*下ネタ発言?
*微エロ?
*長い






「大人の世界・・・?」


愉悦と快楽の世界。


怪盗Eの誘い-後編-



「良くわからない・・・。」
「だから教えてやるって言ってんだろ?」

怪盗は彼女の細い手首を掴むと、ぐっと引き寄せ、
軽い身体が近づいてくれば空いている手でその顎を上げてみせる。

「こーゆーの、したことねぇか?」

驚き声も上げない彼女の、中途半端に開いた小さな唇に
まだ知らぬ感触をあてつけた。

数秒の話なのに、とても長い間そうしていた気さえする。

流石に少女もそれが何であるかはわかったらしく、
白い頬は紅葉を散らした如く紅くそまった。
捕らわれていない手で思わず唇をなぞる。

非常に好ましい反応。

だが、それにしたって、調べた限りでは婚約者が居るはずだ。
怪盗は改めてその顔を思い出す。

どちらかといえば(気に食わないが)女からは好かれやすい顔をしているし、
割と腹黒いと認識しているので、
このお姫サマが無知なのを良い事に、お手つきして楽しんでんじゃねぇの?
と、下種なことを考えは捨てきれない。

ただ、いきなり婚約者がいるだろ、と言い当てて、
超能力者扱いされる分には楽しいが、不審者扱いではこの後が面倒だ。

とりあえず、何も知りません風に接しておく。

「婚約者とかいねぇのかよ。」
「瀬人様のこと?」
「その瀬人っつーのとは逢ってんのかよ?」
「会う?瀬人様は良く此処へいらして・・・」

なんだ、やっぱり来てんのかよ。
しかも高頻度で、なんて、政略結婚の割りに
だいぶお気に入りのご様子ですなぁ。
そりゃあ、中々の上玉だし、
ワガママというわけでもなく、金持ちの割りに擦れてないし、
無垢で従順で、腹黒い男から見ればだいぶ遊べてしまうような姫だ。


「そいつが来たら色々されてんだろ?」
「瀬人様は割と無口だけど、偶にお話されるの。」
「される違ぇ・・・。で、話以外は?」
「何も?瀬人様は読書されることもあるけど・・・。」

怪盗は呆れた、呆れるしかなかった。

「ほんとかよ。あのなぁ、婚約者なんだぜ?あんなことやこんなことの一つもしたって問題ねぇよ。」
「あんなこと?こんなこと?」

彼女の頭の上から疑問符が出ている幻覚を見た。


うおぉい!姫の教育係は何してんだ。


疎くて無垢だとは考えていたが、
だいぶ程度に差があるらしい。

恥らう以前の問題だ。

「あのなぁ、婚約者が逢瀬っつったら、
あんなことやこんなことをして、『やぁん』とか『はぁん』とかいうんだよ。」
「『やぁん』『はぁん』?言ったことない・・・。」

素で繰り返されると、何故かこっちが恥ずかしくなってしまう。

「キスもしたこと無かったんだろ。」
「え・・・ん・・・そういうわけじゃないけど・・・。」



すっかり予想外の疎さに遊んでしまったが、
目的を忘れたわけではない。

「じゃあ、俺が『やぁん』とか『はぁん』って言わせてやろうか。」
「どうやって?」
「さぁな。気になるか?」

知りたいか?

「教えてくれるの?」
「ああ。」

たっぷりと。

「だが、此処で教えることはできねぇよ。」

さぁ、どうする?

「外へ行くの?」

余り知らぬ外の世界。

「外、この城よりももっと広い、外の世界。」

枠のない空を。


彼女の目は、彼女がその世界へ出て行くことを望んでいると言っていた。
だが、うん、といえないのは、
彼女を此処に縛り付けるものがあるからだ。

「城を出たくねぇのか?」
「そうじゃないけど・・・私が居なくなったら、御爺様も瀬人様も・・・。」

彼女は無知ではないのだ。

彼女がこの城で、武藤家でどういう役割をしているかは知っているのだ。
特に政治に首をつっ込む必要は無い。
ただ、他者が望むように生きていくことが彼女の役割。
好きでもない男の前でにこにこ笑い、
変わり映えの無い話題に溺れ、
お人形のように生きることが仕事、役割。

だが、
そんな鎖は断ち切れるものなのだ。

「でも、知ってたか?」
「何を?」
「御爺サマよりも、瀬人ってやつよりも、もっと姫サマを必要としてるやつがいるんだぜ?」

初めて見たときから欲しいと思った。
そして自分だけが彼女を幸せに出来ると確信していた。

だが、今はそれを告げるときではない。
告げるのはまだ先、
いまは、怪盗として立っているのだ。

「何の参考も無いまま、選べっていうのも酷な話だよな。」

話を逸らし、連れて行く為にイザナいはじめる。

「姫サマの知りたがってる大人の世界ってヤツを、少しだけ教えてやるよ。」

己の希望と他者の希望を秤にかけて、
答えが出ないままたじろいでいた少女は、
男の為されるままに、壁に押し付けられていた。

誘惑的な表情に、見入ってしまったが最後、
彼女は、熱く深い口付けを受けて、考えていたもの全てを手放す。
男はそのまま小さな唇を貪りながら、腰に手をやりじわりじわりと攻め立てた。

コルセット越しに感じる指は熱く、侍女とは違う。
息をつく合間に受ける視線は、婚約者と違う。

自分を見ているのだと、根拠のない確信を持った。

彼が何をもって自分に接するのかは解らないが、
彼が欲しいのは武藤家ではなく、自分自身なのだとそう気づくと、
今まで感じたことの無い熱いものが胸から溢れ出てくる。

腰にあった男の手はわき腹を経て、胸へと辿り着いた。
心と顔の幼さに反し、女として機能していることを物語る。
熱くゴツゴツとした指が与える刺激は、彼女をより酔わせてゆく。

しかし、何時までも酔わせてはくれなかった。

「んんっ・・・。」

感じ始めたところで急に終えられてた少女は、
ただ男を見上げる。

答えは出ていた。

紫の瞳はとうとう訴える。
心を決めたのだと。

「いいんだな?」
「・・・うん。」

責任感が強いのか、
己の欲望に溺れ、背徳的な決断を下した罪悪感に苛まれて居るのだろう。
瞳には悲しみと後悔が見え隠れした。

「罪悪感はすぐに拭い去ってやるぜ?」

そうだ。


誰が何時、
『白き龍のサファイア』を盗むといった?



怪盗は彼女を抱き上げて、小さな窓から飛び出した。

近くのバルコニーに飛び降りる。


恐ろしくて思わず男の首にしがみついたが、
男はそれを嫌がることなく、逆に「しっかり掴まってろ」と抱き寄せてくれた。
外の空気が冷たいからか、より男の体温が熱く感じる。

その男の目に自分は映っていない。
だが、
その目が美しいと思った。
月のようと思った瞳。

だが、月のように欠けはしない、
そして手に入れることが出来るかもしれないもの。

「宝石。」

思わず呟いた、風に吹き飛ばされた言葉に男は気づかなかったのか、
反応は示さなかった。

「ほら、姫サマの御爺サマと婚約者がいらっしゃるぜ?」

怪盗は更に一段下の屋根へと飛び降りて、
警備に集まっていた兵士たちの顔が何とか識別できる場所まで近づいた。
中庭には聞くに勝る数の警備が配置されていたらしい。
一先ず彼女をおろし、公衆にその姿を示してやる。


「姫!!!」

見物に来ていた女中や、兵士がぞろぞろと集まってきて、
口々に遊戯を呼んだ。
騒ぎを聞きつけた双六と瀬人も姿を現した。

「貴様!我が愛孫をどうするつもりだ!」
双六の動揺は目に見えて解ったが、瀬人は思うよりも冷静だった。
「貴様の考えなどわかっている。
サファイアの警備を知り、別の手段をとった結果、
姫の身代金として手に入れるつもりか。」
「さぁなぁ。」

「瀬人殿・・・!!」
「侯爵・・・いくら宝珠といえど、姫の命には変えられません。」
「瀬人殿・・・。」
「この国にさえあれば、白き龍は国を守るという話です。
我々が所持せずとも、充分でしょう・・・。しかし、姫は・・・。」


所詮盗賊、
これが偽者だということには気づくまい。


瀬人はクツクツと心のうちで笑った。


怪盗はクツクツと低い声で笑った。


「姫サマ見ろよ。あいつらあんなに必死になって、石っころを守ってやがったんだぜ?」

なのに、遊戯、お前は自分を捨てて必死になって、
押し付けられた役割だけに躍起になって。

「俺は書いたはずだぜ?お前の宝を盗むってな。
まぁ、そうだな、価値観の違いってヤツだろ?」

あんたにとっての宝はサファイア。
俺にとってのあんたの宝は、

「美しいアメジストが二つも埋め込まれたお美しい姫さまでしたとさ。」

丁度良いんじゃねぇの?
分かち合いってやつで。

双六は壊れそうなほどに目を見開き、崩れ落ちた。
瀬人はフェイクを手にしたまま、そこに突っ立っていた。

良いざまだ。

遊戯を縛り付けていたものが、
縛っていたくせに守ることの出来なかった絶望の瞬間。



「せいぜい、サファイアにドレスでも着せてやるんだな。
まぁ、どうせそいつは偽者なんだろうけどよ。」

瀬人がフェイクを作っていたことくらい知っているのだ。

そして、ホンモノが何処にあるのか、も。

「まぁ、何、瀬人サマよぉ。あんたも良いじゃねぇか。
欲しかったもんを手に入れたんだからよ。」

瀬人が快く政略結婚を受入れたのは、
正しくサファイアの為。
サファイアに眠りし龍の力に見入ったため。

「いい度胸してるよなぁ。姫とフェイクを交換だなんてよ。」

なぁ、姫サマ、そう思うだろう?

「あいつらは、誰一人あんたを宝だとは思っていなかった。
警備も居なければ、フェイクと交換だとよ。
あの婚約者は、あれがホンモノだったら、交換なんか言い出さないぜ?
あんたはホンモノの姫さまなのにな。

解っただろ?
あんただけがあいつらの為に必死になってただけだ。

どうだ?まだ、罪悪感はその胸を締め付けているか?」

遊戯は、そう誘う瞳に酔わされて、
迷いは無いな、という念押しに
コクリと頷いた。

その瞬間に、双六の叫び声がこだました。

「さぁて、お騒がせしましたよ。俺はこれで帰らせてもらうぜ。」

無論姫といっしょにな。

怪盗は遊戯の手の甲に契約のキスを贈り、
彼女を再び抱きかかえて、
空中へと飛び出した。

「ディアバウンド。」

聞き知らぬ名に何かが応じ、
ふわりと宙に浮いたことに遊戯は気づいた。

そしてそれはあっさりと天を舞い、城はまるでジオラマのように小さくなっていった。


本当に、良かったんだな?

「うん。」
「折角外の世界に飛び出したんだ。
さっさと帰るのもつまらねぇし、どこか行きたいところはねぇか?」

「大人の世界は?」

連れ出すために出しただけの世界、
無論下心満載だったわけだが、
それを純粋に目的にしている遊戯に思わず頭を抱えた。

「大人の世界は、ベッドの上にあるから、急ぐ必要もねぇだろ?」
「そうなの?ベッドは私の部屋にもあったよ?」
「男と女が居ないといけない場所なんだよ。」

姫の教育係がだいぶサボったせいで、
すぐに楽しい夜の生活とは行かないようだが、


だがいい。

ゆっくりと、ゆっくりと、時間はまだまだあるのだ。




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背景素材:Cocoさんのものを少し薄くさせていただきました。
(文字と被り、ちょっと読みにくかったので)



長々とお付き合いいただきまして、すいません


なげぇなぁ・・・

でも分割するとあれなんだよなぁ・・・。
前作とあわせて3分割にすればよかったんだけどなぁ・・・。
本当はもっと長くなるんですが、
社長の出番を大幅カットしたので。
サファイアも最後グダグダになっちゃったけど、まぁいいよね。


今まで一度もキスしていなかったので、ニョタでさせたら、
それ以上のことしおった
ってか一度もバクラって言ってないという致命的!


ちなみに、怪盗Eの誘い(いざない)のEは、
掃除したら出てきたドイツ語辞書から引っ張ってきた、宝石(Edelstein)の頭文字を。

(08.02.28)AL41