*長いです
*相変わらず死者あり?
*適当さが増しています(笑)


唯我論者の誤謬 -5.嗤う亡者-




生存者は無かった。
主の死が知らされ、数名を残して屋敷に戻っているのだろうか、
転がっている死体は3つ。
うち2体は射殺されたようだ。
玄関に1つ。
恐らく侵入された際に殺されたと思われるが、額のど真ん中を打ち抜かれて、即死だったのだろう。

もう1つは廊下で。
電話へ駆け寄るところを後ろから狙われたのか、うつぶせになっている。

「(お粗末だな。)」

電話の置かれたすぐそばの陰に、弾丸が転がっているままだ。

だいぶ急いでいたのか。
それとも、考えが及ばない素人か・・・?その線は薄い。
では、

「(追って来い・・・ってか?)」

それを運転手の手袋をしたままの左手でとりあげて仕舞い、
ブレーカーがあると思われる場所へと急ぐ。

これだけの屋敷を支えるには、一般家庭の数倍の大きさになっているのだ、
ブレーカーが見つからないということは無かった。

時計を見ると、約束の時間を3分過ぎたところで、
バクラはそれを落とす。
明るさは変わらぬのだが、何故か妙な静けさが訪れていた。

これで少しは暴発の可能性は下がっただろう。

バクラは自分が死なないうちにさっさと窓を開け脱出し、
外から再び3階を目指した。


社長室では瀬人があたりの書棚を漁っていた。
「見つかったか?」
「PCのファイルでロックのかかっているものは全て転送しておいた。
一部はそれに保存したがな。」
机の上のUSBメモリを目で指した。
「こんなんで間に合うのか?」
「見当がつかんが、これしかないとなれば、紙で残っている可能性もあるからな。」

バクラはそれを手伝う気は更々無く、悪趣味な部屋を見渡していた。
兵器の模型になんかの賞、猟銃に置物。
ふとみた食器棚の上が妙にさっぱりしているのが気になった。
流石に掃除がされていて、埃が被っている何ていうことはないために、
そこに写真があったかどうかはさっぱりわからなかった。
しかし、何かが置かれていたことは何となく想像ができた。

訝しく、近くのゴミ箱を覗き込むと、
「まさか、自分で自分の虚像を捨てるような性格じゃねぇよなぁ。」
写真が、写真立てにいれられたまま捨てられている。
あの2階の写真立て、捨てられたままの弾丸、この捨てられた写真・・・。
これらの行動は、バクラから見て考えて行動してるとは思えないものだった。

何か、感情に突き動かされているようにも見える。
だが、素人ではないはずだ。
電話に駆け寄る人間を背中からとはいえ、一発で撃ち殺せるだけの腕があるのは確かだ。

訓練された人間であれば、こんなことはしないはずだ。
恐らく、訓練はされていないが経験はあり、自分の感情を制御できない。
そしてこの海馬家に何らかの恨みを持つ人間。

「紙の資料も残っちゃいねぇかもしれないぜ?」
「解っている。だが、何が重要な資料なのかは人によって違うだろう。」

瀬人の求めているものと、写真を捨てた人間では異なるかもしれないが、
同一である可能性は充分にある。
それに、もし、推測どおりに感情で突き動かされているのであれば、
ただ写真を捨てるためだけに来たのかも解らない。
その上、相手は爆発させるつもりだったのだ、紙という紙は燃えてしまうだろうし、
手は出していないかもしれない。

娼館の爆破だけでは解らなかった像だが、段々とピースが埋まり始めている。
犯人と海馬家の関係、それさえわかれば一気に犯人へとつながることが出来る。

「なぁ社長さん。」
「なんだ。」
「さっきの部屋、誰がいたんだ?」

瀬人の指がピタリと止まった。

「誰がとはなんだ?何か関係があるのか?」

突き放すような口調は、関係があることの肯定である。

「いや、別に大したことじゃねぇが、
格子をつけられて、廊下側からしか鍵をかけられないような部屋に、
誰が居たのか気になっただけだ。
・・・社長さん自身か?」
「違う。それだけは断言しておく。」

それ以上答えるつもりは無いといわんばかりに、再び作業に戻っていった。

お互いの過去などどうでもよかった。
ただ、
「あんたが話す気が無ぇってんなら仕方が無ぇが、いえることは、
あんたが知っていることは、
この屋敷に忍び込んだヤツとあんたは関係があるってことだ。
剛三郎を介しているとしても、そのことを知っているあんたが狙われるには充分な理由だ。
人間を介した恨みなんてよ、ドラマにもウンザリするほど転がってるじゃねぇか。」
瀬人の指が再び止まった。

確かに瀬人はあの部屋のことを気にしていた。

「お前はあの部屋に居た人間と、今回の犯人に接点があるとでも言っているのか?」
「可能性の問題だけどな。世の中には愉快犯ってのが居るのは、最近じゃあ有名な話だぜ?」

あえてなんでもないように告げると、黙し何かを考えているようだった。
ピースの1つを瀬人が握っていることには間違いが無かった。
あの場で灰になっていないことに胸が躍る。

「まあさっさと探しもん終わらせて戻ろうぜ。」
「誰のせいでこんな事に」
なったのか、と文句の1つも言おうとしていたところ、
ブブブと携帯電話のバイブが机の上で音を立てた。

瀬人が面倒なようすでそれを手に取り窓を見る。
「俺の携帯・・・!?」
バクラがはっとして振り向いた。
慌てて電話に出ると、か細い声が届けられる。

『・・・誰か来るよ・・・?』
「誰がだ?」
『・・・わかんない・・・・・・2人』
「わかった。バクラ、2人ほど姿見えるらしい。」

バクラは海馬から携帯を奪い取った。
「遊戯、そいつ等どっから来た?」
『あの、おうちの方から・・・。』
「うちってここか!?」
『うん・・・外の木のところから・・・』
「まさか・・・。社長、この家、地下ってあんのか?」
「・・・ある。」
「そーいうことは先にいって貰わねぇと困るんだが、」
「・・・それがどうかしたのか?」
「家一個潰すんなら、地下から燃やした方が崩れ易いじゃ無ぇか!」

瀬人がそんな事を考えていないほうがおかしかった。
やはり地下にも何かあったのだろう。
瀬人の触れたくないもの、

ピースの鍵が。


だがそれを推し量っている場合ではない。

『バクラ・・・あのね・・・こっちに来るよ・・・??なんだか、ボクのこと見てる。』
「それは大丈夫だろ。」
車のガラスはスモークがかけられている、その上黒いコートを被っている遊戯が、そう見えるわけが無い。

バクラは慌てて外を見た。
バルコニーの先、門の真ん中に停められた車、
確かにそこに、姿があった。
コートからでもガタイがいいと解る男と、女か男かわからぬフードの人物。

ゆっくりと瀬人の車に近づいていく。

『遊戯、もう見なくていい、コート被ってさっさと座席の下にもぐれ!
電話も切れ!何も話すな!後部座席のロックはかけておけ!』
「うん・・・。」

電話が切れたか否かも確認せずに、
バクラは瀬人に電話を投げ渡し、駆け寄ってさっき見た猟銃をガラスを砕いて取り上げた。
「そんな、弾が出るかも解らんぞ!本当に骨董だ、」
「音がすりゃあいいんだよ!弾がでりゃあ最高だけどな!」
それを組み立て、弾を籠めながらバルコニーへ向かう。
見えぬようそっと構えたとき、2人の人間はリアガラスを覗いていた。

「まさか。」
当たるわけが無い。
何時のものか解らない火薬では、音が鳴るかも怪しいものだ。
暴発したらどうするつもりか。

抗議をしようとした瀬人は黙った。

バクラの顔は奇妙なほど愉しんでいて、まるで狩りでもするようだ。


「やるかよ。」


たった一言呟いた後、
軽い発砲音が響いた。

カツンとぶつかったのは、黒塗りの車のトランク。


1人のガタイがいい男が振り向いた。
姿は見えない、だが、
「見られたか。」
「引くのか?」
フードの人間は挑発的にそういうが、
「危険を冒す必要も無い。海馬瀬人には腕のいい運転手が付いているようだ。」
「まあいいさ。どうせすぐに、灰になる。」

2人はそのまま、例の車に乗り込んだ。
そして走り去っていったように見えた。


「ハッ調度良いしけり具合だったな!さーて、さっさと逃げるか。」
「お前、」
「ボケっとしてると、剛三郎の二の舞になぜ?俺は逃げるが。」
「あ、ああ。」

殺すつもりだったのだろうか。

いや、違う。

この男は2人の人間の間を確実に射抜いた。

だが感想を述べている場合ではない。
2人は抜き出した資料を持ち、屋敷を飛び出した。

歩いている場合ではない。

全速力で駆け出して、車に乗り込む。
後部座席には遊戯が小さく丸まって震えていた。

バクラはそれに構わず、シートベルトもしないまま、アクセルを踏み込んだ。

同時に轟音を立てて屋敷は燃え上がった。
やはり爆発というべきか、
先までいた部屋の棚や置物が飛んでいるのが目視できる。

少し先で車を止め、闇の牙城が燃えゆくのを見ていた。
「よく燃えんな。一日に2回も火事現場に居合わせるなんてな。」
「・・・最近では珍しい話ではないがな。」

瀬人は後部座席に乗りなおし、震えている遊戯を抱え上げた。
「怖かったか?」
首を横に振るが表情は生彩に欠いていて、
ぼんやりと鉛のような瞳で燃え上がる煙を見ていた。
「・・・皆、煙になっちゃったの・・・??」
「・・・煙に・・・か。」

煙になったのは、一体何なのか。

あの部屋か?地下に隠されたものか?

いや、それらは全てまだ、瀬人のうちに存在している。
彼が彼のトラウマを克服することも出来ぬうちに、いや、
克服などさせないかの様に、逃げていった。

「あの男は、永遠に俺を縛り付けるのだな。」


燃え上がる轟音の先に、亡者の嗤い声を聞いた。




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久し振りの更新ですが、文体はそんなに変わってないかな・・・?

段々適当になってきましたが・・・まだ5話なのか・・・
全体の20%も来てないですが・・・ほんとにおわんのか?

祓魔は割りと読みきり方なんですが、こっちは完全に続いているので、
前回とか前々回から読まないと意味不明ですね。ってここに書く注意書きじゃないな(笑)

これ、読んでる人いるのか・・・??

(08.08.27)AL41