小さな口だ。
だが、そこから溢れてくる言葉に制限など無く、
時には驚かせ、時には喜ばせ、
何時だって愛おしくさせる、口。



Kussmund




とりあえず呼び出した、
仕事はあったが確保するために呼び出した。
午後は時間が取れそうだったのだが、前日に話すことが出来ず、
つまり、俺の仕事が終わるまでは暇だということだ。

だが、面白い人間だ。
何かとやることをみつけて何かはしている。
それがゲームである確率は非常に高いが、
今日は珍しく宿題なんぞをやっている。

何故遊戯が宿題をやっていると不吉な予感がするのだろうか。

・・・非科学的だ。


思いの外仕事は早々に片付いた。
無論、これですることがなくなったわけではないが、休憩もはさんでいなかったのだ。
少々休んでも問題なかろう。



海馬は机におきっぱなしにしていた珈琲を飲み、それはすでに冷めていたが、
宿題を広げ、余りにも静かに固まったままの遊戯に近づく。

「すっかり寝ているものかと思っていたが。」

遊戯はおきていた。
だが、シャーペンはノートに置かれたままで、問は2つ程度しか進んでいない。

「遊戯?」

話しかけてもなにやら難しい顔をしている。
難しいといっても可愛いだけだが。

「遊戯?」

もう一度話しかけて漸く此方を見上げた。
そんな目で見ないで欲しい。
だが相変わらず自分の魅力に気づいていない恋人にそれを伝えるのは無理だろう。

「海馬君、お仕事終わったの!?」

嬉しそうな様子を見せられると、海馬としてはやはり嬉しい。
割と感情を押し殺すことの多い遊戯だけに、そう素直な反応は恋しいもので、
求められていると感じられる。

「一休みと言ったところだ。」
「大変だねー。」

遊戯の隣に座り、何を考えていた?と問うと、
遊戯は再び可愛いくも難しい顔をして見せる。

「海馬君は頭が良いから解るかなぁ?」
「言ってみろ。」


ある国のある王様は戦争をやめた。
生業を失った有能な騎士達が反乱を起こしたので、一同を集めた。
そして言った。
『お前たちの中で最も強いものに金では買えない、誰も見た事の無いものをくれてやろう。
それを得られるのもは生き残るただ一人だ。』
貪欲で強欲な騎士達は競い合った。
刃を交わしたものは皆命まで絶たねば気がすまなかった。

最後に残った者が得意げに王の下へ赴き、褒美を求めた。
だがどうだ、王は笑う一方で何も渡そうとしない。
問い詰めると言うのだ。
『すでにお前はそれを持ち、目にしている。お前だけが許されたのだ。』
理解できぬまま城を追い出されると、賢者に出会う。
そして言うのだ。
『お前達ははじめからそれを持っていた、そして見ている。』


「海馬君はなんだったと思う?」

英語の問題を2問解いたっきり、何を考えていたかと思えば。
海馬は呆れたが、プライドが許さない。
とはいえ、この話から判断するのは如何なものか。
「探るには余りに情報が足りないと思わないか?」
「そうだよね。」

「そもそもこんな話を何処から聞いた?」
「獏良君から。」
何かわかる?って、と答える遊戯は未だに不思議そうな顔をしていた。

獏良・・・?ああ、あのオカルト人間か。

怪しいものだ。

「恐らく答えなどないのではないか?」

誰かが適当に考えた話で、元から答えなど無かった。

そんなものは山のようにあるだろう?

「そうかなぁ。」
「そんな話を考えているよりも、この宿題を解く方がお前にとっては得策ではないか?」
放られていたシャーペンで問題を突っつくと遊戯は呻った後、

「この問題もきっと答えは無いんだよ。」

完全なる放棄だ。
見ると楽な問題ばかりだ。知識問題だから知らなければ解けないが、
調べれば良い話で、答えはあるはずだ。
こういう課題を出してくるということは、覚えろということで、
覚えたものは期末だの中間考査で出てくるということ、
要は覚えてしまいさえすれば点数が取れるというのに。

海馬はシャーペンで紅葉頭をコツコツとつつきながら、「調べればわかるだろう?」と促すが、
遊戯は口を尖らせ、めんどくさいと目がいっている。

「海馬君は解るからそういうけどさぁ。」

先から投げやりな言葉ばかりを言う。
遊戯が赤点をとり居残りだの課題だのを出されることにこれといって関係が無いように思われるが、
それによって折角会えたはずの時間が潰されるのは納得がいかない。

「俺の仕事とどちらが先に終わるかで競うか?」

勝負は好きだろう?

「負けたら、罰ゲーム?」

「そうだな。」

俺が勝ったら抱かせて貰おうか、そう躊躇い無く告げると遊戯は嫌な顔をして、
キミはそればっかりだよ、とまた苦言を呈したあと、どうせはじめからそのつもりだったんでしょ?
と今日、仕事がありながら呼び出したワケは流石に悟られていた。

「お前が勝ったら我慢してやるが?」

「えー?怪しいよ。」

訝り、また口を尖らせている。

疑われるのは自分自身の責任と解っているが、海馬は、『誘っているのは何時だってお前だ』と言ってやりたかった。
だが、それを伝えるのはやはり難しいのだろう。
何処までも甘い、と海馬が自分に苦笑すると、
尖らせていた口が開かれる。

「それにさぁ。」

「何だ?」

ボクだってある程度はそのつもりで来たんだよ?

と、恥ずかしそうにしながら、小さな口をもごもごさせている。


その口は、時に驚かせ時に喜ばせ、
本当に愛おしいものだな。

視線を合わせようとしていなかった遊戯の頭を掴むと、
強引に口付けた。
それは食いつくようでも、溶けるようでもない、単なる甘いもの。

放せば今度は目の下を真っ赤にして、どうしてそうやって前触れも無くするのッ!?とお怒り気味の口調。

「お前の口を見ているとキスしたくなる。」

羞恥心があるのかないのか海馬がやっぱりあっさりそう告げると、
怒りは再び気恥ずかしさへ変わり、
「海馬君は変だよ。」
とひとりごち、
「何か言ったか?」
業と聞き返せば別にーと聞き流す。
お前はさっきからどれだけの表情を見せたことか。

「お前は見ていて飽きないが、さっさと仕事を終えてからの楽しみとするか。」

海馬がそう席を立ち、再び仕事へ戻ろうとすると、

「ボクが先に宿題終えたら、急にキスするの禁止だからね。」

と勝負を挑んできた。

売られたものは買い取ってやる。

「良いだろう。」

では、俺が勝ったらどうしてやろうか。


海馬はそれを決めるより先に仕事へ向かった。


勝利の後に決めてやればいい、無論、あの口を塞ぎながら。









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海表で甘め。

この人たち、なんかカラダ前提のお付き合いしてる文多くないですか?気のせい?うちのせい?ああ、そう。

海表ももう3つ書いたし、そろそろニョタか女装で裏を・・・

ちなみに、題名、kuss mundは、
キスしたくなるような可愛い口

らしい。

辞書引いてたらでてきた。

で、うちのドイツ語の辞書、何処いったんだ?
(メモってからどこかにやってしまった・・・笑)


(08.02.11)AL41