*ニョタい
*時代背景とか無視無視
*身分制度も無視無視
*微エロではないですが、発言内容が・・・






城は騒々しかった。

「ご安心ください。」

男の頼もしい言葉に、にっこりと笑った。

笑うことが仕事だった。





怪盗Eの誘い




ことの発端は2日前、
城に届けられた1通の予告状。
それは巷で有名な怪盗のもので、
そこにはこう書かれていたのだ。

―新月の夜に、お前の宝は盗まれる―

彼は、例えば
男爵の屋敷から国宝級の宝飾品を盗んだり、公爵の屋敷からチーズ一片を盗んだりと、
金持ち専門でありながら、盗む対象が良くわからない愉快犯であった。
愉快犯と呼ぶのは貧乏人だけで、金持ちにとっては憎くて叶わないのだ。

怪盗は必ず新月の夜に、
そして予告どおりに盗んでいく。

しかしその文章はいつでも抽象的で、
多くの宝物を抱え込んでいる貴族には警備対象が定められずに、あっさり出し抜かれている。
まぁ、傭兵を何人並べようとも何もなかったかのように盗んでいくのだが。


そして今夜怪盗が選んだ舞台はドミノ皇国の有力な貴族の一党である武藤侯爵の邸であった。

侯爵には代々受け継いできた宝物がある。

『白き龍のサファイア』

ただの石ではない。
嘗て古代、この地に住み民を守っていたと言われる白き龍。
戦いの末、力尽きた龍は民に言い残した。
“我が眼は守護の石、失わぬ限り私は何度でも蘇りそなたとそなたの子孫を守ろう”
このドミノ皇国がそれ以降何者にも打ち破られていないのは、この石に縁るものだ。
そういわれ続けてきた、正しく国宝である。

「この石だけは何があっても守らねばならない。」

その当主の声に何よりも先に答えたのが、
最近勢力を伸ばしてきた海馬子爵の次期当主、瀬人であった。

海馬家の当主剛三郎が武力絶対主義のタカ派であるのに対し、武藤家は穏健そのものである。

しかしそういったことは全く気にせず、剛三郎は少しでも地位を上げるべく、息子瀬人を武藤家に婿入りさせることにした。
この婚約は関係ない一般市民まで驚かせたが、
瀬人自身は大して嫌がる素振りを見せなかったのだ。
この態度に海馬家を知る多くの者は「政略結婚による武藤家ののっとり」であると判断していた。
その通りだった。

武藤家は最初、この申し出を断った、
それは海馬家の思惑云々だけでなく、当主双六が頑固に反対したからであった。
しかし武藤家には次期当主になれるものは居ない。
双六の息子は、天災時に人命救助へ走り回った後、行方がしれなくなった。
一方、その息子の長男は、王家の養子へと連れて行かれてしまったのだ。
最初が優れていても、血縁同士の甘えは国を崩壊へ導く。
そういった考えの下にあった王家は、長男を養子に入れさせたのだ。

そして残っているのは長女のみ。

双六にとって長女はただ一人の孫。

周囲の「ずっと無邪気で居て欲しい」という無言の願望を知らず知らずに受入れたのか、
姫は15にもなるというのに子どものようで、
少々おてんばではあったが、可愛らしい娘になっていた。

その姫をタカ派の海馬家の息子と結婚させることに双六が反対したのも最もだった。
そもそも結婚自体を嫌がったのだが。

しかし跡継ぎがいない現実と、海馬家が婿入りを提案したことで、とうとう決断したのだった。

それでもいい顔はしていなかった双六に媚を売る形で、
瀬人が『白き龍のサファイア』の警備に真っ先に手を上げたのだ。

この行動は剛三郎にとって少々驚きであったが、取り入るという面では不服は無く、
快く衛兵を差し出してきた。
ただ、一癖も二癖もある息子の胸中を完璧に読むことは出来なかったが。



新月の夜。

『白き龍のサファイア』は忠実で優れた兵士たちによって守られていた。
武器など辞書でしか知らぬような侍女含め女中たちの中には
それを恐れるような目で見るものもいたし、逞しい男だと惚れこむ者も居た。

女たちの中には彼らの主である姫の婚約者に恋焦がれるものも少なくなかったが。

「(所詮は世間知らずの女共だ。)」

端麗な容姿とは裏腹に、胸中は黒く濁っているその男は、それらを愚かしいと侮蔑し、
警備に怠りが無いかを確認した上で
とりあえず婚約者の元へ向かった。

礼を持って部屋に入れば、
まるで外の重苦しい世界と壁一枚しか隔てては居ないとは信じられない世界が待っている。

そしてさっきの女たちよりもよっぽど世間知らずな女がそこには住んでいる。

外は怪盗に振り回されているというのに、姫は今日も新しいドレスを着させられていた。
まるで着せ替え人形だ。
侍女は瀬人に感想を求め、適当な返答を貰うとそれで喜び、
姫は喜ぶこともせず笑っているだけだ。

女中頭に注意され、調子に乗っていた侍女が下がると、
別世界のようなこの部屋には婚約者が2人残されただけだ。

所詮は戦略結婚なのだ。

二人の間にまともな言葉は無い。

何か話題を探すが。

「姫、今宵は怪盗が来るというので、城は大変な騒ぎですが、ご存知ですか?」
「怪盗、ですか?ああ、祖父が数日前から言っていましたが・・・」

何故彼は盗もうとするのでしょうね。

彼女は恐れない、そして執着を持たない。

彼女は何かずれているのだ。

瀬人は自分の考え外のことを言い出す人間が嫌いだった。
だが、この女が美しいということだけは何があっても認めなければならないのだ。

双六の執着に最初は呆れたが、実際会ってみると納得がいった。
女というのは幼すぎる。
15であれば既に妻となっている人が多く居るだろうが、彼女はまだまだ少女の域。
様相が子どもらしいだけでなく、
男というものが何なのか、結婚とは何なのか、夫婦とは何なのか。
侍女に教えられた中途半端な偏った概念でしか、それを知らぬのだろう。


部下に調べさせた限り、双六が彼女への求婚を断った数は両手で数え切れない。
最初に申し出があったのは4歳の時だという。
それも公爵からだったというが、相手は18、公爵の長男。
幼女趣味ではないはずなのに、彼女と結婚したいと言い出したらしいが、
流石にそれは如何なものかと公爵当主も止めに入り、断ることが出来たという。

『この子の美しさを知るからこそ、あんな風に求められるのだ』

可愛い孫を欲に塗れた男共から守るために、とうとう彼女は外へ出して貰えなくなった。
いくら使用人とはいえ男という男から遠ざけられ、
窓は僅かな星しか見えぬような小さいものに変えられた。

これでは世間知らずになるのも仕方が無い。

当初、瀬人はこの世間知らずな、無垢な少女に嫌悪した。
自分のように自由のない教育を受けさせられてきた間も、平和にのびのびと暮らしてきた少女が憎いほどだった。
しかし、
彼女の真っ白な知識を塗りつぶせるのは自分だけだと気づいた。
彼の支配欲は疼きだし、優越感が満たされる。

自分しか彼女を汚すことは出来ない。

その喜び故に、瀬人は今あせることなく白い彼女を楽しんでいると言えた。


「そうですね、何故怪盗は盗むのでしょうね。まぁ、今宵ヤツを捕らえられれば、
それも聞きだすことが出来ましょう。」

ご安心ください。

「私が全ての力でもって、お守りしますから。」

そう言ったところで彼女の心は少しも男に傾倒しないのは解っていた。

だがいい。

ゆっくりと、ゆっくりと、時間はまだまだあるのだ。


それでは警備に戻りますので、
窓の外を一瞥して瀬人はそう言って部屋をでた。

その窓は3分後、ドアとなり、男はやって来た。





瀬人の去った後、彼女、遊戯は窓へ駆け寄った。

婚約者の前では大人しく穏やかに女らしく振舞えと言われていたので堪えていたが、
怪盗が来るというではないか、
小説で読んだ怪盗はあっさりと、スタイリッシュに盗んでいく大泥棒、
それが見たいと思って仕方が無かったのだ。
「何時来るのかなぁ・・・」
外を覗こうとするが、見えない。
彼は何を盗むのだろう。

新月の夜にだけ動き回る怪盗。

それだけで彼女の心は喜びはねた。

侍女を探すフリをして部屋を出てしまおうか、そう思ってドアへ近づくと、

窓の光が遮られ、

ふっとして振り向くと、

黒いコートをなびかせた男が部屋の中に突っ立っていた。




「誰?」

「驚かねぇとは、関心だな。」

驚くも何も恐れる理由がわからない。

彼女は彼女なりに彼女の持つ全ての知識を漁って、答えを出した。

「ピーターパン?」

男は僅かによろめき、額に手を当てる。
逆光の為に顔は良く見えないが、銀の髪が光っているのは解った。

「ピーターパンってのはあれか?ねばーらんどとか言う。」
「そう。知ってるの?貴方はピーターパンなの?」

どう見ても違うのだが、
窓から入ってくる人物はそのくらいしか解らない。

男はそーゆーとこは嫌いじゃねぇけどよ、と意味不明の独り言を言って、
彼女のそっと歩み寄る。
そのときに漸く、顔が映し出された。

銀とも白ともつかぬ髪に、白いブラウス、
黒いコートに袖は通さず、襟元のチェーンで止められているだけだった。
此方を見ている目は金とも琥珀ともいえそうな不思議な色をしていて、
どこか、月にも似ていた。

一方男も少女を見た。

彼女の言動から窺える知識は、どうみても子どもだ。
だが、ピーターパンとは的を得ていたか?

だってそうだろう?
興味と好奇心の塊のような子ども3人を連れて別世界へ連れて行ってしまうとは、
人攫いとしか言いようが無い。

「そうだな、ピーターパンに似てるっちゃ似てるかもしんねぇな。」
「やっぱりそうなの?」

「ヤツと俺の違うのは、」

子供ではないこと。
ネバーランドではないこと。

「じゃあ、何処に連れて行ってくれるの?」
「そうだな、大人の世界とでも言っておこうか。」

そこには人魚がいるの?インディアンの部族が居るの?片腕を無くした海賊が住んでいるの?
それはここよりも広くて、知らないものがいっぱいあって、
楽しいの?素敵なの?

自分の知らぬものを多く知っている者。

遊戯は楽しくて仕方が無かった。

「確かにこの部屋よりは広いし、お姫様の知らないものもいっぱいある。
だが生憎、大人の世界には人魚もインディアンも海賊もいねぇがな。」
怪盗と変人はいるけどな。

「じゃあ、何があるの?」

「愉悦と快楽。」


大人の世界。

少女の知らぬ大人の世界。


「楽しいの?」

「楽しくて、気持ちよくて、癖になる。」




知りたいか?




男は誘った。
彼女がうんと言わなければ、別の方法を考えていた。


意地でも連れて行きたいのだ。

欲しいものは手に入れる、
そうやって全てを手に入れてきた。

そう、彼は怪盗。

奪うことが仕事だった。




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背景素材:Cocoさんのものを少し薄くさせていただきました。
(文字と被り、ちょっと読みにくかったので)



そして続くはめに・・・

この後怪盗は少々下品?な発言をするかもしれません。ご注意ください。


ちなみに管理人は別にピーターパンが嫌いなわけではありません。



管理人はお姫様な遊戯が好きです(懺悔)
塔の上のお姫様で、攻めに助けて貰えば良いよとか常日頃思っています
基本的に無防備な遊戯が好きです

小悪魔な遊戯も大好きですが。