*リクエスト作品について

・主にキリバンを踏まれた方のリクエストに応じて書きます。
・リクエストされた方のみ転載可能です。
・その際、リンクは不要ですが、サイト名(H2A)と作者名(AL41 或いは 41)とだけはお添え下さい。
・一応、それなりに努力はしているので、改変・改編はお控えください。

※背景は素材サイト様からお借りしております。
二次配布は好ましくございません!一応。なので、
転載の際は、下記にリンクが張ってありますので、当サイトから保存ではなく、
素材サイト様へ足を運んでいただき、利用規則をお読みのうえ、ダウンロードをお願いします。
同人サイトは一応おkみたいですので。


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ちなみに、
ニョタです
*またボクっ子です・・・
(えー?と思われたらご連絡ください、変えますので。)

点線の下よりどうぞ。

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無期限



寂しそうな瞳。

それだけが記憶になった。
他のものは全て、あれから起こった惨事の為に、
バラバラに砕け散ってしまって、
名前さえおぼろげになっている。
全ては色あせて焼けてしまい、色など無い。

それでもあの瞳の鮮明な記憶だけが、彼を救った。





日本へ戻ってきたアテムは、おぼろげな記憶を頼り、
嘗て住んでいた地に住むことを決め、
転入手続きをしに童実野高校に赴いていた。

無気力だった。

まだ住む場所さえ決めていない。
それだというのに、何故学校なんか決めているんだろう。

自分の行動の理由さえわからないまま、
アテムはまめまめしく校舎の説明をする教師の後をついていった。

学校は春休みといえ、
部活をしている生徒は少なくない。
割と賑わっていたが、アテムは自分がそこへ身を置くことなど考えてなかったし、
ただ高校を出るということが必要だった。

時間が欲しかっただけだ。
議員だった父が凶弾に倒れ、身を置く場所が欲しかった。
だが、居場所はなく、
色々な思いや意志が錯綜して、心がそがれていく。
故郷に住んでいることがつらくて日本へのそのそ戻ってきたまでだ。
逃げといっても過言ではなかった。

「どうかしましたか?」

上の空になっていたアテムに教師はそう気遣い、
大丈夫です、とだけ告げる。笑顔を作ることさえ出来なかった。

「色々心配事もあるでしょうが、色々な生徒がいますからね。
学園生活は問題ないと思いますよ?」
「そうですか、ありがとうございます。」

覇気の無い若者だが、アテムが優秀な人間だということは、
向こうから来た成績を見れば一目瞭然だった。
優秀な生徒がやってきてくれるのはありがたい。

なんせ問題児ばかりの学校だったのだ。
現に今も、教室では落第点を取った生徒が課題をしているところで、

「先生ーーーーーーーーーー!!!」

バタバタと背後から廊下を走ってくる。

「こら、武藤、生憎今は取り込み中だ、見れば解るだろう?」

教師の声は叱っているようでなにやら楽しそうで、
学園生活の生き生きとした一端に立会い、アテムは思わず振り向いた。



瞳。



わかった。

あれだけおぼろげだったというのに、
あの瞳を見た一瞬で失われていた色が蘇ってゆく。

寂しそうな瞳。

あれは、別れの時だった。
自分は何かを告げて、向こうも何かを返して、
指切りをして、
車にのり後部座席から覗き込んだ時だった。
ずっと笑おうと必死だったのは子どもでもわかった程だ、
笑顔を作る一方で、瞳だけには物悲しさの色が移り、
手を伸ばした彼女に何も出来ない自分を、あの瞳は捕らえていた。


アテムが振り返ったとき、
武藤と呼ばれた生徒は、ふと立ち止まった。

「まったく、お前は廊下は走るなと言っているだろ・・・ってどうした?」

教師の言葉など届いていない、寧ろ目に映っていないかもしれなかった。

持っていたプリントをひらりと落として、言葉が漏れる。

「アテム?」

教師は驚きアテムを見るが、アテムもまた固まっていて、
教師は完全にその世界から隔離されていた。

「ゆうぎ・・・?」

一歩一歩遊戯はそうっとアテムに近づく。
そのたびに、より記憶が甦る。

あの頃、彼女をなんと呼んでいたのか、
そんなことさっぱり忘れていたのに、口をつくと出た。

「相棒。」

その言葉が届くと、遊戯が表情をぱあっと明るくして、

「もう1人のボク!」

と叫びながらアテムの腕に飛び込んだ。
アテムもその体をしっかり受け止めてくれた。

「生きてた!!」
「殺すな。」
「だって、全然連絡くれないんだもん!!」

腕の中から見上げてくる瞳を見て、
伝わる温かさを腕に感じて、酷く安心した。

すっかりなじんでいる2人の世界に、教師は漸く介入が許された。

「なんだ、知り合い?」
「昔お隣さんだったの!」
「そういえば、前は日本に住んでたって・・・その時か。」
「ボクが小学生に入る前にアテムはエジプトに帰っちゃったんだ。」

武藤遊戯という生徒は、頭こそよろしく無いが、愛嬌と性格で憎めない存在だった。
色々周りは厄介なことになっているが、
彼女はさっぱりそんなものを気にせず、
天然というのかわからないが・・・。

「でも本当に良かった、色々あったってことは、じいちゃんから聞いてて・・・。」
「ああ。本当なら連絡すればよかったんだが・・・。相棒のじいさんもママさんも、元気にしてるか?」
「じいちゃんピンピンだよ。ママも元気。パパは相変わらず帰ってこないけどね。」

彼女が幸せそうにしているのは、家庭が円満だからだろう

そう思うとまた安心する。

「キミはうちの学校に入ってくるの!?」
「ああ。」
「じゃあ、同じクラスになれるかな?」
「なれるといいな。」

天真爛漫な遊戯に振り回されるのはアテムだけでなく、教師も然りで、
教師は結局彼女のクラスへアテムを入れることにした。

「先生、アテムの手続きとかは終わったの?」
「ああ。今は校舎の説明をしてたんだよ、ったくお前は俺が仕事をしているのがわからないか?」
「校舎の案内はまたボクがするよ!」
「それは助かるな。彼にとってもそれの方が気が楽だろうし。」
「アテムはもう帰れるの?」
「ああ、って人の話をk」
「じゃあ、ボクも帰る!」
「え?、お前、」
「アテム待ってて!ボク鞄とって来る!」
「あ、ああ。」
「って、お前課題は!?」
「それ、そこにあるやつ、拾って!」

嵐のようだ。

困惑する教師を置いて
遊戯は階段を駆け上って行ってしまった。

「まぁ、あれがいいのかもしれないがなぁ・・・。」

そうため息交じりに呟いて、プリントを拾う。
出来は、そこそこだった。
苦手だった割にはがんばったというべきかも知れない。

「彼女は昔からああなのかい?」
「ええ。」
「そいつは、仕方が無いな。」

苦笑して、
アテムに今後のことを確認する。


暫くすると、再び嵐は舞い戻り、
アテムは巻き込まれながら学校を出た。

2人で歩くのはもう、何年ぶりだろう。
10年以上も経つだろうか、
懐かしいようで、なぜかずっとこう歩いてきたかのような感覚があった。

それは遊戯の反応が改まっていないからか、
昔と変わっていないからだろうか。

それが酷く嬉しかった。

話題は尽きない。
遊戯が話を良くふってくれて、お陰で余り自分のことは話さないで済んだ。
さっきの話から考えれば、アテムの身辺事情を聞かないよう気を遣っているようにも受け取れた。

「じいちゃんさ、ゲーム屋始めたの。」
「そんなにか。店は?」
「一軒屋たててさ、1階がお店。2階からが自宅なんだ。
そうそう、アテムは何処に住んでるの?」
「数日前に来たばっかりで、まだ決めてない。今はホテル暮らしだ。」
「そうなんだ。じゃあ、うちに来なよ!」
「え?」
「パパの部屋空いてるからさ、ほら、家賃とか大変じゃん?」

うち寄ってってよ!

彼女はそう言って、手を差し伸べる。

それは振り回されているように見えたが、
だが、心の収集がついていなかったアテムには大事な道先案内人だった。
助かったし、嬉しかった。
彼女が居るだけで不安の半分は消え去ってしまう。

アテムは迷わずその手を取った。

それは寂しい目をさせたかったからじゃない。
彼が、その手を取りたいと思ったからだった。








春、新学期を迎えた。

結局あの後武藤家に勧誘されるがまま、アテムは下宿することになった。
正確に言えば、居候なのだが、
遊戯の母親が「家賃は遊戯の家庭教師代で払ってね」と言ったものだから、
下宿になるらしい。

高校に入っても大して友人など作る気はなかったのに、
気づけば遊戯の友人たちと友人になっていた。

思ったより順調な新しい生活に、アテムの心は平穏を感じていた。
あの時失った記憶も次第に鮮明に甦ってきて、
その話をふるたびに、遊戯はにこにこ笑いながら応じてくれる。


だが、
嵐の近辺では、そんな生活が長く続くワケも無いのだろうか。

アテムが遊戯と毎朝一緒に登校してくるということが知れるのは時間の問題で、
更に「一緒に住んでいる」という現実が明らかになると、
周囲はざわついた。

アテムには武藤家と家族ぐるみで仲良くしていた過去があり、
これといって何も特別なことではなかったらしいが、
相手が遊戯だったのがいけないらしい。

意外、というワケでも無いが、
遊戯は「クラスのアイドル!」というほどで無いにしても、
そこそこ人気があるらしい。
誰にでも優しい性格は以前と微塵も変わっていないらしく、
その優しさを勘違いしている輩が多いのだと、遊戯の友人は語った。

再会した時は、変わっていないと感じたのに、
色々変わってしまっていることが、何となく知れてきて、ふと寂しくなったが、
変わったのは遊戯よりも周囲だったらしく、
不思議なことに、
中学高校と一緒に居たという友人よりも、数年、それも幼少時代に一緒だっただけのアテムの方が、
遊戯の性格を解っていて、
更に遊戯もそのアテムをとても信頼していた。


アテムにとってそれは凄くうれしいことのはずだったのに、


「てめぇ、新参の癖に、遊戯に馴れ馴れしくすんなよ!」


絡まれた。

教師に呼び出された帰り、突然図体のでかい男、多分上級生に囲まれて、
リンチ寸前だった。

だが、ヘコヘコする気など無い。

「あんたら誰だ?」

自分が遊戯と親しくするには充分の理由があって、
誰であれその理由を奪いさえることは出来ないのだから。

「てめぇには関係ねぇんだよ!!!」

男の拳は、アテムの顔のすぐ横の壁を殴りつける。

「しらけた顔しやがって、気にくわねぇなぁ。」
「幼馴染だかなんだか知らねぇけどよ、そんなもん関係ねぇんだよ。」

「遊戯と俺がどういう関係だろうが、関係ないだろう?」

さっさと去りたかった。
教室には遊戯が待っているのだ。
だが、この強欲な男共は聞く耳など持っておらず。

「関係ねぇんなら、二度と俺たちの遊戯に近づくな。」

流石に頭にきた。

「“てめぇら”の遊戯?ハッ!寝言は寝てるときに言うんだな。
遊戯は俺の相棒だ。何があってもな。」

殴り合って勝てないことなど目に見えているのだが、
それでも許せなかった。
何故か。
自分に下心があるのはわかっている。
そして、遊戯が自分をどう思っているのかは解らない。
つまり、この頭の悪い男共といっていることは同じなのだ。

だが、だからといって譲れない。

「貴様ッ!」

胸倉をつかまれて、ギリリと睨まれたが、怯むつもりは無い、睨み返すと、
ドンっと壁に叩きつけられた。
背中に痛みはあった。
だが、そんなもので折れてたまるか。

男がつぎ、アテムを殴りつければこの静寂は破られただろう。
だが、
破られる前にお開きになった。

「アテム!!」

帰りの遅いアテムを案じた遊戯が慌てて駆け寄ってきたのだ。
「相棒・・・!」
どう見ても劣勢のアテムに遊戯は不安げな顔を見せ、
庇いに入った。

男も流石に手を離して、遊戯にへつらう。
だが、
遊戯は珍しくお怒りで、
きいっと可愛い瞳でにらみつけた。
「どうしてそうやってすぐに暴力するの?ボク解んない!」
そう、ぷいっとそっぽを向いて、「知らない」と一言。

それは色々な面で恐ろしい破壊力を秘めていた。

攻撃を受けた絡んできた男たちは気まずそうにソワソワして、
逃げるように去っていった。

結局廊下には2人だけになって、やっと静かになる。

「大丈夫?もう1人のボク・・・。」
「ああ。相棒が間に入ってくれたからな。迷惑をかけたな、すまない。」
「気にしないでよ。偶にいるんだ、ああやって誰彼文句をつけて、暴力をふるう人がさ。」
文句をつけるというか、
まぁ、粛清だったのだろうが、遊戯は知らないのだろう。
「俺はあんなのに屈しないぜ?」
「もう、絶対無理はしないでね?」
「ああ。」
そう本当に思ったというのに、遊戯は訝しげで、
可笑しくなってしまう。
「ほんとに?」
「ああ。」
「じゃあ。」
そう、遊戯は小指を差し出した。

何故だろう、
もう17だというのに、
思わず此方も指を出して、指切りなんかしてしまう。
だが、流石に遊戯もはっとしたらしく、
ぽっと頬を赤く染めたのは、窓から入る赤い夕日の中でも解った。
「相棒といると、子どものころに戻った気がする。」
教室へ戻りながら、思わず指切りをした自分に言い訳をするようにそう告げると、
遊戯もクスリと笑って、応じてくれた。
「昔はよくしたよね。」

「あの時も、そうだったな。」

たったそれだけの言葉なのに、
遊戯も何のことか解ったらしく、
足が止まる。
アテムは意識して言ったわけでも無いのだが、反対に意識させられて、
遊戯を見たまま固まってしまった。

「あ、あー、あれは・・・。」

子どもなんて、何も考えずに言うのだ。
だから、言葉にも指きりにも深い意味なんか無いというのに。

「・・・キミも覚えてたんだ。」
「だって、指切りしただろ?」
「う、うん。」

嘘付いたら?
嘘になってしまったら?
針を飲ませようなどとは思わないのだが。

嘘になってしまうのは、寂しい気がした。

「あ、あのさ・・・ううん、べ、別に何でもないよ。」

遊戯が何を言いたいのかは解らなかったが、
同じ気持ちであれば嬉しかった。

「相棒。」
「何?」

「俺は、指きり守るからな。いつまででも。」

昔の言葉も合わせて、その言葉の意味を悟って、
遊戯はまた顔を、さっきよりもずっと赤く染めて、
こくりと頷いてくれた。

手を差し出せばそれを取って、
子どもの時の様に手をつないで教室へと歩み始めた。

「あのさ、」
「何だ?」

「ボクは、待つよ、いつまでも。キミが迎えに来てくれることを。」

きゅうっと握る力が強くなって、
顔は見えなかったが、どんな顔をしているのかはわかってしまって、
思わずアテムまで恥ずかしくなった。
だが、嘘などついていない。

「俺は、待たせない。」

手を握り返して答えれば、
遊戯は恥ずかしがりながら笑ってくれた。

あの頃と、何も変わっていない。

友人の待つ教室へ入る一歩手前まで、
その手は強く握られたままだった。







(08.03.26)AL41

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背景素材:LOVE FLIES xxx
※転載の際は上記の注意をお読みください!
等価の〜も青空背景だったんですが、この2人が一番青空が似合う気がしたんです。あとは城之内とか。


4114Hit、有難うございました!


2人が別れ際になんと言ったのかはご想像におまかせしますが、
答え言ってるようなもんだな・・・。

久しぶりに幸せそうな2人を書いたかもしれない気がします。

リクエスト有難うございました!