Ep.2-03
意味がわからない。
何故そんなことがわかるのだろうか。
一般人3人は気味悪げに遊戯を見ていたが、
同時に何となくその笑顔で誤魔化されようと必死だった。
「じゃあ、トイレ行っても間に合う?」
杏子が少々引きつった笑みを見せても遊戯は全く気にしないようで、
「全然問題ないよ。」
と当たり前のように返事をした。
じゃあ、行ってくるね、と杏子は教室を出て行った。
「相棒、何かわかったか?」
今の会話にどんな文脈があったというのか、傍目にはさっぱりわからないままだが、アテムは聞く。
何を聞いているのかわからないが、残されている一般人2人も思わず会話の中に混ざるが、
会話の中心に居る二人はそれを気にすることなく続ける。
「うーん、一寸未だ詳しいことは解らないみたいだけど、それっぽいことはありそう。
この学校にはあんまり資料が無いから断定は出来ないって。
ただ、この学校の霊と呪いでは原因が別だと考えるのが早いみたい。
中には原因が同じものもあるみたいだけどね。あと、集団で放浪してるのが結構いるから、
払う自体は簡単かも。」
「さっきのモブか?」
「うん。あと、他にもいるみたい。」
モブって、
漫画とかに出てくる細かな人とかそういうやつ?
城之内は思わず質問していたが、やはり2人は気にしていなかった。
「ああ。さっき走っていってただろ?」
そういわれて一般人は思い出し、声に出したくない友人に代わり本田が問う。
「あの、どどどどってやつか?あれ人なのか?」
「ああ。霊だけどな。暴徒ってやつだ。助けを求めて叫んでいたしな。」
「何かから逃げるような声だったね。」
「・・・。」
遊戯は寂しそうな哀れみの表情を浮かべ、霊に同情する。
「恐らく、彼らはこの学校が建つよりもずっと前から此処にいて、
毎日ああやって助けを求めながら彷徨っているんだ。
自分達が死んだことを認めたくないのかもしれない。」
「原因がねぇと、結果がおこらねぇってやつか?」
「そうだね。だから、原因さえわかればすぐに解決するよ。」
そういって、また笑顔に戻る。
城之内の心は癒される。
アテムもまた遊戯を見て、微笑ましそうである。
「まぁ、とりあえず、地元の図書館あたりを探れば何か出てくるかもしれないな。」
「うん。」
「図書館なら、場所知ってるぜ?案内してやるよ。」
「本当か?場所だけでも教えて貰えれば、構わないんだが、」
「そんなケチ臭いこというなよ、一緒に行こうぜ?」
行く!と言いたげな遊戯が声を発するよりも先に、
「相棒が全然荷物の片付けをしないものだから、出かけられる状態じゃないんだ。」と、アテムが阻む。
完全に読まれた遊戯は膨れた。
「ただ、調べにいって貰うから場所だけは教えて欲しい。近くに目印になるようなものはあるのか?」
調べに言って貰うって、誰にだ?
ってか、さっきも遊戯が調べて貰ってるだのなんだの言ってなかったか?
いや、そもそも「何かわかったか?」ってなんだよ!?
「ああ、まぁ今度改めて紹介するぜ。」
と誤魔化された。
「それよりも、杏子は遅いな。」
本田が去ったままの杏子の安否を心配するが、城之内は立ち話でもしてんじゃねぇの?と気楽だ。
しかし、城之内の気楽な時は、
廊下から聞こえた、
幾つかのゴトンッと言う音と、ドンッという鈍い音と、
女の悲鳴と、男のうなり声により、あっけなく終了した。
思わず遊戯につかまると、遊戯は城之内の手にそっと手を重ねただけで、
城之内の目を見ることはなかった。
怯えたのは城之内だけではなく、教室の大半であった。
何が起きているかに怯えたというよりも、女子生徒の悲鳴に驚いたというのが正しいが、
それでも何故悲鳴が起きたのかという事を考えると、鳥肌が立つ。
今まで死者が出ていないだけで、いつ出るのか解らないのだ。
廊下にはすぐに男性教師の太い声で、教室に入りなさいという命令がなされ、
たむろしていた生徒達が慌てて教室へ入ってきた。
教室にいて安心安心の、だらりとした男子生徒が何があったのかと問うと、
天井のタイルが幾つも突然落ちてきて、一人の男子生徒の頭に直撃、タイルは砕け散り血が流れていた、という。
ついでにいえば、彼はそのまま病院へ運ばれたが怪我で済んだらしいと、数日後杏子から聞くことになる。
「幾つも・・・?」
不穏なものを感じ、やはり遊戯を一瞥すると、ただ「またキミの担当だね」と苦笑いしていた。
これが目的で学校へ来ているのだから仕事はしなければならないだろう。
アテムは立ち上がり、外へ行こうとした。
それで隣の席に一寸手が触れた瞬間、
バチンッという音を立てて手が弾かれた。
「どうした?静電気か?」
「ああ、まあ・・・。」
アテムは手を振って、それはまるで電気を振り払うような仕草だったこともあり、静電気として扱われた。
それから、曖昧な態度を見せ「こっちは相棒の担当だな」と言葉を返し、
そのままドアへ向かった。
「アテム君、あぶないから教室に居た方がいいよ。」
怯える女子生徒でも転入生の身の安全を守ろうとする姿勢には敬意を払うべきだが、
生憎安全を取り戻すのがアテムの仕事であった。
それに、
「杏子が戻ってきていない。」
そういい捨ててアテムは何のためらいもなく出て行った。
男子生徒には「無鉄砲のキザ野郎」といわれ、
女子生徒には「危険を顧みない紳士」と評された。
「なぁ、遊戯、またか?」
否定の言葉が欲しいが、
「うん。」
嘘をつくタイプの人間でもなかった。
ただ、
「大丈夫、すぐに解決するよ。あの手のものは原因が解らなくても解決できるからね。」
と安心させることも忘れない。
本田は相変わらず疑心暗鬼で、杏子の身を心配するが、頼れるのは出て行ったアテムだけだ。
「遊戯、杏子は大丈夫なのか?」
「うん。もう一人のボクと会えれば問題ないよ。城之内君、手いい?」
すっかり捕まったままの城之内ははっと我に返って慌てて手を離した。
「ちょ、遊戯も行くのか!?」
それは不安だ。
だが今度は期待通りに「いかないよ。」と笑ってくれた。一安心だ。
「うーん、個人的なものだと思うけど、頼まれちゃったからね。」
と、遊戯は席を立ち、さっきアテムの触れた机に歩み寄った。
「なんだ?さっきの静電気か?相当だったな。でけえ音したし、痛そうだったな。」
「あれは、うん、まぁ痛みとしては静電気みたいなものだと思うんだけど、ボクはなったことないからなあ。」
静電気じゃねぇのかよ、と本田は不満げだが
遊戯は上手く伝えられる自信がなかった。
「何ていうのかな、彼とボクが持つ力は相反するものなんだ。傍目には同じだけど、一寸ちがくてね?
彼は相手を力でねじ伏せる力、よく言われるのは剣とか槍とか、攻撃専門って言えばいいのかな?
だから、剣と剣でぶつかる時怪我をすることがあるのと同じで、相手が攻撃的だと痛みを感じることがあるらしいんだ。
うーん、磁石のSとSをあわせても弾きあう感じ、かな?」
「何となく解った。」
理解しきれないということが。
説明へたでごめんねーと苦く笑う遊戯が件の机に触れようとすると、
机はガタガタと音を立て、僅かに動いた。それは、まるで逃げるようであるが、
それでも遊戯が怖気ずくことはなく、両手で机に触れる。
何となく不安になった城之内が近くに駆け寄ると同時に、
遊戯はよろめき崩れ落ち、駆け寄った城之内の腕の中に収まった。
周囲の生徒は遊戯は今朝から具合が悪いと認識しているので、
大丈夫?医務室行く?とたずねてきたが、
城之内にはそれが彼の能力に関係することだとわかったので、
周りには一寸休めば元に戻るってアテムが言ってたし、大丈夫だぜと言い聞かせ散らせた。
遊戯を席に座らせて自らはその隣、まあアテムの席だが、そこに座って頬をそっと叩く。
「遊戯、大丈夫か?」
遊戯の頬はやはり高校生とはいえないほどプニプニしていて、
思わず抓りたくなり、抓ってみた。すると
「ひょーのうひひゅん、いひゃい。」
という拒否の声が聞こえて思わず手を離した。
「悪ぃ悪ぃ。で、大丈夫か?」
あのプニプニの頬をさすりながら遊戯はまた笑い、大丈夫だよと告げる。
「何があったんだ?本当に大丈夫なのか?遊戯。」
本田まで心配してくるので、相手が不安にならない程度の説明をする。
「さっき、もう一人のボクとボクの持つ力が違うって言ったでしょ?
彼がS極ならボクはN極なんだ。」
「つまり、アテムが弾くものとくっつくってことか?」
城之内より本田の方が理解力があるらしい。
「うん。それで一寸残留思念に引き寄せられちゃったんだ。こんなに強いとは思わなくて。」
「ざんりゅうしねん?」
「オーラみたいなものだよ。気とか発してるっていうじゃん?あれのモノに残るやつを残留思念って呼んでるんだ。
人の使ってた指輪とかって嵌めたくないっていう人結構いるでしょ?気味が悪いとか。
そういう“気味の悪さ”を読んで“原因”を探る方法があるんだ。今、一寸それをしたんだけどね・・・。」
その“原因”とやらは、成仏出来ていない死者に対することじゃないのか?
本田は説明を聞いて遊戯のオカルト能力を疑った。
「でもよ、特に原因も何もねぇんじゃねぇか?」
だってそいつはよ、
それこそ幽霊部員並だけど、
「別に死者だけじゃないよ。生きている人の意思でも残るんだ。」
「で、どうだったんだよ。」
聞かれた遊戯は指組んで目を瞑り、まるで神に祈るようにしながら、
読み取ったものの解析を始める。
「血。高いビル、大きなお屋敷。恨み、呪い、殺意。」
出てくる単語一つ一つに恐怖を感じる。
「ゲーム・・・。敗者・・・死・・・。」
「お父さんかな?でも、違う、とても冷たくて・・・呼んでる。」
その席は、
その席に座っているのは、
「せと・・・瀬人、海馬。」
本田はぎょっとした。
「遊戯、何で、海馬のこと知ってんだ?」
今日のHRでも出席に呼ばれていなかった。
寧ろ、出欠自体、遊戯は出ていないはずだ。
「呼んでたんだ、お父さんが・・・。瀬人ってね。」
「海馬、は?」
「会社の名前がそうだったし、本人が言ってる。」
「血、とかって何だ?」
えーっと・・・
遊戯は渋った。そして
「あのね、こういうのは個人情報なんだ。
本当は出来るだけ、生きてる人の思念を読んじゃいけないんだけど、
今回は仕方が無いよね?」
と、笑顔で誤魔化した。
そして2人は上手く誤魔化された。
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