8.すごろく場 -運命のダイスロール-





「なんだこりゃ・・・。」


一行は唖然として立ち尽くした。
怪しげな祠の二階、一面にこの世界とはそぐわない1,5uほどのボードようなものが、
連なって並んでいる。
ボードには色々な模様が書いてある。
「あ、スライム!」
久し振りにみたあの軟体モンスターのイラストを見つけて、遊戯はちょっと楽しそうだ。

「兎に角人に聞いてみよう。」

パネル一端に女の人が立っている。

「すみません、これは。」
「すごろく場へようこそ!」

飛び切りの営業スマイルで、さすがNPCだ。仕事は完璧だ。

「す、すごろく!?」

この連なったボードは、どうやらマスらしい。

「どこのアミューズメントパークだ・・・。」
「大掛かりだな。」



「・・・じーちゃん・・・」
「しまった、遊戯がまたカタルシス全開に!!」
昨日拾った[すごろく 券]を取り出して、
遊戯はすっかりホームシックである。

すると、
「お客様、[すごろく 券]をお持ちですね?」

店員は目ざとい。
「すごろく 券一枚で一回挑戦できます。」
「挑戦というのは、このすごろくにか。」
「はい。ゴールすると景品が手に入りますよ!」
「何がもらえるんだ?」
「秘密です。」

そりゃあ簡単に教えてくれるわけも無い。

「どうする。」
「この[すごろく 券]の希少性と景品がつりあうかどうかって話か?」
「すごろく場はこの世界に此処しかないのだろうか。」
「うーん・・・ゲームで考えると、他にもまだありそうだよね。
まだプレイ時間は短いだろうし。」
「そうだな。それに、ゴールまで着かない可能性があるということは、
ゴールの景品も安物ではないだろう。」
「ま、この[すごろく 券]自体、拾いもんだし、ぱーっとやろうぜ!」

多分、誰か1人が反対しても結局やることになったと思う。

アテムがチケットを女性店員に渡す。
「挑戦されますか?」
「ああ。」
「挑戦できるのはお一人様のみです。」

「ゲッ!?アテム1人で行くのかよ!」
「ああ。大丈夫だろう。俺も一応回復は出来るからな。」
「うん・・・でも気をつけて・・・。」

心配そうに見つめてくる遊戯。
アテムは遊戯の手をそっと握って、

「相棒が応援してくれるなら絶対にゴール出来るぜ!」
「アテム・・・。」

すっかり遊戯と良い感じになっているのが、外野としては許せない。

「それでゴールできなかったら最悪だぜ!」
「俺でゴールできなかったらバクラじゃ到底ムリだな。」
「(この野郎ッ・・・!!!!)」

娯楽施設で張り合う2人だが、
張り合う理由を知らない遊戯はのほほんとしていて、

「バクラ君は回復魔法も持ってないし、武器も強くないからね。」

と職業的な見解で擁護した。

「兎に角、さっさと行って来いよ。俺は遊戯と一緒にゴール近辺で待ってることにするか。
ゆーっくりしてきていいぜ。」
「速攻で終える!」
「ま、ムリすんなよアテム。」
「ああ、城之内君、大丈夫だ。」

アテムは持ち物を確認して、
STARTと書かれたマスに立つ。
「サイコロは10回です。お気をつけて!」


アテムの一人旅が始まった。

「さて・・・。」

実際マスの上に立つとゴールまでの道が見渡せる。
ルートは3通りあるらしい。
ゴールへ向かうまっすぐなルート。
ゴールを素直に目指すのであればここを行けば良いのだろう。
サイコロを振れるのは10回。
ゴールまで20マス程度だし、難しくは無いだろう。

手前には右へ分岐するルートがあり、その2マスほど先には左へ分岐するルートがある。
さてどうするべきか。


「(とりあえず4コマ目に宝箱があるな。)よし!ダイスロール!」

すごろくの経営側には大変申し訳ないが、
アテムはダイスを転がし出したい目を出すのが非常に得意な人間だった。

コロコロと転がったダイスは、[4]を示す。

4つ先へ辿り着くと、宝箱が姿を現した。

「(・・・モンスターが出てくることはないだろうな・・・)」

慎重に開けると、それは普通の宝箱で、
中にはナイフが入っていた。
「武器か・・・。」
武器はあって損をしないから助かる。
せいなるナイフは二本目だが、
誰かしら装備できるだろうし、装備できなければ売って資金にすればいい。

そして経営者泣かせのアテムの快進撃は続く。


宝箱のマスは右ルートへの分岐点であった。
次はどちらへ行くか選べるというわけだ。
絶対的な自信を持っているアテムは10回という回数をフルに利用しようと、
右の道を選んだ。

ダイスの目は[5]。
5マス進んで100ゴールド手に入れた。

次は[4]。
再び宝箱マスに到着し、今度はブーメラン入手。

今度は[2]。
タンスである。タンスには散々お世話になっている。
だがまだ抵抗がなくなったわけではなく、
恐る恐る開けると、
「すごろく券・・・。」
なんと再びすごろく券を手に入れた。
「(相棒が喜ぶぜ。)」

さて此処までノーエンカウントで来た訳だが、

目の前のスライムのマスが気になった。

「・・・スライムが出てくるのか?」

ゴール近辺でコチラを見ている遊戯の目が輝いているように見える。
スライムが出てくるのであれば喜んで踏んでやりたいが、
ここ周辺の敵で、複数出てくれば、死ぬ可能性もある。
遊戯は心配していたが、個人的にはここで挑んで勝負に勝って、株を上げたいところ。

しかし。

目を輝かせている遊戯の肩に手を掛けている無礼者が一名。
何か耳元で話しかけている。

「すごろく券が手に入ったとはいえ、今は先に進むことが先決だな。」

建前だ。
本音は、勝負よりも遊戯だ。
アテムはダイスを投げた。

[5]

再び宝箱マスである。
このすごろく場の宝箱は全て制覇した。
壷マスを二つほどスルーしてしまったが、
敵に塩を送ってやっても構わないだろう。

兎に角あとはゴールだ。
後6マス。

遊戯の目の前で失敗するわけには行かない。

「ダイスロール!」

[6]

「完璧だぜ!」

「アテム!」

ゴール前にいる仲間に得意げに手を上げて挨拶をしてから、
アテムは開かれたゴールの重厚な扉の先へ消えていった。

「さすがアテムだな!っかぁああ!俺もやりてー!」
「けっ、ゴールしやがって・・。モンスターのマス踏まなかったくせによ。」

単純にやりたがっている城之内と、違う勝負に出ているバクラのことなど気にも留めず、

「ねぇアテムはどうやって出てくるのかな。」

遊戯はキョロキョロしていた。
すると、
「ゴールされた方は、下の階でお待ちですよ。」
と女性店員が教えてくれて、
3人は足取り軽く下へと駆け下りていった。

「アテム!」

階段を降りるとすぐそこにアテムは待っていた。
「相棒!」
「おめでとー!」

遊戯が駆け寄ってきてくれるのはすごろくで勝ったからだ。
何もアテムは特別なわけじゃないんだ。ああそうだ、そうに違いない。

それを後ろで見ていたバクラは必死に自分を言い宥めた。

「景品はなんだったんだ?」
「ああ。ソコソコだな。」

アテムはすごろくで手に入れたものをとりあえず全て並べた。
品定めである。

「すごろくやってすごろく券が手に入るとは・・・リピーター重視ってことか。」
「そうかもな。ナイフに良くわからん種に・・・ブーメラン・・・?」
「武器だよね・・・?」
「あと壷が二つ残っていたのが気になる。他のヤツに任せるぜ。」

それは明らかにバクラへの挑発だったのだが、
「おっしゃぁああ!俺が行くぜ!」と盛り上がる城之内。

その気合は何よりなのだが、
「それより今日は先へ進まないとな。」
「そうだね。」

残念だが旅の途中である。
しょげる城之内。

「城之内君はこれを持ってくれ。」
「えっ・・て良いのか!?」
アテムが差し出したのはゴールの景品であった切れ味の良さそうな剣である。
「けどよ、」
「その代わり今城之内君が持ってる武器(くさりがま)を俺が持つ。
俺は回復魔法を持っているから、攻撃に回れないこともあるが、
城之内君は攻撃専門だからな。」

要は攻撃以外何も出来ないということだが。

持っている武器を交換した。
「・・・(王サマが鎌持ってると、正しく死神っぽいな・・・。)」
「バクラ、」
「!?な、なんだよ驚かせんな。」
「・・・?・・・まぁいい。」

アテムはゴールしたことで大層上機嫌だったので助かった。

「お前がブーメラン持て。」
「・・・だからこれに殺傷能力があるとは思えないんだが。」
「うーん・・・どうなのかな。普通の武器とはちょっと違うような気がするけど。
でも、きっと何か役に立つよ!」
「だな。」

遊戯に一言もらえるとひのきのぼうでも喜べそうだ。

「・・・で、相棒がこのナイフ。」
「ちょーと待てよ、遊戯大丈夫か?」
「え?」

こんぼうで殴るのとはだいぶ違う。何といっても刃物だ。
だがそれ以上にリーチが短すぎる気がする。

「じゃあ俺がナイフを持って、相棒が鎌を持つか?」

遊戯とアテムが荷物を持ち変える。
両手で握っている様子はさっきとは打って変わって。
「(・・・そんなに可愛い死神だったら俺は潔く死んでやるぜ。)」

自分が攻撃されるわけではないのだが。


「リーチがある分マシか・・・ま、俺が遊戯の分も戦ってやっから。
ここらへんのは前よりも強えし、遊戯はちゃんと防御してろよ!そのかわり回復は頼むぜ!」
「うん!」

熱い友情の蚊帳の外の2人。

「(勝負にならないぜ。)」

勇者の頭の中で、戦士の解雇がよぎっていた。





7.ロマリア[*]
 9.カザーブ[#]→
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遊戯の興味を引くものは全て敵。
世界の平和より遊戯が大切な勇者ご一行。




原作のTRPG編を見ていると、
王様はダイスを操っているとしか思えなかったので、
今回は王様に、お手本のようなルートということで、挑戦してもらいました。

城之内も攻撃力は高いので、もう少し強くなれば挑戦できると思います。
薬草持っていけばいい話ですから。
駄文内でも城之内君には挑戦してもらおうかと思います。


(09.01.06)AL41


【補足】 「すごろくのちょっと細かい説明」

本文中である程度説明したのですが、王様が厄介なマスにとまらなかったため。

本文ではマスが5種類くらいしか出てきていませんが、
実際はもっと色々あります。
以下の名称は適当です。

■宝箱
  本文の通り。お宝が手に入る。一回きり

■タンス・壷
  宝箱と一緒。ゲーセンメダル(仮)が手に入ったりする。一回きり

■草原・森・山マス
  モンスターとエンカウントするかも+足元を調べられる
  ただ、足元を調べると落とし穴があったりするので、
  ゴールをするには調べないほうがいいかも。

■お金マス(赤・青)
  赤色→表示されている金額分、お金が貰える。
  青色→表示されている金額分、お金を失う。
  強制なので、青だとがっくし。

■モンスターマス
  本文でいうスライムマス。
  モンスターとエンカウント。負けるとすごろく終了。

■バリアゾーン
  ダメージを受けるだけ。

■進みマス・戻りマス・ふりだしデス
  表示されている分進んだり、戻ったり   ふりだしに戻ったりします。普通のすごろくです。

■サイコロ+−マス
  サイコロのふれる回数が増えたり減ったり。

■能力変化マス
  ダイスの目でステータスが変動します。

■回復マス
  HP・MP全快

■髑髏マス
  MPが奪われます。戦士には関係なし。

■落とし穴
  すごろく強制終了。またのお越しをお待ちしております。



他にもいくつかありますが、こんな感じのマスが並んでいるのです。


こんなかんじです。
また出てくると思うので、細かいことはまた後ほど。