。

だが、
モクバはそれを了承しない。

彼なりに気遣いだと考えてしまうのは、
気の良さが裏目に出たとでも言えばいいのだろうか。

彼の言葉を聞かずに探しに出て行ってしまったとはいえ、

誰も不審に思わない。

ああ、そうだろう。

『誰も、何も知らないのだからな。』
「(どういうことだ?)」
『あの弟はグルだ。』

―俺の大事な遊戯は、隠された―

「(意味が解らない。)」
『変われ。』
「(ちょっと、まt)」

あっさり引きずり出された気分だ。

体はすっかり王に奪われていた。

この傍若無人そのものの王に、
アテムが演じきれるわけは無い。

この存在が知れたら、アテムはどう説明すれば良い?

下手なことはして欲しくないのだが、

「遊戯は何処だ?」

と、モクバに突っかかっているだけでもう希望は絶たれたに等しい。

「どうしたんだよアテム。」
「遊戯の居場所を聞いている。」
「会場のどこかに居るんだろう?」
「貴様は知っているんだろう?」
「し、知らねぇよ・・・!!」

「それは貴様の判断か?それとも兄に命じられたからか?」


ばれた理由は解らない。
だが、兄が出てくる時点で知られていると考えるべきだった。

「アテム、何を」
「俺が聞いている。俺の問に答えろ。」
「聞かれて答えるわけには行かないぜ!」
「言わないのであればそこまでだが。貴様の反応はつまり、
兄に言われたと言っているようなものだが。」

貴様が何も言わないのであれば、兄のところへ向かうまで。

「それは、絶対させないぜ!!」
「せいぜい粋がれ。その分貴様の兄が貴様の分も罰を受けるだけの話だ。」

兄と言われれば言われるだけ
弟は必死になる。

「兄サマに手出したら許さないぜ!」
「出される真似をした兄を恨むことだな。」

モクバの顔は青くなっていく。
あの鋭い視線は、本気としかいえない。

「ガキが。そうだな、貴様はせいぜい兄を誇りに思うことだ。
貴様の兄は優秀だ。俺を怒らせることに関してだけはな。」

兄の元へ向かおうと踏み出すと、
それでも必死にモクバは行く手を阻む。

「絶対ダメなんだ!兄サマと約束したんだ!」
「死にたいのか?」
「殺せるもんなら殺して見ろよ!」
「はっ、いいだろう。」
『良くない!!俺に前科をつける気か?』
「ついたところでなんだ。」
『相棒に会えなくなるぜ・・・?』

アテムは必死だ。
そりゃあ当然だ。

「・・・仕方が無い。」

相棒の名さえ出せば割と話が出来るらしい。
アテムはとりあえず前科は回避できたが、

「どけ、クソガキが。」

王の暴走を止める事は出来ない。

一睨みきかせると、
モクバはまるで石像の様に固まった。

『!?』
「案ずるな、殺しはしない。面倒ごとが増えるからな。
こんなクソガキよりも遊戯を案じるべきだろう?
海馬の居そうな場所は何処だ?」
『海馬が此処へ来るとは聞いていないが・・・。自宅か・・・?』
「自宅、フン、そうか。遊戯を連れて自宅へか。」

よほど、痛い目にあいたいらしいな。

「生憎海馬の家は知らん。向かえ。」

すっかりパシリになってしまった。
城之内たちには後で知らせれば・・・って、
固まったモクバを見つけられたらどうなることやら解らないが、
今はそれ処ではなさそうだ。


アテムはただ、海馬の邸へと走り出した。


パシられるのが苦でなかったのは、
アテム自身もまた、遊戯の身が不安だったからだった。

何故?
彼はまだ、その理由に気づいては居なかった。





前のターン!次のターン!






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背景素材:歪曲実験室。を少し加工させていただきました。



先生、もう泥沼とかそういう境地じゃないです。
粘着です、これ。
両面テープみたいな・・・

書いてる間は麻痺してるんですけど、
書き終わって読み直す時間は拷問に等しい。

でも、これ以外の展開が出てこないという、低脳。



して、

次の話の前に、1つエロが挟まります。
読まなくても話が通じるようにはします。
公開制限!
出口は封鎖したぜ!

(08.03.17)AL41