勝手に指定席






席替え。
人によっては嬉しく、悲しく、大したことが無いようで大問題をはらむもの、それが
席替え。

席替えには多くの希望が錯綜する。
目が悪いから前がいいとか、
授業中寝やすいように後ろがいいとか。

それ以上に多いのは、
誰かの隣がいい、というものだろう。

そして、あの一行の間でも無論、多くの煩悩が見え隠れしている。


狙うは、遊戯の隣。


登下校一緒の某氏でも、
親友と称される某氏も、
学校へ来る自体珍しい某でも。

なんでこうも人気があるのだか。

本人曰く、幼馴染以外の友達を持ったのは高校に入って初めて、と言っていたが、
そうとは思えない敵の多さ。
しかも男ばかりに入れ込まれて、
どうかしていると思いつつ、
一寸人とどこか価値観の異なるバクラでも、
流石に席替えは問題だ。

今の席を非常に気に入っている。
何故なら、今現在は遊戯の左後ろである。
隣ではないが、バクラはこの位置が気に入っている。


確かに隣・前後よりも距離は遠いが、
この斜めの距離は
授業中に観察するには丁度いいのだ。
更に、後になって気づいたのだが、
プリントを配る時、後ろの人、現在は本田だが、話すときに左側に身体を動かす。
そして寝るときに左向きにうつぶしている。

寝顔が自然に見られる位置は此処と、この左隣だけなのだ。
だが左隣では一寸距離が離れすぎる。
やはり此処が一番だった。

だから、バクラにとっては遊戯の隣が誰であれ割と許せた。
城之内あたりであれば問題が起きることもない。
そもそも何十分の一の確立だ。
王サマや社長が来ることはそうそう無いだろう。

ただそれは自分にも言えて、
またこの場所をとることが出来る可能性もまた、何十分の一だった。


席替えは混乱を妨げるために、多少の希望を考慮したうえで、
教師によって決められる。

一か八か。




翌日、席は発表された。



「バクラ君、またよろしくね!」

そう笑顔で挨拶してくる遊戯を、
斜め左後ろから見る結果になった。



実は、これにはタネがある。


高校入学した当初、
バクラはブラックリスト第一頭だった。

当時のバクラは今以上に人と接するのを嫌がり、
教師もまた手を焼いていた。
如何せん中学時代は全く手が付けられず、
高校に行こうとした時点で天地が引っ繰り返るようだとさえ揶揄されたのだ。
本人はまだ遊んで居たかった為に高校入学を決めたらしいが。

中学の教師からある程度の情報を得ていた高校教師達は、
まず従兄弟の了と同じクラスにさせることを決めていた。

了と遊戯がゲームという同趣味を持っていたことは想定外だったが、
その関係から遊戯とバクラが関わりを持つことは自然だった。

武藤遊戯というのは不思議な人間だ。
体力も能力も下の中だが、誰とでも打ち解ける性格は評価に値する言葉が無い。
しかしやはり彼も問題を抱えており、中学時代はいじめられっこ第一頭だったので、
とりあえず幼馴染と同じクラスにした。
するとなんだか元不良で腕っ節の強い城之内と本田と
友人関係を気づくことに成功したのは想定外だったが、
好ましいことだった。

そんな遊戯がバクラに関わろうとし、彼の経歴を気にすることが無いのは自然で、
ただバクラが遊戯を叩くことをしなかったのは不思議であり想定外であり思わぬ結果であった。

そしてバクラが遊戯の斜め後ろの席になってから変わったのは、
流石に手に取るように解った。

まず、授業に出るのだ、割と。
なので、連絡事項も聞くのだ。
まぁ、従兄弟が居れば伝えることはできるのだが。
そして帰りは遊戯達と一緒に、遊びに行く。
バクラから声をかけることは無いが、
遊戯を筆頭に彼の親友である城之内も誘いかければ応じて、
昼はカードゲームに興じることもある。


一応様子を観察している教師陣は、
これを使うほか無いと考えていた。


恐らく何かの問題が発生しない限り、
遊戯はバクラと同じように接するだろうし、その逆も然り。
バクラは遊戯がイジメの対象になりやすいことをある程度理解しているようだし、
共生という言葉が良く似合う。

近くにしておけば何とかなるだろう。と、
まぁ安直では有るが確かな手段だった。




「何でだろうね、これでバクラ君の近くになるのは3回目だよ。ボクは嬉しいけど。」
「腐れ縁ってヤツじゃ無ぇか?」

まるで偶然的運命的な必然の位置に、
教師の思惑を知る由もなく、2人が喜んでいると、
見事に遊戯の隣を引き当てた者がやってくる。

「なんだぁ、また何時ものメンツじゃねぇか。」

本田は笑いながら、またよろしくなー、とバクラの前に座った。

「本田君も一緒だよね、何でだろう。」
「さぁな。」
「ま、一番無難なんじゃねぇか?」

登校してきた杏子に気づき、遊戯が席を教えると、
杏子は一瞬嬉しそうな顔をして、席へと急いだ。

「杏子ともう1人のボク、席近くなんだよ。」
と、遊戯がご満悦のようだった。

バクラは前から2列目になった遊戯の幼馴染の哀れな結果に、感情の篭らない同情をおくり、
珍しく登校してきた某アミューズメント企業の社長が、
前と同じ席に着いたのを笑いをこらえつつ見ていた。

「海馬君、なんでいつも同じ席なのかな。」
「あいつ、しょっちゅう早退・遅刻してくるから、ドア近辺のが都合がいいんじゃね?」
「あー、そっかぁ。」

不運な結末になった彼らの胸中を知ることの無い遊戯は、
いつも同じじゃ詰まんないけど仕方が無いよね、と笑うだけだ。

今回の席替えで、
遊戯に入れ込んでいるメンツのうちで最も良い結果が出たと、
バクラは俄かにその喜びに浸っていた。

苦手な従兄弟が彼の隣に座るまで。



--------------------------------------------------------------------


バク表じゃねぇ・・・


バク→表か。


え、旅でて何でこんなネタなのか?
機内で「学園/天国」が流れてたので。

結局作ったネタが飛行機関連ばっかり。



(08.02.25)AL41