7.ロマリア -初めてのパシリ-




「無理、まじ無理。」


ロマリアに着いた時、一向は瀕死といっても過言ではなかった。

遊戯のMPが底を付き、
いざないの洞窟を越えた時の疲労がたまったままで、
その上敵が見慣れぬものばかり。

「し、死ぬかと・・・マジで・・・。」

最後は逃げまくって命からがら辿り着いた状態である。
「とりあえず、宿に泊まるか。」
「さんせー・・・。」
「宿に行きながら色々漁っておくか。」
「バクラ、余裕あんな・・・。」

予想以上にケロっとしているバクラに告げたのは嫌味でもなく、
心底不思議だったからだ。
「また明日ウロウロすんの面倒だろ?」
「確かに情報だけでも集められれば、今夜のうちに計画が立てられるか。」

勇者がそういうのであればそれに従う話。

一行は初めて来た町をものめずらしそうに見回った。

アリアハンよりもずっと広く、城もでかい。
とりあえず武器屋を覗いて見た。
思えばアリアハンから武器を買っていないので、財布だけは豊かだ。
「何が良いかわかんねぇな。」
「ただ、此処らへんの敵を考えれば、買い換える必要がありそうだな。」
「とりあえず色々見てから決めた方が良さそうだね。」
品だけ確認して他へ行こうとすると、
なにやら地下への階段がある。

「・・・??」
「・・どうするの?」

地下への階段とういうと、彼等にとってはダンジョンへの入り口である。

「けどよ、町だし、大丈夫じゃねぇか?」
危なくなったらさっさと戻ってくりゃ大丈夫だろ?
そう、城之内が先陣を切り降りていった。
「城之内君!」
不安そうに呼ぶが、帰って来たのは、うおっ!という声。

驚いて急いで城之内を追うと、ダンジョンでも何でもなかった。
ただ、

「カジノ・・・?」

老若男女がそれぞれ紙切れを握り、必死に何かを応援している。
「なんだぁ?」
「聞いて見るか。」
カウンターがあったので声をかければ、営業スマイルで応じてくれた。
「こちらは闘技場です!」
「闘技場?」
「モンスター同士を戦わせて、勝つほうを当てるだけ!」

ようはギャンブルだった。

「モンスター同士・・・例えばスライムとよくわかんねぇ此処らへんのヤツだったら、
どう見ても後者が勝つから、そっちを買えば儲かりますよ、ってことか。」
「そこは、あえてスライムに賭けるのが勝負師ってやつだろ!?」
「こういうの、ゲームだとはまっちゃうんだよねー!」
「だが、これはゲームでありながらゲームじゃない・・・。」

彼等の生活がかかっている。

「・・・。」

一行はあっさり諦めて、
とりあえず一度戻り、再び町の探索を始め、城へ向かう。

城の前で老人がうろうろしているので、思わず遊戯は声をかけていた。
自他共に認めるじーちゃんっ子なので仕方が無いか。
「どうかしたんですか?」
「いや、口笛が巧く吹けんでな?ボビー!そろそろ帰るぞー!」
「ボビー?」
辺りを見回すと、城壁の方に大きな犬がじっとして動かないでいる。
「あいつか・・・。」
「なんか・・・様子が変だね。」
「ああ。」

また後で様子見すっか、と、今度こそ城へと入っていった。

中で遭遇した商人風の男が困った顔をして「北から来たんですが、敵が強くてかなわない」と呟いているのに、
心から賛同したりしながら、
城を漁りつつ王との謁見に向かう。

「おう、旅の者よく来てくれた!」
「はぁ。」
椅子にどっかりと腰掛けた王は、アリアハンと違う。
アリアハンもだいぶ身勝手だったが、こちらも余り好い気がしない。
隣には姫と思しき人間が座っているが、
一行がさっぱり興味を示さなかったのは、彼等の僧侶の方がたいそう眩しかったからか。

「そなたたちは腕が立つと見た。国宝たる『金のかんむり』が盗まれてしまったのだ!」
「金・・・ゴールド・・・!!!」
「ば、バクラ君・・・?」
雰囲気が変わった盗賊に遊戯は何故か焦る。

「もし取り返してくれたら褒美をやろう!」
「・・・。」

王はそれしか言わず、大臣が色々と取り繕ってくれたが。

一行は王の間を出ると、一斉にぼやいた。
「何だぁ?いきなり命令とは、さすがだな。」
「ゲームやってるときはあんまりどうこう思わないけど、勇者って大変なんだね。」
「っつーか、勇者を何だと思ってやがるんだか。」

パシリです。

「とりあえず、どうするべきなんだ?」
「褒美とやらは、なんか重要なもんなのか?」
「さぁな。けどよ、普通は行くんだろうな。」
「そうだな。もう少し城を回って金のかんむりに関する情報でも漁るか。」

ロマリアの城はやはり見かけどおりに大きく、
最上階を目指して昇ってみた。
まるで塔のようだった。

そしてまた老人が居る。

「おう、おぬし等旅のものか。」
「ええ。」
「ワシの息子は遊び癖が治らんでな。困ったものじゃ。」
「遊び癖・・・だ・・・と?」

じじいはニコニコしているが、こちらは笑えない。

「・・・遊び癖・・・?遊びだと・・・?」
「盗まれたのはウソなのか?」
「どうだろう・・・。」
「ハッ、これだから『おうさま』ってのはどいつもこいつも使えないぜ!」
「バクラ、それはどういうことだ?」

鋭く睨まれる。
2人であれば此処で色々とゴタゴタしても問題ないが、
紫の瞳がこちらを見ている。

「ゲッ・・・な、なんでもねぇよ・・・。それより、どうすんだ?骨折り損ってやつになるかもしれないぜ?」
「そうだよね。本当に盗まれたのかどうか、確認してみる?」

そう、ふと窓の外に視線を向けると、反対側にも塔が聳えているのが見えた。
「あっちはなんだろう。」
「行くしか無ぇか。」

そろそろ本気で疲れてきたが、明日また此処へ来るのもウンザリだ。
4人はだらだらと何とか反対側の塔を昇りきる。

「うえぇ・・・疲れた・・・もう無理・・・。」
「うん・・・しかも、何・・・牢屋・・・?」

鉄格子が見える。

「おい!俺は違うってんだろ!!」
「誰だぁ?」

格子の向こう怒鳴り散らしている男が目に付いて、歩み寄ってみた。
「どうかしたのか?」
「おい、って兵士じゃねぇのか、まあいい。
おれはカンダタの仲間じゃねぇって言ってんだ!」
「カンダタ?」
「そうだよ!アイツが『金のかんむり』を盗んだんだ!」
「てことは、本当に盗まれたんだ・・・!!」

濡れ衣で掴まっている男には申し訳ないが、
とりあえず王がウソを付いているわけではないことだけは解った。

「じゃあ、そのかんむりを取りに行くとするか。」

先のことが決まって、漸く一息つけそうだ。
帰りはよいよいと、さっさと城を出ると、もう夜だ。

「あ、そういえば・・・。」

遊戯は城の前にいたじいさんが居なくなっていることに気づき、
さっき、犬が居た場所へと駆け出したので、3人も追う。
すると、
犬が居た足元に。

「紙・・・?」
「なんか書いてあるぜ?」


[ すごろく けん]


「じ、じーちゃん・・・。」
「双六、って、ちょ、遊戯、そっちじゃない!」
カタルシスに俯く遊戯からそれを奪い取り、まじまじと観察する。

「すごろくするのに、券がいるのか?」
「らしいな。」
「昼間いったあそことは違うのか?」
だが、あそこは闘技場で、すごろくではなかった。
「・・・まだ見てない、と考えた方が無難だな。」
「そういや、ゲーセンメダルも、まだわかんねぇんだっけか。」
「そうだな、ってなんだこの世界、ちょっと広すぎじゃねぇか?」

本当に色々つまっていて、わからなくなりそうだ。

とりあえず一行は宿屋へと向かい、
少し高くはなって居るが宿代を確り払って部屋へ篭る。

「ふぅ・・・疲れたぁ・・・。」
遊戯は床に転がって、もう眠りそうだ。
「俺も疲れたし、明日どうすっかだけ決めておこうぜ?」
「ああ。だが、そのカンダタというのは何処にいるんだ?」
「なんか情報なかったか?」
「・・・生憎覚えていない。」

アテムも疲れているらしく、覇気が無い。

「・・・北、か?」
「北?そういや、北から来たって商人居たな。」
「それに、これを。」
そうアテムが地図を広げると、南にも東にも行き場所がない。
「北、な。まぁ確かに逃亡するのは大概北って決まってるしな!」
「どんな統計から出たんだ・・・?」

信憑性のない話だが、北へ行く以外のことも考え付かず、決定を下してから
とりあえず一行は眠ることにした。

夢を見る余裕もないほどに、ぐっすりと眠り込んだ。




「あー・・・やっぱり疲れは残るな。」
「そうか?」

異様に元気な城之内は、早速出かける気満々である。

「・・・若ぇな・・・。」
「タメだろ?」

低血圧そうなバクラはまだ頭をもたげたままで、

「相棒、朝だぜ?」
子どもは相変わらず「あと少しぃ・・・」とダダをこねている。


何とか遊戯をたたき起こし、バクラを引きずりながら、
薬草を買い、
一度武器屋へ寄って攻撃の要たる城之内の武器を整え、
(彼の武器はこんぼうのままだった)
そして北上を始めた。

敵は相変わらず強いが、城之内の攻撃力が一気にあがったことや、
昨日の経験があってか、少し楽になった。
だが“少し”であって、しんどい。
ナジミの塔であったカエルの青バージョンや、
無駄に魔法を使ってくる黒ずくめの男、そんなものがうようよと出てきて、
一体一体確実に倒すほか無い。

「魔法使いがいりゃあ、一気に倒せるのか?これ・・・。」
「魔法使い・・・か・・・。」

今はこのメンバーで問題は無いが、
やはり将来的なことを考えれば、魔法使いは必要になるだろう。
「今のうちに誰を呼ぶか、考えておいた方がいいかもな。」

そう思えばいまはまだ、恐らく、長いたびのほんの始まりだと思わされる。
だが、いつになったら帰れるのか、本当に帰れるのか、と不安を口にしてしまうと、
この調子に乗り始めた仲間の波が一気に消えてしまう気がして、口を閉ざした。

森を見つつも、平原にそって北上していく。
すると、左手の山の間が妙に開けていて、
何かあるのではないか、という本能のまま立ち寄ってみた。

案の定、祠のようなものが立っている。

「お邪魔します・・・。」

恐る恐る入ってみたが、
そこは本当に小さく、兵士が1人突っ立っているのと、
鍵のかけられた鉄のドアの小部屋があるだけだった。

「お前たちは『魔法の鍵』を持っているか?」
「魔法の鍵?それはなんだ?」

聞いたことがあるようなないような・・・
此処で初めて聞くのであれば、何か情報を得たいところだったのだが、


「そのくらい自分で探せ。」


そう冷たく言い放ったまま、結局何も言わないままだった。

カチンとくる。

「ふざけんな、この鉄頭!」
祠から出ると愚痴もでる。
「まぁ次の町で噂を聞くこともあるだろうし、まだ手に入っていないということは、
強引に行ってもまざまざ殺されるだけだろう。」
アテムのいうことはもっともで、否定は出来なかった。それに、
「金のかんむりを取り返せば、何か手に入るかもしれないね!」
遊戯はモチベーションがあがるようなことを言ってのけたので、
一行は再び北を目指した。

暫く平原が続いたのだが、
少し森を通り抜けたところで、再び祠を見つける。
「・・・。」

先の兵士が余りにも印象が悪かったため、少々気乗りはしないが、
仕方が無いと渋々入って見る。
すると、

妙に陽気な音楽。

「・・・さっきとはだいぶ様子が違うな。」


別の意味で不安になりながら、階段を上った。



どこの特設ステージかと思わんばかりのフィールドが広がっていた。



6.いざないの洞窟[*]  8.すごろく場[#]
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ひさしぶりすぎて泣けてくる。
これ何ヶ月前にプレイしたんだよ・・・

漸く新大陸へ来たらしいですよ。
此処から敵が少しずつ厄介になってきて、
生意気にもメラ(炎系の初期魔法)とか使ってきて、
魔法に弱い城之内とかが死にかけたりするわけです。

ただ、遊戯のレベルが上がり始めるので回復魔法も使えるようになり、
そろそろベホイミ(中回復魔法)も使えるようになってくるのかな・・・??

此処まで来て、やっとRPGやってる気分になります。

(08.08.11)AL41