11.ノアニール -翻弄するエルフの女王-






「・・・やっぱり気になるんだね。」

カザーブでまた薬草を購入しようとすると訝しげな目で見られる。
なぜならアテムの頭にはかんむりが乗っているからだ。
旅人が由緒正しい王冠を被っているなど珍しいだろう。

何泊もしてすっかり慣れ親しんだ名残惜しいカザーブから出て、一行は北を目指す。

暫く山だったが、山を抜けると平原と森の開けたところへやってきた。

見知らぬ敵が出てきたが、蟹や甲冑(=さまようよろい)を思えば大したことは無かった。
「あの、緑のカラスみてぇなやつ、あれよ、髑髏の上に立ってるよな。」
「や、やめろよ!今度出てきたら思わず見ちまいそうじゃねぇか!!」
「城之内君大丈夫・・・?それにしても結構楽だね。」
「だいぶレベルを上げたからな。ああ、そうだ。」

昨日シャンパーニの塔で拾った青銅の盾を城之内に渡す。
「昨日はしけてたな。」
「ね。でも、買わないでよかったね。青銅の盾。」
「そうだな。今はまだ買わなくてもなんとかなるだろうが、
強い相手が出てくるようなら、防具も買い揃えないといけないか。」

何時かのゾンビ犬の色違いも出てきたが、城之内も何とか気合で乗り越え、
ノアニールと思われる村が目視できる距離になったのだが、
「なんだか様子がおかしいな・・・。」
幾ら小さな村といっても、ここまで静かなのはおかしい感じがする。

「早く行ってみようぜ!」

久し振りに4人は駆け出していった。
無論、普通の村であることを期待していたのだが。

「やばいぜ、これ・・・。」
真っ先に着いた城之内はそれだけ呟いて、気分が悪そうだ。

「なんだよ、別に普通の・・・。」

辿り着くと理由がわかった。

村の入り口で、恐らく「ここはノアニールです」と言うだろう女性や、
普通の青年が、村のあちこちで突っ立ったまま寝ているのだ。

「気味悪ぃ・・・。」
「あ、これって。」
「多分、俺が昨日聞いた村だ。」
「何か言ってたのか?」
「昨日酒場で、『エルフを怒らせて眠らされた村がある』という話を聞いたんだ。」
「・・・確実にここだな。こいつら寝てやがる。」

青年の首に触れると確かに脈はある。死んでいるわけではないらしい。

「これじゃあ話も情報もあったもんじゃないぜ。」
「もう少し村を見てみるか。」

怯える城之内を後尾につけて、一行は何か手掛かりが無いかと辺りを探した。
「ねぇあそこに・・・。」
「な、なんだ、遊戯・・・変なもんでもいたのか・・・。」
「人が・・。」
「ひ、ひいい・・・。」
「俺が行って来る。」

アテムはさっそうと一軒の家へ向かった。すると、
動いている人が居るではないか。

「すみません、」
「ああああ、人だ!」
「ええ、人ですが、この村は。」
「この村はエルフの怒りに触れ、眠ったままなんだ!
夢見るルビーをとりかえしてくれ!
エルフは西の洞窟の近くの森に住んでいる!」
「西か。」
「頼む!」

じゃあ自分で行け、と言いたいくらいだったが、
丸腰ではこの森は危険だろう。

アテムは仲間の下に戻り概要を伝えた。
「とりあえずエルフの森へ行って話を聞かないといけないのか?」
「・・・エルフと人間の仲が悪いなんて・・・。」
「エルフにはだいぶ世話になっているんだがな・・・。」
カード的な意味で。

「ったく、面倒だなぁ・・・ここをスルーするわけにはいかないのか?」
「どうだろうか。この村の人が何か情報を握っている可能性は高いが・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「スルーしちゃうの・・・?」

ああ解っている解っているぜ。
相棒はそういう不和が嫌いなことくらい、解っているぜ。

「ゲームとしては行くのがルートだろう。
後で必要になって戻るのも面倒だ、何か他にも収穫があるかもしれないし、
ここは行って、人間とエルフの仲でも取り持つことにしよう。」

遊戯の表情がぱあああっと明るくなって、
すごく良い事をした気分になる。

「西へ行くとするか。」
「西の洞窟の近くってことは、洞窟もあるのか。コイツは盛りだくさんだな。」

一行は(遊戯の為に)西へと進み始めた。
森の中をザクザク進むと、緑の中に小さな集落が見えてくる。
「多分、これだな。」
嫌われている人間が、いきなり踏み込んでいったら攻撃されるのではないかと怯えながら、
ゆっくりと近づ途中で、
人間に遭遇した。
「ワシの息子がいけないんだが・・・。ああ、エルフの女王に話を聞いてもらえんのだ。」

「(コイツの息子が原因なのか・・・人騒がせな)だめもとで一応女王に会いに行こう。」

周りのエルフに怖がれられながらも何とか無事女王のところへ辿り着く。
だが、案の定女王様は非常にお怒りのようだ。

「人間が何の用ですか。」
「あの、ノアニールの村が眠らされてるのは・・・」
遊戯が恐る恐る尋ねたのだが。
「あの村の男がうちのエルフの少女をそそのかし、夢見るルビーを奪っていったのです!
ああ、もう思い出したくも無い!さっさと去りなさい!」
「(遊戯に対してなんつー口のききかただ!)遊戯、さっさと行こうぜ。これ以上は何を言ってもきかねぇよ。」
「うん・・・。」

連れられる様にしてエルフの里の外に出てきた。
「かああああ!!!ムカツク!」
「だが何やら理由がありそうだな。
ああいう偏見を持っているヤツは大概相手のことを悪く言うものだ。
あの様子では折角の武器屋にもよることは出来ないな。MPもそろそろ限界なんだが。」
「どうする?戻るか?」
「洞窟の中の様子だけでも確認していくか。それに、何かわかるかもしれない。」
「何かわかればいいんだけど・・・。」
「ま、ここにいたって何もわかんねぇな。洞窟に潜ろうぜ!」

しょげる遊戯の背をおしながら、近くにあった洞窟の中へと潜っていった。

「結構広そうだな・・・。」

明かりも少なく、天然の洞窟と言った感じである。
「なぁ水の音がしねぇか?」
「え?」

勘を頼りに二つ目の分岐を右へ曲がった。さらにその先を道なりに左へ曲がると。
「人!」
「マジ!?」

本当に神父の格好をした男が立っているではないか。
遊戯と城之内は駆け寄っていった。
「こんにちは!」
「おや、こんなところに珍しい。」
普通の人だ。
「こんなところで、どうかしたのか?」
「いえ、ここらへんには体力を回復させれくれる泉があると聞いて。」
「ホントか!?すげーな!」
「でも何でだろうね。」
「何か理由があるのでしょう。ただ私にはそれが悲しい理由であるように思えるのです。」
「なぜ?」
「わかりません・・・それで少し想いにふけっていたのです。」
「そうなんですか・・・。」

礼をして、残っていた2人に合流した。
「どうした?」
「体力が回復する泉があるらしいぜ!」
「やっぱり何かあるみたい。」
「体力回復は嬉しいな・・・暫く潜っていられるかもしれない。
とりあえず泉を探そう。」

洞窟を奥へ奥へと進んでいった。

下り階段を降りる途中で、水の音が聞こえる。
「お!?」
「どう、ありそう?」

駆け下りると、淡い光に満たされた不思議な空間に出た。
「あの柱の間!」
「おう、怪しいぜ!」

時折襲ってくるキコノとドラキュラを退治しながら、淡い光の中心へやってきた。
「すごく温かい感じ・・・多分これだね。」
手ですくって飲むと体から疲れが消えるのをはっきりと感じた。

「すげぇ水があるもんだな。」
「これ保存していけねぇか?」
「ムリだろうな・・・それが賢明なんだが・・・。」

4人は暫くそこで休憩してから、洞窟の探索を開始する。
回復できるとわかると、思いっきり戦えるので、楽だった。

その間見つけた宝といえば、
512G、種、鉄製のヤリ、銀のロザリオ、ゲーセンメダル、すごろく券、お決まりのゲーセンメダルに・・・

「革のスカート。」
「何、何その目は・・・。」

待ってました女物、といわんばかりの目でコチラを見ている。

「さあ相棒。今のよりずっといいと思うぜ。」
「下にズボン穿くワケだし、大きすぎるTシャツだとでも思えば」
「皆は着ないから気楽にいうけどさ・・・。」

だが、回復を持つ自分が一番狙われ易いことは解っているし、
回復専門の自分が瀕死では役に立たない。
何時までも城之内に守らせてばっかでは流石に悪い、と思った。

「わかったよ・・・。」
革のスカート、というよりワンピースなのだが、まぁ正式名称はわからないが、
それを受け取った。

「・・・。」
「・・・?」
「・・・あのね、だから・・・ボク着替えたいんだ・・・
別に、ボク女じゃないし、見られるとまずいわけでもないんだけどさ・・・。」

見られてると恥ずかしいよ、と暗闇でも恥じているのがわかる。
「大丈夫だ相棒。着替えている間に狙われないようにしておくぜ。」
「よろしくね・・・。」

この背を向けている時のこの感情をなんと言えば良いのか解らない。
初めてゲームの世界でよかったと思えた気がするほどだ。

「着られたよ。ちょっと大きいけど。」

元気良く振り向く2名。

「なんだ問題ねぇじゃねぇか。あったかそうだな。」
「ありがとう城之内君。あったかいよ。頭もね。」
「少し丈が長いかもしれないが、似合ってるぜ。」
「早くルビー見つけて外出ようぜ。ここだと暗くてよくみえねぇし。」
「えっ、ちょ、ば、バクラ君のイジワルぅ!」

からかわれているだけだと思っている遊戯。
割と本気の2名は、遊戯を宥めつつ、最深部を目指した。

下へ降りる階段を見つけて、水の音に期待を膨らませ意気揚々と降りていったのだが、
「なぁ、向こう岸になんかあるぜ?」
「柱が邪魔で良く見えないが、怪しいな。」
階段が間違っていた。

念のため一度回復しに戻り、今度は別の会談を降りた。
すると、太い橋の向こう、右に曲がると、
太い柱に囲まれた真ん中に宝箱がある。
「変なもんとか出てこねぇだろうな・・・」
「死体とかか?」
「うわあああああ!!!!!!」

見慣れたやりとりを他所に、アテムはゆっくりと箱を開けた。
「これが、夢見るルビー・・・。」
金細工で飾られた六角形のオレンジの石のなかに妖精の像がみえる。
「ねぇ箱の中に文字が・・・。」

『この世で一緒になれないのなら、
 あの世で一緒になります。
 先立つ不幸をお許しください アン』



あの神父の勘はあっていたらしい。
「身投げか。」
「それしかなかったのかな・・・。もっと遠くに行くとか、できなかったのかな。」
「さぁ。ただエルフと人間では寿命も違いすぎる。
先に男が死ぬところも、見たくはなかったのかもしれないな。
だが、それ以上に、許されないことだったんだろう。」

エルフと人間が互いに忌み嫌っていなければ、身投げの必要などなかっただろう。
更にはかけおち自体しなくてすんだし、夢見るルビーを盗み出すこともなかった。
ノアニールの村人が眠らされることもなく、
自分たちがこんなところに来る必要もなかった。

「偏見最悪だぜ!」

結論は間違っていない。

「この2人が身を投げて、神様が情けをかけてくれたのかな。
だから、回復の泉が湧いたのかな。」
「かもな。」

飲んだ水を吐きそうだ。

「まぁ、行こうぜ。このルビーをもってエルフのとこ言って、
村人を起せば、イベント完了だぜ。」
「気が楽になったぜ!でもよ、このルビー、どうやって作るんだろうな。」

城之内はそれを手にとって覗き込んだ。すると、
「うがっ!」
「!?」
「ど、どうしたの?」
「からだが、しびれた・・・。」
「?」

不思議に思ったバクラもそれを覗き込んだのだが、同様に、
「ぐぇ・・・。」

マヒしたらしい。

「覗き込むとマヒするらしいな。」
「早くしまっちゃおうよ。」

暫く回復するのをまって、外を目指した。





10.シャンパーニ[*]
 12.アッサラーム[#]→
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イベントをあっという間に終了させました。

このイベントは確かに楽。
すっかり忘れてました、印象薄すぎて・・・

3回ほどルビーを覗き込んでマヒごっこしました。
マゾとかじゃないです。

今回これといって説明することは無いんですが。
今回はなんといっても、
遊戯の初女装、です。
かわのドレス(正式名称)は本当に単なる茶色のワンピースです。
半袖で、ワンピース?ジャンパースカート?チュニック?って感じですかね。
チュニックが一番近いのかな・・・良くわかりません・・・
下にズボンを穿いてもおかしくないので、普通だと思います。

ただ問題はマジカルスカート・・・
迫り来るマジカルスカート・・・(取得予定)
攻撃呪文のダメージを減らすすごくいい感じのマジカルスカート・・・
どうする遊戯!

(09.01,17)AL41