*ドSファラオ降臨?
*その癖にベタぼれなんだけど、何この人
*アテムがかわいそうです。

*最早表総受け。

*長いです







貴様は、

愛する者を守りたいと思うのだろう?



続・彼はファラオ -4-






寝つきは最悪だった。

睡眠時間が少なくても問題のないアテムでさえ、
断続的な眠りはしんどかった。

出来ることならば全てを忘れ去りたいが、
教室に入るなり、真っ先に顔を会わせるのだ。

仕方が無い、隣の席なのだから。


―お前もみたことがあるはずだ、そう、俺のものだというのに、
 誰彼構わず笑顔を振り撒くやつだからな、
 お前にも見せているのだろう?―


ああ。
彼は何時も笑顔だった。


「どうしたの?寝不足?」
「あ、ああ、まぁな。」



不思議だった。

今まであんなに仲が良かったのに、
突然2人の間に、底なしの裂け目が出来てしまった気分だ。

目の前のこの笑顔は、
誰の物でも無いと思っていたのに。

普段の自分を演じきる自身が無かったので、
心配性の隣人には、
薬を飲んでいて一寸体調が悪い、とだけ言っておいた。

お陰で授業中憂鬱な顔をしていても、
うまい具合に流してくれた。

それでも、
アテムの心は引き裂かれたままで、
反芻される記憶が塩を擦り込んでくるかのようだった。







写真に写っていたのは他の誰でもない。

「遊戯。やつは俺のものだ。」

何を、ふざけた事を言っているんだ。

「相棒が?まさか。
相棒は博愛主義者だからな、あんたが勘違いしてるだけなんじゃないのか?」
「博愛主義者、か。」

王は楽しそうに笑った。

「だからこそ、俺のものにしたい。
万民に振り撒く全ての愛を、俺が全て手に入れてやる。」

「ファラオってのは、強大だったんだな。」

金や権力に任せて、欲しいもの全てを手に入れてきたんだろ?
そう、何時までも上手くいくわけが無い!
「だが、相棒はそういうもので人を判断するようなやつじゃないぜ!」



何故、そんなにも否定したいのだろうか。
アテムは何度思い出しても、その理由がわからなかった。



「お前には解るか?
金と権力があれば、多くの物を手に入れられたが、
いらないものまで紛れ込んでくる。
俺の元にやって来るまでに、大半は穢れ、美しくなど無い。」

王は、テーブルにあった杯を払い飛ばした。
それは、床に落ちるなり、塵となって消えた。

「俺自身が遊戯を手に入れる必要がある。
誰にも汚されること無く、美しいままでな。」

王は再び写真をとって愛でる。
屈託のない笑顔を見せている写真の遊戯。

「例え、どれだけ腕の立つ職人が細工を施した金の装飾品でも、
どれだけ大きな宝玉でも、
内から出でる美しさには叶わない。
それは繊細だ。傷つき易い。美しいからこそ傷が目立つ。」

そう、だから、

「他の誰も遊戯に触れることは許さない。」

そう再び王はアテムを睨みつける。
此方がひるむほどの眼光。

その怯んだ瞬間に、足元に穴が空いて、
アテムはあっさりと、抵抗さえままならずにそこへ落ちた。

パンジステークではなかっただけマシと言うべきだろうか。

ただ、
王が見下ろしてくることがアテムの自尊心を傷つけた。

「・・・貴様ッ!」
「出来ればここに閉じ込めておきたいほどだが、
こういう形で遊戯を傷つけるのは趣味で無い。」
「いいたいことがあるのなら、さっさと言ったらどうだ?
体を譲る気は更々無いぜ!」

ハッ、と王は、アテムの威嚇を笑い飛ばし、
覗き込むようにして見下ろした。

「遊戯を求めるな。」

その声は低く、
いつでも殺してやると、そう暗に言っている様でもあった。

確かに、このまま蓋をされたら、殺されるかもしれなかった。

「俺が、相棒を求める・・・、だと・・・?」
「シラを切ろうとしても無駄だ。」

お前は、遊戯と知り合えてよかったと笑い、
己の心の部屋で、遊戯の写真を捜し求めた。

「貴様の部屋に、遊戯の写真があるなどと許さない。」

遊戯に色目を使うな。
遊戯の特別になろうとするな。

「取られるのが怖いだけじゃないのか?」
「貴様が俺に体を譲ればいい話だが、
俺はそれを譲歩してやったということだ。」

難しい話か?
王は嗤う。

「遊戯の博愛主義を勘違いしているのは、貴様の方だ。」

遊戯がお前を見る目と、
俺を見る目は違うということだ。

「だが、貴様に全ての非があるわけでは無い。
俺の愛する遊戯は、残念ながら己の博愛振りに無自覚だ。
貴様が中てられたのは仕方がない。」

残酷に見えるが、王としての器を見え隠れさせる男。

刹那、アテムは再び同じ高さの床の上に座り込んでいた。

「貴様には任を与える必要がある。」
「命令される筋合いは無い。」
「貴様は、

愛する者を守りたいと思うだろう?」

王の目は真剣だった。
アテムを睨むのではない、何かを危惧している。

「何が言いたい。」

「貴様のせいで、俺が遊戯を守ることができない。
責任をもって、貴様が遊戯を守れ。」
「守る?」
「そうだ。」

あの男。

「誰だ?」
「背の高い気に食わない男だ。」
「海馬か。」
「そう言う名だった気もするが。」
「海馬が危険?」

そもそも

「遊戯とヤツはどんな関係なんだ?」

遊戯は散々関係を否定していたが、
王はそれを信じられなかった。
いや、遊戯を信じていないわけではないが、
遊戯はすぐに人を庇おうとする癖があると考えたからだった。

「どうもこうも、ただのゲーム仲間だ。」
「ゲーム?」

海馬はアミューズメント企業の社長。
そして、アテム、遊戯、海馬は同じカードゲームをする。

ただ、それだけの仲間のはずだ。

「貴様の言葉に嘘は無いようだな。」

ただ、

「あの男は何を考えているのか。生憎、悪い予想しか立たない。」
「遊戯を手に入れたという自信が無いのか?」

つまり、そういうことだろう?

「海馬に奪われることが怖いのか?」

「それで、俺を否定出来たつもりか?
俺が恐れているのは、遊戯が傷つくことだ。」

人の責任さえ自ら背負ってしまうような、あの性格。
それさえも美しさだが、

「あの気に食わない男に、与えてやるのが気に食わない。」
「言い訳として受け取ってやるぜ。」
「意地でも俺と遊戯の関係を認めないつもりか。」

いいだろう、面白い。

「明日、貴様にいいものを見せてやる。」

貴様はただ、
愛らしい遊戯の笑みを前にしながら、手に入れられぬ苦しみを味わえ。

王は、にやりと嗤った。
奇妙なほど楽しそうに。

そこで、

アテムは目を覚ましたのだ。



「!!」

はっとした。

授業中であるのに、
アテムはまた同じ記憶を反芻していた。

まだ外はそんなに暑くないというのに、
全身から冷や汗が流れていた。

王は、一体、何を見せ付けるというのだろう。

そう考えると、また汗が吹き出る。


相棒が。
相棒と呼びたい唯一の存在が、
あの王に奪われている・・・?
お互いにある意味特別であったというのに、
そこへ何故突然現れた・・・?

憎い。
そう怒りに満ちた心は、意思に反して怯え震えていた。


全ての授業が終わった後で、
遊戯はアテムに声をかけた。

やはり心配だったのだろう。

「本当に大丈夫?具合悪そうだよ。」

眉を顰める遊戯は、恐らく、誰が見たって可愛いのだろう。

「一寸・・・な。・・・なぁ、相棒。」

相棒は、
もう1人のオレ、ファラオのことが好きなのか?

「いや、なんでもない。」

聞けない。
何故?

恐らくアテムが怯えていたからだった。

聞きたくない答えが返ってくるのを恐れたからだ。

「疲れとか・・・?ゆっくり休んだ方が・・・。」
「一寸休めば大丈夫だ。今週末にはタッグ戦もあるし、
休んでなんかいられないぜ?」
「そうだね。」

笑顔の遊戯を見て、
一瞬心が怯むと、

ズキンと

あの時の頭痛がした。

来る。

アテムの本能はそう囁く。

「相棒、一寸・・・。」
「え、何?」

アテムは遊戯を強引に連れ出し、
人気の無い場所へと連れて行く。

空き教室へ連れ込み、ドアを確りしめる。
遊戯は様子が急変した友人の名を呼ぶが、

「遊戯。」

帰って来た返答は、その友人ではなかった。

一方、消えたはずのアテムは、唖然とした。

まるで、幽体離脱でもしたかのように、
自分の横に立っていた。

・・・からだが・・・分離した?

だが、遊戯を見ると、別に何の反応も無い。

やはり霊みたいなものなのだろう。

だが問題はそこではない。
自分が此処にいるということは、
体には、

王が居るということだった。

「遊戯。」
「あ・・・。珍しいね。」

遊戯の口調は落ち着いていて、どこか、優しい。

「キミはいっつも何の前触れも無く出てくるのに。」
「そうだな。その度にお前に怒られるわけだが。」

その理由はいわない。

「一日一回、お前に会わないと気がすまない。」
「キミは自発的に出てくるの?」
「機会があれば出て行けるわけだが、如何にももう1人の方が主人格らしくてな。」

よほど、遊戯が愛おしいのだろう。
王は優しく遊戯の頬に触れ、
遊戯はそれを全く嫌がる様子を見せなかった。

「限られた逢瀬というのも味がある。」
「キミは、そんなんばっかりだ。」

「遊戯。」
王はもう一度そう呼んで、顎に指を添え、上を向かせるが、
遊戯は頬を染めるだけ、抵抗はしない。
そしてそれっきり王は何も言わない。

「・・・ずるいよ。」

遊戯はそれだけ呟いて、
そっと歩み寄り、
そのまま、
アテムのブラウスにしがみつくようにして、
遊戯から。

アテムは多くの物を手放した。
それは反応であったり言葉であったり、感想であったりするのだが、
ただ、心が握りつぶされたような感覚に陥る。
息が詰まる。

残酷な罰だ。

遊戯から触れられた唇を離すことなく、
王は細い腰へと腕を回し、より互いの体を寄せ合って、
呼吸さえ許さないような口付けをする。
遊戯の小さな体はすっぽりと腕に収まっていた。

長いキスのあと、酸欠気味でぐったりする遊戯を抱きかかえたまま、
王は嗤った。

「解っただろう?」

博愛主義を勘違いしていたのは、貴様だ、アテム。


残酷だ。
こんな風景を業と見せ付けてきた王も、
遊戯に想いの人が居ると知った瞬間に疼きだした心も。


しかし、為す術など無かった。







前のターン! 次のターン!


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背景素材:歪曲実験室。を少し加工させていただきました。





4つ巴(巴っていえるのか?)

予想以上に魔王様VS王様の時間が長いな
次には社長が出てくるはずなんだが・・・

基本的にこのシリーズは、アテムが可哀相です。



イマイチ良くわからないまま書いています(・・・)

魔王様の喋り方とか、
表が魔王をどう思ってるのか、とか。

2回前?の表と今回と微妙に性格が違う気がするんですよね。
前の時に書ききれなかったという部分もあるんですが、
文章内では、前話の翌日のことのはずが・・・。


(08.03.13)AL41