Ep.4-02

*説明が多いため、ほぼ会話です
*色々あれです。




「何で保健の時間が4時間目なんだかなー。」

城之内が後方へぐぅっと伸びをするが、
さっきまでであれば後ろに座っている遊戯の反応があったはずだ。

「あれ?なあ杏子、遊戯は?」
「え?」

杏子が体を捻り、遊戯の席を見ると、
「居ないけど?アテムも居ないわよ?海馬君もだけど。」
「海馬なんてどうでもいいぜ。それよりトイレでも行ってんのか?」
「知らないけど、すぐ戻ってくるんじゃない?」
「そうだよな。アテムのことだし。」

彼のアテム像とは如何に。

それはさておき、

チャイムが鳴り、教師が入ってきても、出席をとっても戻ってこない。
「どうかしたのか?」
「ああ、遊戯達が戻ってこねぇんだけどよ。」
「出席拙いだろ。」
「でも、仕事か何かなのかな・・・。」

本田も含め喋っていると、教師に注意された。
それで2人のことをいおうとしたのだが、それも制されて、
結局その時間、2人は戻ってこなかった。
ちなみに海馬は暫くして戻ってきた。なにやら仕事で電話がかかってきたらしい。
何時のものことだった。


「ちょっくら探してくるか?」
昼はすっかり一緒に食べているので2人がかけると違和感があって、
城之内と本田が教室を飛び出そうとした時、
ドアのところで衝突した。
「っでぇ・・・。」
「何処の誰だ、相棒にぶつかる・・・ああ、城之内君。」
「う、うおっ、アテム?って遊戯ッ!?」

なんでもない顔をして立っているアテムと対称的にぶつかった方の遊戯は、
「いてて・・」と腰をさすっている。
「悪ぃ遊戯、ってお前等を探しに行こうと思ったんだ。大丈夫か?遊戯、」
「うん・・・。あれ?」
大きな瞳は近くに落ちている銀色の正方形の何かを見つけた。

「落しm」
「相棒、そんなことより早く食事にしようぜ。城之内君たちを待たせちゃ悪いだろう?」
アテムが視界を遮って、手を差し伸ばしてくる。
しかし遊戯はもう一度それを確認しようとしたが、それは既にそこに無かった。
「気のせいかな・・。」
「どうした相棒。」
「う、ううん別に何でもないよ。」

遊戯は一転笑って、その手をとる。
2人は何でもないように城之内たちに混ざっていった。



彼らが食事をするのは専ら屋上なのだが、今は暑いということで、
最上階の踊り場が彼らの集まる場所だった。
「びっくりしたぜ、4時間目、2人とも居ないからよ。戻って来ねぇし。」
「ちょっとね、急に調べものが出来ちゃったんだ。お仕事関係のね。」
「けどよ、今日は海馬が居るから大丈夫なんじゃねぇのか?」
「うーん、でもね、何かが起きてからじゃ大変だからさ。下見もお仕事なんだ。」
「ふーん・・・。ま、保健の授業くらい休んだってどうってこと無いよな!教科書で習うようなことじゃねぇしよ。」

今でこそ落ち着いたが、中学時代は色々と手を出していた城之内としては、
今更教科書で習うようなことではないらしい。

「え、今日の保健は何を勉強したの?」
「今日は、h」



「遊戯。」



得意げになって口を開いた城之内の邪魔をするのはやっぱりこの男だった。



「あれ、海馬君!」
「また海馬かよ!いいとこだったのになんの用だ!」
「貴様に用は無い。まあ貴様の無駄にでかい声のおかげで遊戯の居場所が解ったわけだが。」
「かぁーーー!!こいつ、マジでぶッッ飛ばす!」

怒る城之内を他所に、
階段を上がってきた海馬のところへ遊戯が駆け寄っていく。
「どうしたの?」
「モクバがお前と話したがっている。」
「モクバ君!?気が付いたんだ!」

ぱあっと顔を明るくしては、一度アテムを見た。
アテムも優しい顔をしていて、ぐっと嬉しくなる。
「おしゃべりしていいの?」
「ああ。」

海馬が手に持っていた携帯電話を差し出すと、遊戯はそれを慣れぬ様子で手にとって、
ぎこちなく話し始めた。
しかし海馬はそれを置いて去っていってしまうので、
遊戯は慌てて追って行った。


かくして遊戯は踊り場から姿を消した。


「なんだよアイツ、折角俺が遊戯の為に城之内先生をしようとしたのによ!」
「先生をされると困るんだが城之内君・・・。それにしても海馬の絶妙なタイミングは何なんだ・・・。」

何故だかグッタリしているアテムに疑問符が湧く。

「どうかしたのか?」
「・・・やはり話さないと駄目か・・・。」
「?」

何かを受信したかのようなアテムは一度深く息を吐いて、真面目な顔つきになった。
とはいえ、彼は元々表情に乏しいというか、遊戯が居ないと隙を見せないような人間だった。

「3人に頼みたいことがある。」
「頼み?」
「おう!いくらでも協力するぜ!」
「ったく城之内は調子がいいんだからよ・・・まあ俺も協力するけどな。」

人のいい3人に安堵しながら、
「まずは簡単な説明が必要だな。この間は本田君も居なかったからな。」
と、彼は言葉を始めた。


「相棒には1つ、重要な使命が与えられている。これは前城之内君たちには話したんだが、
それは今の学校での仕事以外にもう1つあるんだ。
だが、相棒はそれをするために多くのものを捨ててきた。1つが『普通の生活』だ。」
「普通の生活?」
「そうだ。相棒が学校に通うのはこれが初めてだ。俺も驚くほどなじんでいるようだが、
相棒が学校に行かなかったのには無論理由がある。」
「まあそうだよな・・・。」
「でも、なんで?」
「相棒に教えちゃいけないことがあるんだ。相棒が知ってはいけないことといえばいいか。」

それ以上を説明するのは苦痛だった。

アテムが遊戯の傍に居られるのは、ある意味その理由のおかげなのだが、
だからといって無理やり一緒に居るわけではないのだ。
アテムが好んで隣を選んだというのに、まるで仕方が無いかのように見えてしまう。


「そうだな・・・相棒は人間がどうやって産まれて来るのか知らない、とでも言えば良いのか。」


噴出しそうになった。
このご時勢、16の男子高校生がまさかそんなわけはない。
「まさか、あれか?コウノトリが〜ってやつ?」
囃す様な口調で問い直すのだが、
「そういえばそう信じるだろうな。」
と、アテムは表情1つ変えない。
男共2人は何時ものポーカーフェイスとしか思えなかった。
「アテムー、冗談はよせよ。」
「流石にそれはないぜ。」

しかし相変わらず、男共の反応にアテムは嫌な顔もしなかった。淡々と言葉を続ける。

「ああ。普通はな。普通はどこかでそれを知る機会がある。
だが相棒はそれを完全に妨げられてきたんだ。この16年間。」

流石に固まった。
冗談を言っていないことはなぜか解った。
彼の真面目そうな人柄によるのか、或いは、
遊戯がそうであっても可笑しくないような印象だからか。

「相棒は小学校を1年の5月に辞めている。それからは全て専属の家庭教師が教えてきた。」

6歳の頃、遊戯は自分が見ているもののうち、人が見ていないものがあることに気づかなかった。
傍から見れば宙に向かって話しかけている、怪しい少年だった。
子どもは純粋な分残酷だ。
1人が気味悪がればそれはあっという間にクラスに波及し、
遊戯の母親の元に苦情が舞い込んだことも少なくない。

母親は何度かそれを遊戯に伝えようと試みたが、
遊戯はそのことを理解こそしたが、それの何がいけないのか解らなかった。
だから何も変わらないままで、解決方法はただ学校を去ることの他は無かった。

あの力は4歳の頃に既に解っていて、遠い親戚たちがこの力を必要としていることも解っていたし、
母は祖父と相談した上でエジプトへと引っ越した。

遊戯はアテムや親戚と再会できたことを素直に喜んでくれたので、彼に関する問題は無いように見えた。
ただ簡単な話ではなかった。

親は彼が彼の使命を果たすことに反対はしなかったし、
彼自身も、彼にしか出来ない使命だと知ったら快く了承するような子どもであることは、
何となくだが解っていた。
だが、その使命の為に遊戯が社会性を失う可能性は多分にあった。

それでも了承した、そのときから、
遊戯はこうなることが決まっていた。


「でも何で?その使命と関係があるの?」
真面目に聞いてくれている杏子の疑問は、的確なものであった。
「ああ。相棒は体に霊を入れなければ仕事にならない。家の仕事も同じだ。
だが、そのためには相棒は無、いや子どもでなければいけなかった、といえば良いか。

無垢であること、それが相棒が使命を果たすための条件だ。
物事に対し柔軟でいなければならない。偏見や概念、観念で固められてはいけない。」


「つまり、保健の授業は無垢じゃないってことか?」
「自分が男だ、ということを強く認識されると困る。相棒が受け入れる霊は男だけではないからな。
俺は・・・この言い方は好きではないんだが・・・」

一言そう断る様子は、先とは違って何処か影があった。
それは彼が本当にそれを好んでいないことの現われだといえよう。

「相棒は、霊を入れるための“器”だ。
霊が体に入るとき、そこに何かがあると摩擦が生じる。
摩擦があると霊はいうことを聞かない、相棒自身もストレスが溜まり、疲弊する。」
「だから、無なのね・・・。」
「ああ。器は、空の方が良いのだと。」

杏子には解った。
それがつまり、遊戯の人格を否定することだと。
必要なのは遊戯の体であって、遊戯ではない。

「ただ、そうは言っても人格を奪い去ることが出来るほど悪魔ではない。
その為に相棒は特別な教育を受けてきたんだ。
あと数年すれば家の仕事は終わる。それまで現状を維持しないといけない。」
「それで私たちの協力が必要なのね!」
「ああ。」

物分りの良い人が居ると助かる。
一方、城之内はやはりいまいち理解していないようだった、だが、
「要は、遊戯に暖簾の先にあるようなビデオは見せちゃだめってことか?」
端的には解っているらしい。
杏子は呆れていたが、実際にそういうことだった。

「まぁそういうことだ。本屋でビニールがかかっているような雑誌も、タブロイド紙もだめだ。
スポーツ新聞の広告欄、ドラマも映画も、内容によってはマンガもだめだ。
相棒が目にしたり耳にしたりするものは、一度俺が確認しないといけないからな。」
「そんなに厳しいのかよ!?」
本田は驚いていたが、それも当然だ。
彼が禁止したものなど、多分教室の全ての机の中を漁れば、一冊二冊は出てくるだろう、
彼らはそんな年頃であった。

「まぁだからこそ俺らの協力が必要ってことか。」
「ああ。廊下にあんなものが落ちている学校だからな。俺と使い魔の目だけではどうにもならない。」
「うっしゃ、協力しようじゃねぇか。トモダチ、だしな。」
「すまない、助かる。」
「何かあったらアテムに見せれば良いの?私じゃ駄目なのかな?」
「俺でなくても構わないが、皆に責任を負わせるわけにはいかないからな。」

兎にも角にも、友人たちの協力が得られたことは大きな成果だった。
これで少しは安全性が高まるはずだ。

まるで友人たちを信用していないかのような内容に、躊躇うところが無いわけではなかったが、
アテムは断固としてそれを要求するつもりで、それによって友人に嫌われる覚悟だってあった。
だが友人に対してとった態度によって遊戯にまで嫌われるのだけは嫌だった。

遊戯という存在は、アテムにとって保護の対象とかそういうものでは片付けられないものになっていた。










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*保健の授業について参考意見を送って下さった方、
ありがとうございました!
この回ではあまり細かいことは出ていませんが、
体育とかまた保健とか出てくる予定であります。
保健の授業は男女一緒に、体育は・・・未定ですが、参考にさせていただきます!
ご協力に心から感謝申し上げます、ありがとうございました!

管理人:AL41