*ちょっとシリアス。
15.イシス城下町 -南の祠経由-
「何か、毒毒しいね・・・。」
祠を見つけたはいいが、
その周りを紫の沼地が囲んでいる。
「明らかに歩くとHPが減りますって感じだな。」
「画面上だとザクザクっとかって音がするやつか。画面が赤に反転したりするやつだろ?」
「その通りだろう。」
しゃがみこみ観察していた商人もがやはり同意見だ。
「どうするの?行かないとダメだよね。」
「そうだな・・・。」
「思ったんだがよ、誰かが一人行けば良いんじゃないか?」
盗賊の提案は魅力的なものだった。
「毒の中ずかずか行くとHPが減るだろ?
誰かが代表して一人で行けば、回復も少なくて済むぜ。」
砂漠の中、蟹との戦闘で疲労困憊。
今日は祠で鍵の情報を聞いてから、一度戻って休むつもりだったのだが、
出来ることなら今日中にイシスへ向かいたいくらいなのは事実。
此所で余分なMP・薬草の消費は避けたい。
「じゃあ誰が行く?」
誰が好んで毒の沼に飛び込むものか。
数秒の沈黙。
そして嫌な予感が的中する。
「ボクが行くよ。ボクは主戦力じゃないし。」
きりりとした様子ではっきり挙手。
予想できていた展開だ。
「回復役に行かせるような愚かなことを俺が容認するものか。」
「新参が出る幕じゃないぜ。」
「それなら最初から手を挙げれば良いのではないか?」
「お互い様じゃねぇの?社長サンよぉ。」
遊戯は「ボクが行くって!」と言い張ったままである。
収集をつけるのが勇者の役目。
「全員で行こう。
情報が手に入れるには強制戦闘、なんていうことが万が一あるかもしれない。
それに外で待機している間に蟹にでも襲われるくらいなら、
毒沼を歩いたほうが合理的じゃないか?」
それもそうか。
3人の状態で蟹に襲われるとなると、難易度が一気に上がるように思える。
というわけで、一行は沼を渡ることにした。
「遊戯、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。」
海馬は振り返り遊戯の様子を確認すると、
遊戯は律儀にも皮のスカートを持ち上げている。
「(得をした気分だ・・・)」
悦に入っていると祠へたどり着いた。
「だりぃな・・・。」
「とりあえず中に入ろう。」
遊戯を沼から引き上げて、一緒に祠へ入っていった。
そこは祠というより小屋というのがふさわしいようだ。
そして何時ものように爺がいる。
部屋を物色し始めた盗賊をよそに、爺に話を聞く。
「こんにちは!」
「おお、元気なことじゃ・・・
砂漠を通って来たのか・・・ご苦労なことじゃのう。
判っておる。こんな辺鄙な所へやってくる者はみな同じ。
魔法の鍵をお探しか?」
「その通りだ。」
「カギは砂漠の北、ピラミッドに眠ると聞く。
しかしその前にまず、イシスの城を訪ねなされ。
確かオアシスの近くにあるはずじゃ。」
「オアシス・・・。」
「ありがとう、おじいちゃん!」
高齢者担当の遊戯はそれからも爺と楽しそうに話をしている。
その一方でアテムと海馬は地図を広げる。
「砂漠の何処にオアシスがあるんだ・・・。」
「今日中にたどり着けるものか・・・。
俺はこの砂漠を突っ切るなどという馬鹿げたことには反対だからな。
せめて山沿いを行くべきだ。
この地図は歩いたところとその周辺が記録される。
山沿いに南側からさぐるのが早いのではないか?」
今彼らが居る祠は砂漠の南東に位置する。
「今日中に見つかるかどうかはわからんが。」
「俺の勘じゃぁそんなに遠くはないと思うぜ。
そもそも、ピラミッドが北にあるんだ。
北といっても。海沿いのワケがないし、山沿いのわけもない。
恐らく四方にある程度の砂漠地帯を確保しているだろう。
イシスはそれよりも南になるだろう。
海馬の言うとおり南から山沿いに調べていけば見つかるはずだ。」
今後の針路が決まったところで一行は再び毒沼を通り砂漠に出た。
「で、どうなったんだ?」
「このまま西に行く。バクラ、途中でオアシスを見つけたら報告してくれ。」
「イシスか。オアシスの近くに作るのは普通だな。」
「じゃあ西へしゅっぱーつ!」
「遊戯、そっちは北だ。」
西へ進む。
途中蟹だとか火を吐く虫だとか、に襲われながらも、
山沿いに進んでゆき、
日が境界線に消えてゆく。
「寒くなってきたね・・・。」
「大丈夫か?」
「うん・・・。」
「向こうの山まで突き当たっても見つからなかったら一度戻ろう。」
「そうだな。」
暫くするとバクラがはたと立ち止まった。
「どうした?」
「オアシスじゃねぇか?」
指差された北の方を3人も目を細めて見てみる。
確かにそれらしき何かがあるように思える。
「蜃気楼ではあるまいな。」
「この気温ならそれはないだろう。とりあえず行こう。」
少し早足になって、オアシスへ向かっていく。
広い、湖とも言えそうなオアシスがあった。
「あったね!バクラ君すごいね!」
「だが街も城もないぜ。」
「オアシスの周辺だと言っていたな。周りを行くか。」
湖の周りを西へ歩き出すとすぐに城が見えた。
その手前に街があるようだ。
すぐ手前まで来ると、街がかなり大きいことがわかる。
更にその奥に聳え立つ城、いや宮殿というのがふさわしいだろう、
オニオンドームの宮殿がかなり大きいことも何となく想像できた。
だいぶお疲れの僧侶がくしゃみをしているのを見て、
とりあえず一泊しようということになった。
街の入り口からまっすぐのところにある宿屋へ直行した。
「疲れた・・・。」
「今日はかなりしんどかったな。」
「そうだね・・・あ、海馬君初日からいきなり大変だったね。」
「少々不慣れなことが多かったが、大したことはない。
問題はベッドが小さいことだ。」
海馬邸の大きなベッドから見れば、3分の1くらいの質素なベッドはしょぼい。
「寝にくいね。」
「これほど体を動かしたのは久しぶりだからな、ベッドの大きさなど関係なく眠れそうだ。」
遊戯に「お前が心配することではない」と告げる。
気を使ってくれる海馬に安堵はするが、
この街に入ってからアテムとバクラの様子が少し変わったことが気がかりだった。
「あの、明日はどうする?」
怖い顔をしていたアテムに恐る恐る話しかけると、何時もの顔に戻って、
「とりあえず明日はこの街で情報収集をして、イシス城に行こう。
武器や防具も調達しなければいけないし、ピラミッドに行くのは暫く先だな。
慌てることもないだろう。」
「うん・・・わかった。」
「では俺はもう休ませて貰う。」
「おやすみ!」
珍しいことに海馬がさっさとベッドに潜り込んだ。
どうこう言いつつ疲れているのだろう。
黙っていたバクラはさっと立ち上がると部屋を出て行ってしまった。
「え、ば、バクラ君!?」
止めないアテムにいいの?と聞こうとしたが、アテムもまた怖い顔に戻って外を眺めていた。
遊戯はそろそろと音を立てぬようにして部屋を出た。
「バクラ君?」
姿が見えずに不安になる。
「何処に行ったのかな・・・。」
宿のフロントにも見当たらず少し外に出てみようと思ったところ、
「夜は出ないほうが良いぜ?」
と、外から探していた当人が顔出した。
宿の外の壁に座り込んでいるらしい。
遊戯はそれに習って隣に座り込んだ。
「ビックリしたぁ・・・もう、何処行ったのかと思っちゃったよ。」
「ちょっくら夜風に当たろうかなーってな。」
「疲れてないの?」
「そーいうわけじゃねぇんだがな・・・なんつーか、胸騒ぎがする。」
「・・・あのね、一寸その、聞きにくいことなんだけどさ・・・。」
アテムとバクラ君ってどんな関係なの?
恐る恐る訊いて見た。
バクラは一瞬真顔になるものの、惚けてくる。
「同級生じゃねぇのか?或いはお前の友人。」
「そーじゃなくってさ!・・・なんか、何ていうのかな、
偶にボクが知らない話とかしてるじゃない・・・アテムも教えてくれないんだ・・・。」
お互い、隠そうと思っているわけではないが、
話したところで何にもならないことを知っている。
だが友人というものを何よりも大切にする遊戯にとって、
それは気になることなのだろう。
「・・・まぁなんだ、お前の言いたいことはわかるが、
生憎話すことじゃねぇ。お前に隠そうっていう風にグルになってるわけじゃねぇよ?
それぞれの都合ってやつさ。
俺がそれを黙っていても、お前に何か問題が生じるようなことじゃねぇ。」
「・・・そうなんだ・・・。」
「ほら、疲れてるんだろ?さっさと寝たほうが良いぜ?」
「バクラ君は?」
「俺はもう少し此所に居る。」
「わかった・・・・。おやすみ。」
丸め込まれたような、少し寂しい気持ちを見せぬよう笑って宿の中に戻ってきた。
誰にだって秘密にしたいことはあるのだろうけれど、
あまりにもあからさまな態度に不安を覚えた。
バクラは何時も飄々としていて、悩みはあるのだろうけれど、
それを見せないところがあっただけに、特に気になったのだ。
「でも・・・今はそれどころじゃないよね・・・戦いに集中しなきゃ・・・。」
言い聞かせながら部屋へ戻ると、
アテムは先とは違う様子でベッドに座っていた。
「ご、ごめん、勝手に出て行っちゃって・・・。」
「気にするな。バクラは見つかったか?」
「え、あ、うん・・・。まだ外に居るって。」
「そうか・・・。バクラのことはあまり気にするな。相棒だって感傷的になることはあるだろう?」
「うん・・・。」
遊戯は布団にもぐる。
納得は行っていないようだ。
遊戯と自分の立場が逆だったら、やっぱり自分も納得いっていないに違いない。
「俺とバクラは・・・少々エジプトに縁があるんだ。」
その口調はまるで子供を寝かしつける読み聞かせに様だった。
遊戯は布団をかけようとしていた手が止まる。
「キミはエジプト出身だからわかるけど、バクラ君も?」
「ああ・・・。エジプトは元々人気のある場所で、色々謎めいたものがあるから、
一層人気が出て、研究もされている。今でも、解明されていないことが山積みだ。」
未だに一年に何回エジプトの特集が組まれていることか。
だがこれだけ技術が発達しても未だにピラミッドが何であったのかという明確答えは出ていない。
強制労働だったのか、はたまた、公共事業だったのか。
色々な説は出ているし、定説らしいものもあるが、答えかどうかは怪しいものだ。
「だが、それは場所にだけ言えることじゃなく人にも当てはまるかもしれない。
人は誰だって意外な過去を持っているもので、秘密にされていることは少なくない。
海馬も本当の両親のことは話そうとしないし、相棒だって黒歴史みたいなものはあるだろう?
それが偶然、俺とバクラには多少の共通項がある、そしてそれがエジプトに関係している、それだけだ。」
それだけ、という言葉で遊戯の興味を削げるわけが無いのは判っていた。
だがアテムにそれを話す勇気はなかった。
「・・・いつか、相棒に話すときは来るかもしれない。
いや、いつか話そう。」
「本当に?」
「ああ。」
「約束してくれる?」
「勿論だ。」
遊戯が小学生のように指きりを求めてくる。
思わずそれに応じてしまう。
「さあ、明日も何があるかわからない、早く寝たほうがいいぜ。」
「うん。キミも早く寝たほうがいいよ。・・・おやすみ、アテム。」
「ああ。お休み。」
微動だにしない海馬、
寝息の聞こえ始めた遊戯。
アテムはそれらを一瞥して、また外を眺めた。
「・・・あと少しの話だ。」
此所のイベントをクリアすれば・・・。
アテムもとりあえず布団にもぐったが、目は冴えていた。
此所がゲームの世界と知りながらも、錯覚している自分を哂いながら、
眠ろうと目を閉じた。
その夜バクラは戻ってこなかった。
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詳細にアテムとバクラの関係を考えているわけではありませんが、
原作記憶編と思っていただければ十分です。
二人とも遊戯には話したくないようですが、何ででしょう・・・
社長なら「非科学的」とかいって終了するのでしょうがねぇ・・・
社長はなんだかんだ適応能力ありそうな気がするのですが、いかがでしょう;
ゲーム駄文になると一気に色あせるな社長・・・集団行動には不向き・・・
今後2回ほどアテムとバクラが嫌味合戦をする予定。
凶悪な王様復活(笑)
(09.03.04)AL41