*題名で読める駄文
*ボクっ子遊戯
*微妙に下ネタアリ
(バクラの下ネタ率が高い気がするのは、気のせいだと信じています。)
*健全な高校生なのでお許しください
「動かないで!!!」
バクラは固まったまま、
いや、
いずれにせよ固まるほか無かった。
春、です
2年になって、
クラスの連中の顔ぶれも変わる。
相変わらず顔を合わせたくないヤツと一緒になったりするが、
それでも1つイイコトはあった。
武藤遊戯と同じクラスになったということだ。
噂には聞いていたし、
その姿を見たことが無かったわけじゃない。
だからこそ、同じクラスになれたのが特別だった。
と、いうのも。
武藤遊戯という女子生徒は、不思議な人気があるのだ。
不思議な人気というと、神秘的な感じがするが、そうではなく、
クラスのアイドルではないのに、
人気があるのだ。
いや、この説明は少々不親切か。
アイドル的存在は別に存在している。
その人にはあからさまな担ぎ手が居り、なんと言えばいいか、
「この人はクラスのアイドルに決まっているし、そうであるべき!」と
言わんばかりの扱いをされている。
本人は気を良くしていないが、
酷い目にあうわけでもなく、仕方が無いという状態である。
それと遊戯は異なる。
遊戯はアイドルというガラではない。
だから、大声で「遊戯が好きだ!」と言うものも居ないが人気はある。
いうなれば、
前者が「テレビのアイドル」のように手に届かない一方で、
遊戯は近所の可愛らしい同級生というようなものだ、
頑張れば手に入る可能性を秘めている。
つまりは、虎視眈々と彼女を狙っているものが数名居るのだ。
それは表ざたにはならないような情報の筋で流れてきた。
それでバクラもどんなものかと気になっていたのだ。
だが、彼女に近づく術は無く、姿を見るに留まっていた。
それは予想とは反していた。
まず小さい。子どもみたいだ。
確かに可愛いが、
色気なんてものとは程遠い様子で、女らしいというのだろうか?
一体、彼女の何がそんなに魅力的なのか。
そんな疑問が湧いたのだが、
それは初めて会った時に一層深くなった。
バクラが最初に遊戯に会ったのは、人伝というか、
人、まぁ苦手な親類なのだが、
それと居た時に遊戯がそれに声をかけたのだ。
「あ、獏良君!!おはよう!」
「おはよう。」
ふと、バクラの存在に気づき、面識など無いのに、
バクラにもおはようと告げるのだ。
驚いて固まったバクラを見事にスルーして、
「先生見た?」
「ううん。でも、どうしたの?」
「ちょっとね、図書室の仕事を頼まれたんだけどさ、
良くわからないんだ。」
「そっかー。僕は解らないや。ごめんね。」
「ボクもごめんねー。そう、そういえばさ、この間の発表聞いた?」
「死者蘇生が制限復帰だってね。」
「そう!凄いよね!」
カードの話で盛り上がり、結局図書館のことはどうしたのだろう。
見た目はやっぱり可愛いのだが、
女らしさなど見つからずに、
バクラは彼女のことが何故か気にかかりつつも、
これといって欲しいとは思わなかったのだ。
そんな気持ちのまま、2年になり、
武藤遊戯と同じクラスになった。
席もそこそこ近く、やっぱりあの親戚を介し、
遊戯とも多少言葉を交わすようになった。
だが、結局イメージは変わらなかった。
お陰で変な争いに巻き込まれないで済むと思うと安心してしまう。
ただ、何故同じクラスになったことをイイコトだと感じたのか、
さっぱり解らなかった。
そうこう2ヶ月弱が経った。
クラスにもだいぶなじみ、初夏が近づいてきて、
中間テストがある。
家に帰って真面目に勉強するタイプの人間ではないバクラは、
相変わらず屋上で昼寝をした後、
ノソノソとがら空きの放課後の校舎内へと戻ってくる。
何だかよく寝たし、家帰ってゲームでもすっか、と、
教室へ戻る間の話。
上の階段から、何かが降ってきた。
遊戯だ。
どうやら階段の途中で1人勝手にこけたらしく、
だが、バクラの目の前に無事に着地したように思えた、しかし
一瞬バランスを崩して、
バクラは思わずそれを助けようと手を伸ばし、
遊戯が思わずバクラのシャツを掴んだのだ。
すると、
プツンと何かが取れて、
カランコロンと、音がした。
ちなみに遊戯も尻餅をついて転がって、
バクラは膝立ちになっていたのだが。
「大丈夫かよ・・。」
「てて・・・うー、ゴメンねー・・・。」
尻をさすりながら、遊戯は照れくさそうに、しかし申し訳なさそうにそういうのだ。
「別に俺は大丈夫だけど・・・。」
あんな場所から降ってきたのだ。
かなりの衝撃だっただろう。
「へーきへーき!ボク慣れてるし。」
そう、笑ってみせる。
元が良いだけに、笑うとより可愛らしくて、
ちょっとドキリとしてしまった。
「あー、まぁ、大丈夫ならいいけどよ。」
大丈夫だよ!と遊戯はすくっと立ち上がり、スカートをはたく。
スカート丈はそう短いわけでもなく、
普通というか、健康的というか。
まぁ、彼女の身長で短くすると、相当短くなりそうだが。
そんなことを考えているバクラに遊戯は笑いかけるが、ふと、気づいたのだ。
「あれ、バクラ君、ボタン・・・。あ!」
遊戯が思わずバクラのシャツをつかんでしまったために、
バクラのシャツのボタンが取れてしまったのだ。
「ごめんね!!!」
コロコロとよく表情が変わるものだ。
バクラはそんなことを呆然と考えていたが、
遊戯は「そこで待ってて!!!」と言いつけて、ぱーっと教室へ走っていく。
数秒後戻ってきたと思うと、その手には鞄があって、
「この間、ボクもボタンがとれててね?でも服装のチェックとかいうんで、
慌ててつけたから、まだ入れっぱなしだったんだ。」
と、
取り出したるはコンパクトなソーイングセット。
「?」
遊戯の行動が読めなかったのだが、
漸く気づいた。
「え、あ、こんくらい自分で・・・!!」
「でも、結構付け忘れちゃうじゃん。いいよ、ボクがとっちゃったんだし。」
問答無用だ。
別に男だ。
上着の1つを脱いだって気にならないのだが、
現在バクラの腹には、
数日前にちょっとやらかしてしまった喧嘩の名残があり、
少々生々しい状態になっているのだ。
「だ、大丈夫だから!!!」
遊戯が喧嘩嫌いの心配性であることくらい知っている。
この傷を見たらなんと言うだろう。
こんな怪我をするようなヤツは、嫌だろうなと、そう思ってしまうのだ。
何故だろう。
別に遊戯にこれといって好意などなかったのに。
「でも・・・。」
断ろうとすると、しょげる。
それは捨てられているダンボールの中の仔犬に似ている。
「(こんな近くでそんな顔すんなよ・・・!!!)あー・・・わかったよ・・・。簡単でいいから・・・。」
「うん!」
「でも、ちょっと、脱げねぇんだけど・・・。」
「大丈夫。気をつけるよ!」
恐らく気をつけるのは、バクラの体に針を刺さないようにということなのだろうが、
自分の着ているシャツのボタンをつけるというのは、
想像していただければ早いが、
非常に近い距離なのだ。
その上、バクラはすることが無いので、
遊戯を観察してみる。
思ったよりも指先は器用そうで、
慣れているのだろう、丁寧にしかし割りと手際よくボタンをつけている。
座る足は崩していて、太股が見える。
細く、白い。
シャンプーだろうか、甘い香りがする。
喋っている時は何も思わないのに、
こうしていると、何時もと違う面が見えてくるのか。
あの時の、あの、遊戯が何故好かれるのかについての疑問が、
解決していくようだ。
恐らく彼女の外見と、それに沿った性格と、
普段は女らしさなど見えないのに、
ふとした瞬間に見せる所作の可愛らしさと。
何よりこう、健気なのは割と好みだった。
ボタンくらい自分でつけられる。
だが、つけてもらうのとはまたちょっと違う。
思えば、遊戯が意識せずとも自分を認識してくれていたのが、嬉しかったし、
こう差別無く扱ってくれるのも嬉しくて。
ついでにさっきの着地した時、息が触れそうなほどに近づいた時に見た、
瞳の色、
顔のつくり。
全然意識などしていなかったが、
思ったよりも好みじゃないか?
そう意識してしまったが最後。
武藤遊戯という存在は、
謎めいた生命体から、1人の女子としてバクラのうちに姿を現す。
あの彼女が、いま、自分のシャツにボタンをつけていて、
温もりが伝わりそうなほどの至近距離にいる。
意識すればするほど体が熱くなる。
早く終われ、離れてくれ!
そう願って手元に目を向けると、
遊戯の胸元が目に映る。
思ったよりも、子どもではない影に、
ドキリとして、思わず顔を逸らそうと僅かに動くと
「動かないで!!!」
ささっちゃうよ、
と怒られた。
こういうのを何というのだろうか。
生殺しか?
本当は短い時間だったのだろう。
だが、それは本当に長く感じられて、
そして、それからずっとそれよりも何倍も何百倍も何千倍もの長い時間を支配する。
「終わったよ。ごめんね?」
「いや、気にすんな・・・。」
こんなに近くで、笑っている。
「(マジで可愛いわ・・・。)」
敵は多いらしいが、
それでも欲しいと思ってしまった。
「あ、」
「ん?」
「いや、あ、ありがとな。」
「お礼をいうのはこっちの方だよ。バクラ君。」
遊戯を捕らえたい衝動。
それを許さない理性。
生憎理性が勝ってしまった。
「それじゃあ、ボク、帰んなきゃ。」
そう、礼と謝罪を改めて述べてから、
遊戯は軽い足取りで去って行った。
胸が、熱い。
いや、身体が熱い。
ジワリと汗をかく。
「夏か・・・?」
いいえ、
春、です。
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後書きとか、無い
(08.04.26)AL41