*長いです。
*恋人以下・・・?未満?
異教徒のお祭りの何が楽しいんだか。
あんなもん演出に誤魔化されて無駄金払う一部のミーハーが
経済活動に貢献するだけのはなしだ。
所詮は、所謂「負け組」の言い訳であった。
聖夜の一幕
今日は電気もつけていない。
寒くて起きる気がしない。
食事もしていない。
昨日のうちに食べるものを確保しておけばよかった。
お祭りムードの外へ出る気がしない。
敗者、バクラは布団の中でもぞもぞしていた。
携帯電話を充電しながら適当にニュースを確認する。
いい話題はない。
どのサイトもクリスマス一色で気に食わない。
接続を切って、増え始めたスパムメールの削除を始める。
バクラから人に連絡すること自体無いので、メールなど殆ど無い。
受信フォルダは大学からの連絡と、PCからの連絡と、
時折来る、高校時代の知人から。
題名を見ると、名前など見る必要は無く解る。
そうだ、何度も読み返したメールだ。
この冬、バクラは何処にも出かけていないが、
何も誘いが全くなかったわけではない。
高校時代仲の良かった知り合いから、忘年会を兼ねた同窓会の連絡があったのだ。
別に、彼らが嫌いなわけではない。
バクラにとってそれは珍しいことだったが、
今でも数少ない友人だと思えるものだった。
しかし、どうしても会いたくない人がいる。
会いたい気持ちが強すぎて、いざ顔を合わせたら自分が何をしでかすか解らないから、
会いたくない。
今、その人の記憶中で自分は普通のいい人として残されているのに、
気持ちの暴走でそれを壊したくない。
会いたくない、だが、会いたい。
バクラはまた、武藤遊戯から送られてきたメールを読み返していた。
都合が悪くて行けない、と偽った返信に、
都合が良いときに、2人ででもいいから、会えるといいね、と返事をくれた。
こんなものは社交辞令だと一蹴した。
遊戯がどれだけ優しいのかなど、誰よりも良く知っているはずなのに、
その優しさを信じることが出来ないほどバクラは猜疑的になっていた。
遊戯の声をもう9ヶ月近く聞いていない。
電話をかける勇気がない。
不釣合い、という単語が良く似合っている、
本当に不釣合いなのかどうかを考えたことは無く、バクラはそう思い込んでいる。
つりあわないと思いながら、それを断ち切れずに、
メールの文面の向こうに遊戯を想う。
「今、何してんだろうな。」
忘年会は一昨日終わった。
メールによると、遊戯の幼馴染がエジプトからやって来ているらしいし、
あの狐みたいな男が、今日という日に、造作も無く、幼馴染という立場を利用して、
バクラの欲した時間をあっさり奪ってしまったのではないか。
時計の針は夜の8時過ぎを指している。
多分、隣の部屋もその隣の部屋も、上の部屋も下の部屋も、
皆楽しく過ごしている時間。
冬の寒さを凌ぐようにくっついて温まっているのではないか。
それと同じように、遊戯もあの男と一緒に過ごしているかもしれない。
もし、2人が一緒にいる時に、
遊戯の携帯に他の男から電話があったら、どうなるのだろうか。
遊戯はなんとも思わないだろうし、相手の、多分アテムだが、あの男も何も思わないのだろう。
ただ自分だけがそれを知って絶望するだけだ。
そこへバクラは、あえて電話をかけた。
うじうじとしている自分が嫌だった。
こんなにうじうじしているのなら、たとえ遊戯が1人でも自分を想うことはないだろう。
終わるのなら終われば良い。
3コ−ル経っても電話はでない。
異教徒の祭なんか関係ない。
丁度思い出したからであって他意はない。
クリスマスだから電話をしたのではない。
その間、必死に言い訳を考えていた。
電話の先の遊戯のとなりにアテムが居たら、だ。
大丈夫だとは思うが、アテムが何かしら誤解をして、
自分に被害があるのならそれでいい、だが、遊戯が責められるのは嫌だ。
建前、というわけではないが、
結果論といえばいいのだろうか、言い訳を考える間に、冷静になったのは自分だった。
結局バクラは情け無いままだ、自分が遊戯に電話をする言い訳がほしかった。
10コール目。
プツリと音がして、高い声が聞こえた。
『バクラ君っ!?』
裏返っていた。
「あ・・・」
言い訳を考える前に、話す内容を考えておくべきだった。
「悪ぃ、忙しかった・・・か・・・?」
『んー、そんなことはないよ。昨日で1段落ってかんじかな。』
「昨日?」
『一応オモチャ屋さんだからね。じーちゃん1人じゃ不安でさ。それにしてもどうしたの?』
「あ、いや、丁度思い出したんで。」
言い訳に頼る。考えておいてよかったか?
『バクラ君の声聞くの久し振りだね』
「そうだな。」
『元気?』
「まぁな。寒くて布団に包まってるが。」
『本当に雪が降りそうなくらい寒いね。ボクも布団に潜ってデッキ組んでた。』
「お互い様だな。」
『そう?ボクはバクラ君はすっかり予定があるものばかり思ってたよ。』
「そいつはこっちのセリフだぜ。すっかりクリスマスしてるかと思った。」
『そんなことないよー。』
電話の向こうはクスクス笑っているが、
バクラは冷や汗をかいていた。
『皆色々あるみたいだし。』
「けどよ、アテム来てんだろ?」
いいたくない名前だったが、ハンパな気持ちを終わらせるために電話したのだ。
覚悟はしていた。
遊戯はそんなことには気づかずに居てくれたが。
『日本には来てるよ。何か気を遣ってくれたけど、ボクがアテムの邪魔をするのは悪いし、
お店のほうも気になってたからね。』
相変わらず気づいていない遊戯は、アテムの下心を
アテムへの思いやりと店の都合の為に一蹴したらしい。
遊戯に限ってそんなことが起こるとは。
「ほんっとに意外だな。何だ、暇してんのか。」
『うん。全然意外じゃないけどね。』
クリスマス、
多分、隣の部屋、上の部屋も下の部屋も、皆楽しく過ごしている時間。
高校の頃から2人で過ごしたいと思っていたこの時間を
遊戯がそれを持て余しているというのに、
絶好の機会だというのに、
黙って過ごせたというのだろうか。
「なぁ。本当に暇なんだな。」
『暇だよ。』
じゃあ。
「これからそっち行くわ。」
遊戯が返事をするより早く布団から出る。
『ちょっと、え?ほんとに?電車あるの?』
「無かったら電話する。」
身だしなみなどどうでも良い。とりあえず適当に着替える。
『寒いよ?』
「冬なんだから当然だろ。・・・いっちゃまずいのか?」
『そんなこと無いよ!』
テレビを消して、財布の中身確認して上着のポケットにしまう。
『遠いよね?』
「遠く無ぇよ。11時過ぎにはつく。」
『11時過ぎ!?』
遠いのかも知れない。
だが物理的な距離など、精神的な距離に比べれば金と時間さえあればなんとかなるのだ。
じゃあ精神的な距離はどうすれば解決できるのか。
解決できるのは心でしかない。
遠いから会えない、仕方が無い?
そんなのは解決する気力の無いやつがいうことだ。
そんなんでは何時までたっても心は離れたままだ。
たとえどんなに離れていても、会おうとする心があれば、
この気持ちが伝わるのではないのか?
バクラには洒落た言葉も無い、気の利いた行動をとる度胸も無い、
地位も金も、これと言った共通点も無い。
それで諦めようと思っていたのだ、ついさっきまで。
だがそれではだめだと気づいてしまった。
もし、誰よりも遊戯を想う気持ちが強いと豪語するのであれば、
そんなステータスで自分の負けを認めてはいけない。
この距離をひっくり返すだけの気持ちがあることを伝えたい。
バカみたいに必死になって、それで駄目だったら、本当に諦められる。
窓の鍵やコンロも一応確認して、
「童実野町ついたらまた電話すっから。寝るなよ。」
それだけ言って切った。
鍵をして、走り出す。
エレベーターの中で、電車を確かめた。
まだ席は残っている。
その場で予約をして、兎に角先を急いだ。
すれ違う人人が、腕を組んでいようがそうじゃなかろうが気にならない。
世界で今一番自分が幸せだと知っている。
童実野についたのは、11時10分。
9ヶ月前に昇ったホームの階段を降りながら、
遊戯の携帯に電話をかける。
また、すぐには出なかった。
「(寝ちまったか・・・??)」
待ち呆けて寝てしまっている様子を想像すると笑いそうになった。
しかしプツリと繋がった瞬間に、
階段を降り切る前のバクラは、
改札の向こうに懐かしい姿を見た。
電話は無言で切って、
苦笑しながら改札を出る。
「来たのかよ。」
「どうして待ってられると思う?」
出発した時とは非にならないほど寒かった。
何時からいたのか知らないが、遊戯は鼻を赤くして立っていた。
マフラーもしていない。
「おまえ寒くねぇの?」
「寒いよ。でも、キミはもっと寒そうだよ。」
「寒くねぇよ。ま、さっさとお前んち行こうぜ。」
「うん!」
人は疎らに歩いていたが、
商店街のシャッターが下りているのをみると、閑散としているといえそうだ。
2人は懐かしい道を行った。
「変わってねぇな。」
「1年も経ってないんだよね。」
「もう5年くらい過ぎた気分だ。」
もう二度と会わないと思っていたのに、
臆病な決意は逃げ出して、自分からノコノコと遊戯の間合いへ突っ込んだ。
飛び出したときにはあんなに必死だったのに、
会いに来た理由がわからなくなっていた。
会ってどうする?
気持ちを伝える度胸などないのに。
この距離を越えてやってきた、それだけの行動で遊戯に気持ちが伝わるものか。
「皆何してるんだろうね。」
「さぁな。楽しんでるやつと仕事してるやつと、暇してるやつがいるんじゃねぇの?」
「そうだけど。でも、本当にキミが暇してるのが不思議。
まぁ『異教徒の祭だろ?』とか言って、素直に楽しんでないとは思ってたけど。」
図星も甚だしい。
「何で知ってんだよ・・・。」
「去年も言ってたよ。」
「でも、まぁ事実じゃねぇか。
クリスマスなんてよ、結局は消費目的で使われてるんだぜ?」
「ボクは好きだよ。雰囲気とか。」
ものにはガラというものがある。
遊戯がクリスマスを喜んでいても絵になるが、
自分のガラではない。
「俺はどうにも好きに慣れねぇな。お前は純粋すぎんだよ。」
「そんなこと無いよ。クリスマスは良いこともあるよ。
だってさ、丁度良い口実になるでしょ?
キミは口実がないと電話もしてくれないんだから。」
「ッ・・・!?クリスマスだからって電話したわけじゃないぜ。」
「解ってるよ。けど。
会いに来てくれたのはクリスマスだからでしょ?」
バクラがこの時間を欲しがっていたから、絶好の機会などといって此処まで来た。
これが普通の日だったら?
多分、『じゃあ今度』で終わってしまっただろうことを、
遊戯は感じていた。
「そーかもな。見たい特番があるわけじゃねぇし。」
「ボクはツイてるね。」
「?」
「まあいいじゃん。キミご飯は?」
「あ、」
「コンビニ寄ってく?お菓子も買ってこうよ。」
遊戯はバクラの腕を掴んで、方向変換し、コンビニへ向かう。
その、腕を掴む小さな手が懐かしくて、
バクラは思わず、ポケットに突っ込んだままだった手で、
その手を取ってコートのポケットへ共に突っ込む。
「バクラ君!?」
驚かれてから言い訳を考えるのは悪い癖だ。
「相変わらずお前の手は温けぇな。」
「バクラ君は冷たいね・・・。寒いんなら手袋すればいいのに。」
悪態をつきながら、遊戯はバクラの手を暖めようとそっと握った。
バクラは便乗するように握り返した。
最初にそうしたのは遊戯なのに、男の反応に驚いて、見上げてくるのだが、
目を合わせることは出来るわけがない。
遊戯はそれに言及こそせず、クスクス笑ったあとで、
「なんだか恋人みたいだ。」
悪意なく呟く。
それこそ指の先まで固まってしまいそうだった。
クリスマスという時間を、遊戯と、恋人として過ごしたいと思い続けてきた。
否定してきたのは、それだけが理由だ。
どんなにサンタクロースに願っても、遊戯と、遊戯の時間は手に入らなかった。
誰よりも強く想っている自信があるのに、
それを言葉に形に出来なかったから、手に入らなかった。
だが今日は違う、想い1つだけでここまでやってくるだけの行動を見せた。
だからもし、今日という日が、商業的ではない意味を持つのなら、
1日でもいい。
「負け組同士、そういうことにしておこうぜ。」
何時もの冗談口調で告げた、彼なりの勇気に、
遊戯は、ふふっと笑ってから
「いいよ。」
と、強く握り返した。
遊戯の変わらぬ反応に、なんだか安堵してしまった。
「調子のいいやつ。」
手のひらはじんわりと汗をかき始める。
本当は凍えていた体は熱を帯び始める。
懐かしい感覚に、笑い出しそうだ。
「・・・バクラ君。」
「おう?」
「・・・いいや、後で家で話すよ。」
「ああ。」
自分の緊張の為に、遊戯の変化に気づかなかった。
少し上ずった声で遊戯は呟いた。
「このまま、雪が降っちゃえば良いのに。」
「ん?」
バクラの返事に、遊戯は反応を示さなかった。
ただ、コチラを見上げて、ふっと笑う。
「早くいこう!」
ポケットからさっと手を抜いて、先へ駆け出す。
突然失った温もりに激しい寂しさを覚えて、
ガラにもなくそれを追い、駆けた。
一度振り返った遊戯の顔に、
最高の1日になると、
何となく確信した。
聖夜の一幕。
-------------------------
リクエスト、ありがとうございました!
アテムの出番が微妙になってしまった(寧ろ出ていない)のですが;
遠距離とのことだったのですが、電話では我慢ができなかったらしく、
無茶しやがって、という感じに;
この後の2人は、ご想像におまかせします。
受け取っていただければ幸いです。
(H2A)AL41
----以下、適当すぎる後書き-------------------------------
なんだか調子よく書いていたら長くなってしまって、ザクザクっとカットしました;
白めなバク表を書くと、すぐに表が強くなるんですよね・・・
海表でもまあそうなんですが、
バク表は最終的にバクラが負けるというか、遊戯が汲み取ってくれちゃうので、
駄目な子になりがちw
バクラも彼なりに頑張っているようですがw
ちなみに。
名古屋から東京くらいなら9時に乗れれば、11時辺りには何とかいけるようです。
料金は1万5千円くらいだったかな?
童実野町ってどこにあるんだ・・?
(08.12.24)AL41