Ep.1-04
出されたコンテナの前に立つと、
船員達が妙な目で此方を見ていた。
はっきり言って縁以外の何の関係の無い自分にとって、その視線は居心地が悪かった。
アテム、と、遊戯はこれからコンテナの中で起こっているオカルト現象を鎮めるのだ。
彼らの視線には、事件の解決を願う気持ちと、オカルトに対する不安と、正直不信感があるのだろうから、
何の役立たずである自分が受けていいものではない。
しかも、話を聞いただけの、事態を目にする前からびびって居るのだ。
「このコンテナです。」
船員の中から一人前に出て、彼は、1つのコンテナを指差す。
ぱっと見た範囲では普通だが。
船員の顔は、真っ青である。
恐らくその現象を目にしたのだろう。
それ以上コンテナに近寄らない。
城之内も近寄りたくない。
アテムは暫くそれを睨みつけていたが、首だけ動かして、斜め後方に居る遊戯にたずねる。
「相棒、どう思う?」
「うん、キミの担当だと思う・・・。ただ、何か、少し嫌な予感がする。」
「ああ。悪化する前に片付けねぇと面倒だな。」
内容を知りたくない。
此処から何が分かるというのだろうか。
「箱ごとやるって手もあるが」
「うーん・・・」
「中には1つしかないみたいだし、仕方が無い、中に入るか。」
「もう一人のボクは、すぐに逆恨みされるタイプだから、気をつけてね。」
「分かってる。」
何やら解決手段が決まったらしい。
「開けて貰えますか?」
アテムがそう言って近寄ると、
ドンッ、と
コンテナの中から、何かがぶつかる音が響いた。
周りからうわぁ、だの、うおぅ、なんていう声が漏れ、
城之内も思いっきりびびり、思わず遊戯の肩を掴んだ。
遊戯はそれに驚く様子も無く、嫌がるわけでもなく、此方を見上げて、大丈夫だよ、と微笑む。
一方アテムは、全く動じずに、コンテナへ歩み寄っていった。
船員の中でも余り信じて居なさそうな者がそれと同時に駆け寄って、
コンテナを、開けた。
生温い空気が、あふれ出た。
「城之内君も入ってみる?」
「ゆ、遊戯は入るのか!?」
「うん。」
「じゃあ、俺も...。」
外にでも一人では居たくなかった。
それに、遊戯に触れていると、何か、安心するのだ。
躊躇うことの無い足取りで歩み寄る遊戯にしがみ付いた状態で、後を追う。
コンテナ内は暗いが、丁度落ち始めた太陽が、中を照らしていた。
一般人代表の目には、中は、荷物しかなかった。
床には壊れた木箱と、中に入っていただろうオレンジが大量に転がっている。
「Adjurete,spiritus nequissime.」
アテムは何やら英語か何か分からない言葉を発し、コンテナ内を睨みつける。
一歩、中へと踏み出すと、
転がっていたオレンジが幾つも宙に浮き、
城之内は、それから後のことをよく覚えていない。
ただ、
黒衣の男が、薄笑いを浮かべて、“見えないもの”に告げた
「オレンジなんかじゃ俺を殺せないぜ?」
という言葉と表情、そして、
ずっと傍にいた温もり。
断片的なものといえば、思い出したくは無いが、幾つか覚えている気がする。
何も無いところから火の手が上がったり、それが飛んだり、
それが消える瞬間に、低い男の声で叫び声が上がったりしたことがあった気がする。
そして、今、何故かハンバーガーショップでたむろしている。
「良かったね、今夜は夕食作らなくてすむよ。」
「部屋の片付けも未だだったから、いずれにせよ外食予定だったけどな。」
「・・・。」
「あれ?城之内君、大丈夫?」
城之内は現半ばであるが、遊戯は「仕方が無いよね。」と言う
オカルト嫌いの人間が、あの場に居合わせられたというのはすごいことだ、という。
寧ろ、オカルト嫌いの人間が、あの場に行くと言ったことも相当だと、アテムは言う。
褒められて嬉しいのかも良くわからないが、一番驚いているのは城之内自身だった。
「あー、まぁ、何つーか、結構ああいう状況に置かれることが多くって・・・。」
「え?」
遊戯とアテムは2人とも同時に反応した。
それぞれ手には紙コップが握られていて、何だか合わせ鏡のようでおもしろかった。
「何か、学校がよ、って、あっ、俺、童実野高校の1年なんだけど、」
と言った瞬間に、隣に居たアベック(古)がぎょっとした様子を見せ、そそくさと遠くへ席替えをした。
いくらなんでも、こんな風に学校が有名なのは憂鬱だ。
「童実野高校って、」
「城之内君、童実野高校なの!?」
割と冷静なアテムとは対照的に、遊戯は目を輝かせ、身を乗り出している。
「あ、ああ。けど、どうしたんだ?」
「俺たちは、9月から童実野高校に転入する予定なんだ。」
あれ?俺たちって、
「よかったぁ。城之内君と同じ学校かぁ。」
「よかったな、相棒。」
遊戯は、高校生だったのか!!(今まで小学生認定だった)
「え、あ、でも学校は、」
オカルト旋風・・・
ん?
ん??
若しかして、
「仕事だ。」
「まじでか!?」
とうとう、オカルト学校にメシア参上と言ったところか。
1学期の時点で学校も黙っては居らず、陰陽師とか何とかいう「うさんくさい」のを招いていたが、
一時的な押さえにはなっても、全然現象は消えなかったのだ。
だが、
飛んでくるオレンジを映画のCGのように止め、
何かを唱え、振り払う素振りをするだけで床に模様が浮かべ、
目に見えないものを打ち消したのをこの眼で見たのだ。
あの男の叫び声は、断末魔だったと言えなくはない。
つまり、
目の前に居る、華奢な黒衣の男ならば、
本当に・・・
「それにしても、何か、すげぇよな。」
「何がだ?」
「だってよ、正体不明の見えねぇもんを倒すんだぜ?」
「いや、別に全部が見えないわけじゃないけどな。」
へ?
一般人の感覚が分からないらしいアテムと、
完全に一般人の城之内の間には、なにやら理解の壁があるようだ。
遊戯は、ナゲットを食べ終えると、ニコニコと説明を始める。
「ボクらは、城之内君が見えないものも見えるんだ。」
オカルトの最も嫌な部分だ。
「それは霊視の力の差によって、見える段階は違うんだけど、
要は、城之内君は霊視の力が弱いから、見えないで、
もう一人のボクは、強いから見える。」
「で、相棒は俺以上に強いから、更に見える、と。」
「それに、元々見えないものも居るんだ。
オレンジが飛んでたでしょ?
ああいうのは、元々姿なんか無いことが多いんだ。
偶には、姿を見せることで恐怖を与えようとすることもあるんだけど。」
「幽霊とかってよくわかんねぇんだけど、コンテナに入るとき、遊戯が言ってたよな。
理由があるから、云々ってよ。」
「うん。オカルトって言うと、全部ダークな感じがしちゃうからね。」
何か適切な言い方は無いかなー、と遊戯はうなる。
その様子を見て、アテムは苦笑する。
この2人が、同じ年とは・・・。
「何か言葉に出来ないなぁ。」
「感覚的なものだからな、相棒にとっては。
そうだな、意図的か意図的じゃないか、とでも言えばいいんじゃないか?
相棒は言ってるのは、意図的じゃないもの場合だな。
で、さっきのは意図的。」
前者が俺担当で、後者が相棒担当なんだぜ?
と、
丁寧に説明をしてくれるが、
「意図的なやつって、」
「まぁ、良くある呪いとか呪詛って言うやつだぜ。今日のもそれだったな。」
分かるような、分からないような。
「あー、一応分かった気はするんだけどよ、うちの学校のはどういうもんなんだ?
さっさと治るもんなのか?」
現実的な問題だ。
オカルトの話は正直、気味が悪いが、これだけ身近で起きてしまうと、
何だか感覚が麻痺し始めているようだった。
「見てみないことには分からないな。
話によると、起こり始めたのは最近のようだし。」
「ねぇ、もう一人のボク。明日、学校に行ってみない?」
「ただ、家も片して無いからな。そっちの方が優先だぜ?」
「うー、わかったよ。」
学校が楽しみで、遊戯ははしゃいでいるように見える。
「遊戯達は、前何処にいたんだ?」
「色々だよ。落ち着いたことはあんまりないかな。」
「相棒の出身は日本なんだが、事情でエジプトに居たんだ。俺は元からエジプト生まれだけどな。」
そういえば、
どうして、そんな単純な質問をさっぱり聞き忘れていたのだろう。
「なぁ、お前ら、双子じゃないのか?」
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