*歓楽街ネタ
*受けの子がちょっと女装っぽい
*死者アリ
人形とボク
目に光は無い。
まだその人形には生命が吹き込まれていない。
彼と同じ齢の子どもたちは、15になれば店に出た。
ただ、彼のような弱弱しい男に抱かれたいと思う女がくるとは思えなかったし、
目の死んだ少年を誰が好むだろう、と、
当初は店の人間も彼を並べるのは如何かと考えている次第だった。
だが、なにやら、弱弱しい少年を愛好する、特殊な趣向の方々がいると聞きつけた店は、
少年に啼き方のいろはを仕込み、売り出そうと考えた。
まず少年は名前を奪われた。
お人形の名前はご主人様が決めればいいのだ。
お人形は口答えしてはならない。
お人形は可愛らしく、ご主人様に従順で。
最後に少年は自我を奪われた。
清らかな水を汚すことなど、造作も無い。
啼き方を覚えた少年は、とうとう売りに出された。
買手はすぐに見つかった。
そしてもうすぐ、迎えが来る。
少年は着飾られ、迎えの車を待っていた。
地獄のような時間だ。
名を失った、霞のような自我がそうさけぶ。
金糸で彩られた着物は、脱がされるために、
脱がす快感を与えるために。
いつも見ているのに、吐き気を催した。
少年は理解できない。
愛していない人を何故抱くのか。
だが自分も、もうすぐそうなるのか。
もう誰を愛する権利など無い自分には、愛し合う相手など居らず、
ただカラダと本能の命じるままに、
教えられたとおりに、美味く啼いて、求めて、
求められたことに上手に応じて。
迎えの人がやってきたら、
霞になった自我さえも破棄しなければならない。
最後に、
最期に、
少し、昔話を。
少年は大切な人を失ったのだ。
それは家族であったり、仄かな想いを抱く幼馴染であったり、彼に繋がる多くの人を。
子供の頃の恋など、所詮ままごとに過ぎないが、大切な存在に変わりはなかった。
恋人と何かしたいというわけでもなく、ただ、隣で笑ってくれれば楽しかった。
なのに、そんなものは全て灰になった。
全てが毒されて、消えてしまった。
彼らの多くの魂は煙となって天へ舞い上がっていった。
少年は見ていた。
恋人が誰かに連れて行かれるのを。
だというのに、自分は助けることも出来ず、ただ見ていた。
その罪だというのか。
今願いが叶うのであれば、
彼女が良心のある人間に拾われて、今幸せに笑っていて欲しい。
さあ、迎えの車がやってきた。
さようなら、ボク
店の人は妙に丁寧に彼を扱い、車へと誘った。
店先にはご主人様が立っている。
名は、しらないが。
あでやかなお人形を乗せて、車は走り出した。
「聞きしに勝る可愛らしさだな。」
あの値段ならば安いものか。
身売りにしては破額ときいた。
恐らく金持ちなのだろう。
軍事企業の取締役だといった男に、微笑んだ。
「名前は、そうだったな私が決めるのだったな。」
男は毛深い手で、人形の頬を撫でる。
カラダは教えられたとおり、甘い息で答えた。
男は気をよくして、人形を抱えあげ、太ももをなぜる。
「そうだな、名前は・・・楓とでも名づけようか。どうだ?」
楓と名づけられた人形はコクリとうなづくき、
着物の下へと伸びてきた指に声を上げた。
屋敷に着くまで耐えられそうに無いと、非常に満足げだった。
男は至高の岸にいたといえよう。
その喜びの先には、絶望が待っていた。
歓楽街を抜けたところで、
どこからか放たれた銃弾により運転手はヒトからモノに、
次の銃弾はガソリンタンクを直撃し、
車は赤い炎と黒い煙を上げて炎上した。
男は慌て、膝にのせていた楓ごと外へ飛び出した。
「クソッ!」
ゴムの溶ける臭いが鼻腔を刺激した。
「おおっと、逃げられちゃあこまるんだなあ、社長さんよお。」
見上げた先には銃口が此方を見つめていた。
無様な姿を嘲笑う。
「キサマ、何者だ・・・」
「何者か?さあな、俺様には答える義務はねぇよなぁ。それに、
殺される理由くらい自分で解ってんだろ?海馬社長。」
楓は見ていた。
別にどうでもいいのだ。
自分はご主人様を守るように出来ていないし。
店の人間は寧ろ喜ぶだろう。
再び自分が店に戻れば、また誰かが金を払って買うかもしれない。
いや、此処で自分も死ぬだろう。
仕方が無い。
それに、人形なのだ。
死ではない、破棄である。
嗤った。
「つまりキサマは・・・」
「まあ、死人にくちなしっつーしな、教えてやるよ。冥土の土産によぉ。
俺様に依頼をしたのは、お前の養子だぜ?
飼い犬に手をかまれたってやつか?ハッ、愉快なことがあるもんだな。」
男は死の恐怖などわすれ、怒り、失望した。
「恩知らずな奴め、誰のおかげでいい生活が出来たと思っている。」
「さぁな。まぁいいんじゃねぇの?てめえだって美味しい思いもしたんだろ?
これだけじゃ味気ねぇから、一言なら伝えておいてやるぜ?」
「ならば瀬人に言え、負け犬はキサマだ。永遠に呪い殺してやる、とな。」
躊躇い無い一発の銃声で
目の前で男は死んだ。
殺した男は、死んだ男の胸ポケットから財布を取り出し、
中身だけを抜き取って、その他は全て燃え盛る車の中にほっぽった。
あの男もまた、灰になる、煙になる。
「さてと、こっちはなんだ?」
男は見た。
殺した男の血を顔に浴びてなお、無表情の少年。
「まぁ、聞かずとも解ってんだけどな。」
人形はゆっくりとカラダを起こす。
そして殺した男の容姿をみた。
白い髪は、黒い服に映えていた。
「てめぇだろ?買われた男ってよ。話だけは聞いてるぜ。」
未だ弾丸の残る銃で、それの顎を持ち上げると、
紫の瞳とかち合った。
返り血と白磁の肌の色合は、男の心をくすぐった。
乱れた着物から覗く白く細い足は、納得の行かなかったものに決着をつける。
「こいつは、なるほどな。」
少年偏愛主義者というのはどこかおかしいと思っていたが、
生憎そうでもないのかもしれないと合点がいく、
自分がおかしいのかもしれないが。
「名前は?」
「楓。」
「本名か?」
一瞬躊躇い頷く。
だが、その一瞬は見過ごして貰えない。
どうせ、知っているのだろう?
「俺が聞いてるのは、お人形のてめぇじゃねぇよ」
「ボクはもう居ないから、ボクの名前はさっき付けてもらった。」
店を出た時から、もう、ボクは誰でも無いんだ。
人形なんだ。
「自分を人形だって卑下してるお前は何もんなんだよ。」
殺そうと思って殺せるものではないのだ、自分なんていうものは。
だってそうだろう?
死にたがっているのは、罪深い自分を知っているからだろう?
自分が何故罪深いのか、知っているからだろう?
「名前は?」
男はしつこく名を問うた。
嗤っている。
罪や現実から逃げようとしている自分を、嗤っている。
「遊戯。」
逃げられないことが、罪の代償ならば名乗ろう。
「へぇ、遊戯、か。わるかねぇな。」
人形遊び、戯れ
人を悦ばせるだけの人形。
下らない。
男はそう吐き捨てた。
思うようにならないから、面白い。
「殺さないの?」
死にたがるお前の、思うようにはさせない。
それの方が、面白いだろ?
「さぁな。とりあえず、一度依頼主んとこ戻るし、ついでにてめぇの顔の一つも見せてやるか。」
報酬は報酬で確りもらわねぇとなぁと死者から奪った札束を一瞥して、
拳銃と一緒にしまった。
「ほらよ、人が来る前にずらかるぜ。」
男はそういって遊戯を抱えあげる。
より間近でみる紫の瞳は、光など宿っていなかったが、
男の心を貫いた。
「来るか?俺と。」
瞳の奥と、
着物の下が、
一線の先から誘った。
「ボクを、買うの?」
「俺は、お人形遊びをする程お子様じゃねぇよ。
俺は人間の遊戯に言っている。・・・来るか?」
遊戯は暫く目を瞑り、何も言わなかった。
男はたとえ遊戯が嫌がったとしても、連れて行くつもりだった。
「行くよ。ついて、行くよ。」
その声はさっきと違う。
塞がれていた瞳が男を捕らえた時、
瞳には光が宿っていた。
これは、人形ではない。
男は笑った。
どこまでも連れて行ってやる。
「俺はバクラだ。」
「バクラ・・・。」
人の名前を聞いたのは久しぶりの気がした。
「さてと、遊戯、ちょっくら時間を食っちまった。
さっさとずらかってメシでも食おうぜ。腹減った。」
「うん。」
男は少年を抱え上げたまま、立ち去る。
そのまま、2人は一度も振り返らなかった。
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よくわかんないまま強制終了
何でだろう、何時もの文体じゃない
さっきからこんなんばっかだ・・・
兎に角バクラが書きたかったんだ、
・・・見てのとおりの結果ですが。
惜敗とかいうレベルじゃない、粉砕、玉砕だよ、つまり社長だ、あぁもうだめだ
ちなみに
社長がバクラに殺人依頼、「拾得物は取っていって構わない」宣言→バクラ、当然の如くお金ゲット!
→遊戯も拾得物なんじゃね?→「遊戯ももらっておくぜ」
というはなし。
社長が「構わん」というか「それは私財だからダメだ」というかはおまかせします。
バク表は再挑戦予定。
(08.1.31)AL41