Ep.2-05
夢みたいだ。
色んな意味で生きた心地がしないのだが、
無事に生還を果たしたのだ。
教室のドアを開けると、教室中の視線を浴びた。
「杏子!アテム君、大丈夫!?」
タイルの落ちる音と砕ける音、
それに女の悲鳴が2回聞こえたというのだ。
1回は紛れも無く杏子本人だが、
もう1回はなんと言えばいいんだろうか。
女の断末魔で、でもそれは女というより蜘蛛で、
でも蜘蛛といってもそこ等辺の壁に居るのではないもので、
で、それがどう見えたのかといえば、
アテムの謎めいた魔方陣のせいだとおもうのだが、
つまりは、アテムの能力故であり、
このことを言ったら、さっきアテムが「内密に」といったのに反してしまう。
「えへへ、ちょっと、トイレから出たらタイルばっかりで驚いちゃってさ、
その上転んで思わず、ね。」
と無難に答えておく。
すると周囲もそれを信じたらしく、もー心配したんだよー?となんでもない反応を返してくれて助かった。
杏子がそんなやり取りをしている間に、アテムはさっさと席へ戻ってしまう。
「お帰り、もう1人のボク。お疲れ様。」
「ああ。」
遊戯は何でもなくそう迎えるが、
城之内と本田は何があったのかさっぱりで、あれだけの音がしたというのに、
平然としているアテムが不思議でならない。
「大丈夫だったのか!?」
「結局なんだったんだ!?」
「一寸した呪いだ。解いたからもう大丈夫だ。それに関してはな。」
やはり平然と答えているが、よく考えれば何一つ科学的でない。
だが、そんなものをはお構い無しで、アテムは遊戯の心配をしている。
「それで、相棒、」
「うん。見てみたよ。重いね。」
「やはりそうか。こんなに弾いたのは久しぶりだ。原因はどうだった?」
「なんていうか、」
遊戯は難しそうな顔をする。
確かに彼が並べた言葉はどれも冷たくて重くて、楽しい顔を出来ないものだが、
恐らくアテムであれば冷淡に述べるのだろうと思えば、
遊戯はどちらかと言うと、そういったものに心を遣れる性格らしい。
「学校とは関係ないと思う。いや、寧ろ、相容れない・・・かな。
凄く冷たくて怖くて・・・キミやボクが動いても簡単には解決できないくらい深いみたい。」
「まぁ学校と関係ないんなら、構わないか。」
俺たちの仕事は、ここの除霊と解放だけだ、と
見た目どおりの割り切り型で、言い切ったアテムに遊戯は少し寂しそうな表情をみせるが、
遅れてやってきた杏子を見るなり、
ぱあっと表情が明るくなる。
「遊戯どうかしたのか?」
城之内が不思議そうに問うと、
遊戯はへへへっといたずらっ子のように笑い「何でもないよ」、と何でもある誤魔化し方だが、
それを言及しようとすると
「お前ら、席座れー」と漸く担任が戻ってきた。
そして漸く帰宅が許された。
「2人はもう帰るだろ?それとも何かあるのか?」
「俺達はちょっと校内を見回ってみようかと思って。」
「除霊の準備ってか・・・?」
「うん、大丈夫だって城之内君。そんなに怖がらなくてもさ。」
「お、おう。」
それじゃあ、また明日な!と、
オカルト嫌いの城之内は付き合える自信が無く、
杏子もどうやらバイトがあるらしく、
本田もまたなにやら用があるらしくて、
3人とは大きく手を振りながら別れた。
「友達一杯出来てよかったー!」
「そうだな。」
遊戯の高校生活は順調な滑り出しだ。
だが、それに反して、アテムは少し胸が苦しくなる。
ワガママだって、自分で解っているじゃないか。
黙っていると気持ちが下がってきてしまって、
話題を変える。
「そういえば相棒、さっきはどうしたんだ?」
「さっき?」
「俺が戻ってきたときに、楽しそうな顔をしただろ?」
「あー、あれは、」
そこまで言いかけて、
楽しそうに言い逃れる。
「秘密だよ!」
秘密、
そういえば遊戯がアテムに秘密にすることなど、殆ど無かったのに。
「別に凄い話じゃないんだ。」
「じゃあ、いいじゃないか。」
「ダメ!大切なことだから。」
そう指を立てていう遊戯の可愛さに、
わだかまりを感じながらも仕方が無いと思ってしまう。
しかし確かに、2人の間には小さな出来事が積み重なって、
僅かに溝が出来てくる。
このまま、触れられなくなってしまうことが恐ろしい。
アテムはその恐れを悟られぬよう、外へと視線を投げた。
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(08.04.22)AL41