7.一方通行
*へたれ王
惚れてしまった何が悪い。
アテムはそう思いつつも、越えられないでいた。
一言、告げる勇気はあるのだが、恐れていることもある。
隣でおいしそうにクレープを食べている遊戯を眺めているだけだ。
頬についている生クリームを嘗めるだけの権利はある。
いやいや、唇を嘗め上げるだけの権利はあるはずだ、本来であれば。
一応これでも恋人なのだから。
「(・・・相棒の本心が解れば・・・。)」
アテムのこの気持ちが双方向あれば、
遊戯の出す条件の全てを飲み込んででも、今すぐにその唇に触れてやりたい。
だが、一方通行だったらどうだ?
突然一応形式的には恋人である男が、
いきなり「キスがしたい」といってきたらどうだ。
もしくは強襲して、強引に奪ってしまったらどうだ。
その後遊戯が袖で口でも拭きようものなら、
アテムはその場で舌を噛む自信がある。
だが、このまま耐えていたら爆発してしまい、
キスを奪う云々の問題ではすまなくなりそうだ。
「(推しはかることは出来ないか・・・?)」
遊戯のことだから、間接キスなど意識しないだろう。
「ちょっと飲ませて?」なんてことは、
余りにも一般化しすぎた状態だ。
そんなもので満足出来るわけが無い。
最近は向かい合うと、必ずといっていいほどその唇に目を奪われてしまって、
何処となく不審者。
折角の2人の時間も充分に楽しめないではないか。
そこでアテムは、
「相棒、生クリームついてるぜ?」と、
口元のクリームを指で拭い取ってから、
ペロリと嘗めてみた。
遊戯はかぁっと顔を赤くして、呻る。
「甘いな。」
「だ、だって生クリームだよ、甘いよ。」
キミ、甘いの苦手でしょ?
と、アテムが嘗めたという行動ことに関しては、余り言及がなされなかった。
これはセーフか。
だが、さっきよりももう少し直接的な行動で出てみればどうだろうか。
かなり思い切った行動に出ることを決意した。
「相棒、指にもついてるぜ?」
「あ、」
ホントだ、と遊戯がそれを嘗めようとする前に、
アテムはペロリと嘗めた。
すると先とは比べられないほどに顔を真っ赤にして、
口はあうあうと、言葉にならないらしい。
「(拙かったか・・・!?)す、すまない・・・」
恐る恐る謝ると。
「そ、そういうのは、人が居ないところでしてよ・・・!!!」
此処も人が居ないといってはいないが、屋外だ。
って、え?
「・・・じゃあ、私室ならいいのか?」
「えっ、あ、そ、そういうわけじゃなくって!!!」
人が居なければ良い、ということは、
人が居ないところではどうぞ、ということか!?
「・・・あ、あのね、だから・・・。」
「解ったぜ相棒。」
そう、遊戯の腕を掴んで、アテムは自分のマンションへと引きずってゆく。
「ね、ねえ!」
「俺んちいこうぜ?」
「ちょ、一寸まってよ!」
「俺は待てない。もう限界だ。相棒が出す条件は全部飲むから、
俺の希望も聞いてくれ・・・。」
思えば最初からそういえばよかったのではないか?
キスはいやか?と。聞けばよかったのではないか?
多分聞けばよかった話だ。
「我ながら情け無いぜ!」
「?」
アテムは後悔しつつも、踏み出した一歩の感触を確かめていた。
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何時か、缶コーヒーで間接キスでドキドキしていたバクラに対する挑戦状ですか、王様
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8.制限速度
*例によって、
*プラトニックはバック!
*下ネタ?発言あり 微エロ?
(拍手で微エロってどうなの?)
「社長、これ以上は・・・。」
「・・・仕方が無いか・・・。」
最速のルートを制限内のスピードで飛ばしていた。
まだ遅い。
これではダメだ、だが、
このことを話せば、
「キミは全くワガママなんだから、といわれるだろうな。」
安易に想像が出来てしまうのは、
それだけのものを、自らの記憶に保存し続けてきたからか。
海馬は飛んでいくように流れる街灯を眺めていた。
時計に目をやる。
もう、11:50になるが、
「後どれくらいだ?」
「30分かかりませんが・・・。」
「間に合うかも知れんな。」
だが、何だかんだいって子どもだ。
12時過ぎては遊びつかれて、寝ているかもしれない。
「・・・寝顔でも結構だが・・・。」
本当は、今夜はこんな予定がなかったのだ。
だから遊戯を屋敷に呼んで、今夜こそは
遊戯が拒み続けた一線を何とか雰囲気で誤魔化しながら越えてやろうと思っていたのだ。
それが、昨日あったはずの予定が天候の都合で欠航した飛行機のお陰で
今日になってしまったために、
予定は狂ってしまったのだ。
「・・・物足りん・・・。」
そろそろ限界だ。
最近は泊まりで遊びに来てくれているが、
隣で気持ち良さそうに眠っているだけで、
向こうが自分の魅力に無頓着の無自覚なものだから、
こちらは悶々としたまま酷な夢を見て終わるのだ。
ベッドで遊戯がニコニコ笑いながら待っていて、
彼から縋ってきて、キスをして、
温かい腕が伸びてきて、
石鹸の香りがする体に直に触れようとするところで、目を覚ます、
余りにも酷な内容だ。
「フン、現時点では夢を支配できないとしても、
現実であれば俺がいくらでも変えてやる。」
脈絡の無い独り言に隣の磯野は反応に困りつつも、
車は屋敷を目指し、最速で走り続けていた。
屋敷に着いたのは、0時15分
予定より5分早く辿り着くことができた。
モクバは寝たと聞けたが、海馬の部屋にいる遊戯の状態は確認できず、
一応寝ている状態を想定し、
そっと部屋のドアを開けた。すると、
「海馬君、お帰り。」
「遊戯・・・。」
遊戯は風呂から上がって着替えた格好のまま、
ソファに座って、珍しく宿題なんかをしていた。
「お仕事お疲れ様。」
「すまない今日は・・・こんな予定ではなかったのだが。」
気にしてないよ、珍しく宿題終わりそうだし、と、
前向きな様子を見せてくれた。
だが、終わりそうというそれは、最後の応用問題が全く手付かずだったようで、
周りに、全く関係の無い数字が列挙されている。
星やレベルとか書いてある。
おそらくカードのデッキを構想中だったのだろう。
「フン、こんなのも解らんのか。」
「キミと一緒にしないでよ。」
遊戯の隣に座り、シャーペンを奪い取って、
解いてやる。
「待たせた侘びだ。」
「わーい!」
無邪気な笑顔になんだか酷く安らいで、
溜まっていた疲れがどっと出てしまったらしい。
「海馬君?海馬君!」
ぽんぽんと叩くが、反応はなく、
ぽてりと頭が肩に預けられた。
「寝てるの?」
らしい。
だが、低い遊戯の肩では辛そうで、
遊戯は「大きな子どもだね」と苦笑しながら、
己の膝を、恋人に提供することにした。
「予定とは一寸違うけど・・・こんなのもいいかも。」
滅多にお目にかかれない優しい寝顔を見て、
遊戯も笑った。
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実は、今朝、
某ネズミランドに夕方パスを買おうと行ったところ
「チケット売り切れました」って言われた夢を見ました。
・・・この夢を見るのは二度目です
・・・・・・関係ない後書きでした
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9.追い越し車線
*甘いです
*気の抜けたコーラみたいな甘さです
*ばくらくんはこうこうせい(=下ネタあり)
*前と非じゃないくらいにエロネタがいっぱいです
出し抜いた、というと、語弊がありそうだが、
間違いでもないと思う。
幼馴染だとか権力者なんてものを出し抜いて、
とうとうこの横顔を手に入れた。
いやいやそれだけではない。
「遊戯。」
「ん?」
こちらを向いた瞬間に、
許可なくキスをしたって怒られない。
寧ろ、
「もう、急にはやめてよぉ・・・。」
とかなんとかいいながら、可愛く照れてくれる始末だ。
「顔見てるとしたくなんだよ。」
「じゃあ、見ないで。」
ツーンと手で顔を隠すが、
所詮は戯れであって、
押し倒すように手を外せば、
恥ずかしそうに笑っている顔を見ることが出来る。
「もー、さきからこんなことばっかり。」
「しょうがねぇじゃ無ぇか。」
そう、今日は遊戯の初お泊りである。
付き合っている男の家に泊まるというのはどういうことだ?
そう思うだけでニヤニヤしてしまう。
ベッドの上でどんな顔を見せてくれるのか楽しみでならない。
恥ずかしがりながら自分で脱いでもらうか、
焦らすようにしながらゆっくり脱がしてやるか、なんて事を考えてしまうのは、
彼が人が言うほど老けていない証拠か。
彼も立派に高校生ど真ん中であるということだ。
これだけ気に入ってしまった幼い顔が、
色っぽく変わる瞬間を、
幼馴染だって見たことが無いはずだ!
「(お先に、ってか?)」
優越感に再びニヤニヤしてしまう。
「バクラ君?」
「あ、あーなんだ?」
「大丈夫?ぼーっとしてたよ?」
誰のせいだと思ってやがる!と小突きたい衝動を必死に抑えながら、
そんなことねぇよ、と
遊戯を腕の中に閉じ込めて、
遊戯もそれに応じてぎゅーっと返してきた。
「バクラ君の体ってあったかいね。」
「お前も充分あったけぇけど?」
今夜は「熱い」って言わせてやるぜ。
「あー、また、ほら、ぼーっとしちゃってさ。」
「考え事っていえよ。」
「じゃあなに考えてたの?」
教えて?という声は甘い。
『焦らさないで・・・?』
『お願い、早く・・・』
『もっと、欲しいの・・・』
「バクラ君!」
「あ、ああ。」
「ほんとに大丈夫?熱とか?早く寝たほうがいいんじゃない?」
脳内で合成された声は、バクラにベッドへ連れて行くよう頼んでいる。
「まだ、はえぇよ。」
お前が早く寝たいんならいいけどよ、と付け足すが、
キミの健康の方が優先だよ、と、
今度は遊戯がバクラを押し倒すようにして、寝かしつける。
「(そう急ぐなよ)」
ニヤニヤしてしまう口元を何とか誤魔化しながら、
もう一度キスをしてみた。
それがいけなかったらしい。
「ふふっ、おやすみ、バクラ君。」
就寝前の挨拶だと思ったらしい遊戯は、
そのまま布団にもぐって、
バクラの隣でくうくうと眠ってしまったのだ。
「・・・なんつー、仕打ちだよ・・・。」
本格的に敵を追い越すのは難しいのではないかと、
初めて気づいた夜だった。
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追い越し車線にずっといるのはダメなんでしたっけね、と思って。
してないエロが書きたい。
(こんなところで願望を吐露してどうする。)
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10.右折禁止(闇表)
*間に合わせ駄駄駄駄文です
*なんだか闇←表っぽい・・・
(駄目、今日はぜーったいに駄目!)
遊戯はそう心の中で必死に言い聞かせた。
遊戯は知っていた、今日は杏子がアテムを買い物に誘ったことを。
杏子の気持ちは、良く判っているつもりだ。
中学の頃はコチラが慕っていただけに、杏子がアテムを慕っていると知った最初は複雑だった。
だが、今はもっと複雑だ。
中学の頃は、杏子に好きな人と一緒になって欲しいなんて思っていたし、
今でも杏子に幸せになって欲しい気持ちは確かにある。
だが、これだけは譲れなかった。
たとえアテムが自分を選んだとしても、選ばれたことに誇りがあった。
選んでくれたなら、やっぱり一緒に居たかった。
しかし、だからといって強情にも永遠に独り占めは出来ないと、
心の優しい遊戯はそう思ってしまうのだ。
そこで考えた。
もし、自分がアテムの一番である自信があるのなら、
何も意固地にくっついている必要は無いのではないか?
失うことを恐れるために威嚇して喚きたてるようなみっともないこと必要が無いはずだ。
そこで遊戯は、今日、アテムとあったはずの約束を「急用が出来ちゃって」と断って、
バイトが入っていない杏子と約束できるように仕向けたのだ。
これは自分を試すことも同じだった。
本当は何も用が無い上、遊ぶ相手も失った遊戯は、
右手にある商店街へ無意識のうちに歩きかけていた。
何故?あそこには恐らく、2人の姿があるはずだったから。
「(今日は、駄目なんだから・・・。)」
気になってしまう。
アテムはどんな顔をして杏子と喋っているのだろうか。
2人でいるときは何を話すのだろうか。
「(こんなの・・・最悪だよね。)」
大好きな人のことだから、全てが気になってしまう。
だが、そんなものは言い訳にはならない。
「(ボクは・・・キミの一番でいる自信がないのかな・・・。)」
嗤いそうな膝を必死に隠した。
「(キミは・・・ボクの一番である自信があるんだよね・・・。)」
対等でいたい。
遊戯がアテムの気持ちをそのまま返したのは、
対等で居たいからであったはずだ。
ならば、杏子との買い物を何でもなく了承した彼と同じように、
それを受入れたい。
右へ歩き出そうとしていた足を強引に左へと突き出して、
逃げるように走っていった。
何も見なかった。
自宅に駆け込み、部屋に閉じこもった。
布団の中は熱かったが、胸のうちよりマシだった。
頭の中のもやもやに目を背けるように、目を瞑り、
ゆっくり眠り込んでしまった。
食事に起され、食べ終えて部屋に戻ると、着信があった。
名前を見て慌ててかけ返した。
渇望していた声が聞こえる。
『相棒、今度は何時空いている?今日が会えなかった分、会いたいんだが。』
「いつでもいいよ。」
『じゃあ、今から行くぜ。』
「え、ちょ、ちょっとまって!今って、」
『まずいか?今日はあんまり相棒と話が出来なかったし、顔が見たくなったんだが・・・』
今は忙しい、と言いかけてやめた。
彼が会いたい気持ちは、自分が会いたい気持ちと同じだったから。
「いいよ、空いてる。」
『助かるぜ。あと一分で着く。』
「え!?もう家出てるの!?ちょっとまって!ボクもいくよ!」
階段を駆け下りながら思った。
たとえ誰とどんな話をしていても、誰と歩いていても、
誰がアテムの一番だろうと、自分が誰の一番であろうと、
自分の一番がアテムであることに変わりはないと漸く気づいた。
玄関を飛び出し、右に曲がった。
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はーい、意味不明・・・
闇表、書けないわ・・・(今更・・・??)
心情って書くのは楽なんですが、
でも読むのはつまらない(オイ)
ということで、間に合わせでしたー
海表とバク表はソコソコ(※)書けたかもしれない。
(※ソコソコ=駄文)
▲
11.高速道路(海表)
「あの・・・」
遊戯は恐る恐る隣の運転席を見た。
サングラスに激しく違和感を覚える。
遊戯はその横顔とメーターをチラチラ確認しては、声をかけようか悩んでいる。
どう見ても130キロは出ている。
「(・・・大丈夫なのかな・・・??)」
白いバイクのお兄さんがやってくるんじゃないだろうかと、そればかり考えている。
確かに高速道路は空いているし、流れが良好どころか、
前も後ろも数百00メートルは離れていて、
さっきから車間距離が変わらないということは、
前後の車も同じような速さで走っているらしかった。
遊戯は外の景色を眺めながら、呆然と考えていた。
思えば長い付き合いだ。
何で車の免許を持っているの?とか何時とったの?とか、
そんなことは聞くだけ無駄だと理解している。
半年も前の自分であれば、それを口にしていたことだろう。
「(解るようにはなってきたのかな・・・?)」
だが、この隣の男を理解しているかといえば、首を縦に振る自信は無く、
現に今も対応に困っているではないか。
遊戯は「こういう場合はそっとしておこう」と判断し、
口を閉ざして、外を眺めていた。
だが、見えるものは灰色の壁ばかり。
遊戯はとうとううつらうつらと助手席で眠ってしまったのだ。
「遊戯。」
声が聞こえる。
ログキャビンのベランダの椅子に座っていると、
向かいに海馬の顔が見える。
「遊戯。」
「かいばくん・・・?」
その海馬の表情は優しく、女子ならばほだされそうなその笑顔が、
今は自分だけのものだと思うと、嬉しくなった。
意識せずとも口元が緩む。
だが、海馬はその表情と裏腹に、厳しい口調でいうのだ。
「遊戯、起きろ。」
気づいた。夢から覚める。
遊戯はまだ車の助手席で、
サングラスを取った良く見た顔が、怪訝そうにこちらを見ていた。
「あれ?」
「寝ていたか・・・まあお前にしては朝が早かったからな。」
「んー・・・寝ちゃったよ・・・ごめん。・・・ここは・・・??」
見渡すとフロントガラスの先に、自販機が並んでいて、
喫煙所には数名の男が煙を吐きながら突っ立っていた。
「パーキングエリア?」
「そうだ。喉でも渇いただろう?まだ先はある。」
「う、うん・・・。キミは?」
「俺も何か買ってくる。・・・遊戯、1つ頼みたいことがある。」
「何?珈琲買ってこようか?」
「そうではない。」
海馬は妙に疲れた顔をしていて、
遊戯は、仕事明けそうそう車で連れ出してくれた海馬に悪いことをしたと思うのだ。
「ごめんね・・・?」
「まだ何も言っていない。・・・まあお前は隣で寝てしまったことを詫びているのだろうが、
お前が寝ている分には気にならん。」
ただな。
海馬は言葉を続ける。
呆れたような、情け無いような、彼にしては珍しい声で言うのだ。
「俺の方を向いて寝るな。気が散るだろう?」
「え?」
「お前の寝顔を見ていると、つい構いたくなる。」
130キロ出ている車を運転している人物が、隣の人間に気をとられたりしたら、
大惨事である。
「それは大変だよ!」
「大変だ。だから、止めてくれ。」
「う、うん。ボク寝ない!珈琲買ってくる!あ、キミの分も買ってくるから!」
遊戯はバタバタと出て行った。海馬はそれをため息交じりで見守った。
「まだ寝ぼけているのか・・・遊戯らしいといえば遊戯らしいが・・・。」
シートには財布が転がっている。
それを取り上げて、先の寝顔を思い出していた。
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社長に常識がどのくらいあるのかわかりません
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12.衝突注意(バク表)
「っでぇー!!!」
廊下は走んじゃ無ぇよ、ボケ!と言いかけてやめた。
紅葉が腹の上に居た。
夏といえば?
そうだ、保健室だ。異論は認めない。
保健室は涼しい。
だが貧弱な若輩者がワラワラと押し寄せてくる場所、それが保健室。
熱射病・日射病、熱中症、クーラー病なんてものを訴えながら涼みに来る。
バクラにとっては不快極まりない。
暑いからといって来るものとはレベルが違う。
此処は彼の住まいもとい職場だ。
暑かろうが寒かろうが彼は此処で授業をふけり、
人の居なくなる時は留守番をするのだから、職場だ。
エタノールでメッシュにしようなどと企む不届き者から薬品を守る使命を授かっている、
立派な職業警備員である。
彼がそれを容認されてしまっているのは、彼が問題児だったことにも起因するが。
いずれにせよ、この彼の職場は煩い人間が多くやってくるようになってしまった。
「保健室をなんだと思ってんだかよ。」
そう愚痴れども、減るわけでもなく、涼しい部屋でも人口密度が高ければ暑苦しい。
しまいには恋人同士でイチャイチャとやってくるやつまでいて、
バクラは追い出すよりも逃げた方が早いと思い至った。
そこで人が戻ってくるや否や、さっさと部屋を出た。
暑さにクラクラする。
まるでアンデット族のようにフラフラと階段を上り、
廊下を曲がろうとした時だ。
軽い足音が聞こえなかったのだ。
普段であればさっと避けるバクラだが、守備力0だったので適わず、
どーんと音を立て衝突した。
「でぇ・・・ったく、誰だよ、んな暑い廊下を走ってるやつはよ・・・!」
「てて・・・ごめんなさいっ!って、あ、」
「あぁ?・・・あ、」
涼しげな紫。
「あれー、バクラ君!?」
何処に居るのかと思ってたよー。と、涼しげに笑う。
「なんだ遊戯か・・・こんな暑い日によく走る気力が湧くよな・・・。」
「だって、走っても走んなくても結局暑いじゃん。」
「でも疲れるじゃねぇか。」
「そうだけど、やっと日直当番の仕事がが終わったからさ。早く帰りたいんだ。」
「なんかあったか?」
「パックの発売日!」
そういやそうだったか、と思いつつ、楽しそうな遊戯をマジマジと見てみる。
やっぱり白いシャツが良く似合っている。
「そりゃあ、急ぎだな。」
「えへへー。なんかいいカード出ればいいなって。バクラ君は買わないの?」
「どーすっかな・・・。見るだけ見てみっか。」
「じゃあ、一緒に行こうよ!」
デートのお誘いである。
答えは勿論、
「ああ、いいぜ?」
「やったー!」
無邪気に笑う遊戯に、不純な笑みを浮かべるバクラ。
この景観は中々良い。
そんなことを考えていると、教師に突っ込まれた。
「お前等、そんなにくっついて暑く無ぇのか?」
すっかり忘れていたが、
「あ、ゴメンバクラ君!暑いよね?」
わたわたと退く遊戯に、
「ま、お熱いのは今に始まったことじゃないけどな!」
少し余裕ぶって切り返す。
荷物を持って、熱い放課後に飛び出した。
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季節はずれてるな
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