*今更ですが、別体(笑)
*キス有り
絡み合う名前
「相棒、今日、泊まりに来ないか?」
意外だった。
別に泊まりにいくこと自体は、何にもおかしくないのだが、
そういうのは大体成り行きとか、偶発的なものや、
泊まると計画して泊まることは、新作ゲームの発売日に勉強会と称してする時くらいだ。
「別にいいけど?」
遊戯はほぼ暇だし、アテムと遊ぶことに変わりはないので、一向に問題は無いが、
「(どうかしたのかな・・・。)」
不安になった。
アテムは、おかしな程に悩みを口にしない人間だ。
他者から見れば、悩みなど更々ない完璧人間に見える。・・・某社長以上に。
今は1人暮らしだが実家は裕福で、仕送りで充分に生活できている。
頭も運動神経も申し分ない。
見かけも勿論のことだ。
最も近い場所に居る遊戯の目から見れば多少の問題はある。
人の気持ちを察することが出来ないとか、2人の時は結構ワガママだとか、
口より先に体が動いてしまうせいで言葉が足りないとか、
・・・人に言えば「惚気」といわれるかもしれないが、
とりあえず完全無欠ではないと解っている。
それに、何の悩みがあるわけもなさそうな彼だが、
人は誰だって大なり小なり悩みを持っているものだと、遊戯のじーちゃんは言っている。
人に心配をかけまいとしているところがあるので、
遊戯は不満を漏らすこともない恋人が不安であった。
「(大人しい生徒が事件を起すってこともあるっていうし、
ボクは何か役に立てるかな。ううん、役に立ちたいよ。)」
そう思うと、何だか今日のお泊りは乗り気になる。
「あ、相棒、どうした・・・?」
「ううん!」
突然目を輝かせ出した遊戯に驚きつつも、
悪い気はしなかったので深くは突っ込まなかった。
下校時、一端アテムとわかれ、
遊戯は帰宅して、親に許諾を得た。
無論あっさり許してくれるのは、前述したように、
アテムが完全無欠だと思っているからだ。
助かる。
「・・・アテムの悩みかぁ・・・。・・・本当に役に立てるのかな・・・。」
杞憂だということは後々判明する。
荷物をまとめて家を出た。
アテムのマンションはセキュリティが厳しく、
玄関にアテムが待っていてくれた。
「ゴメンね、待たせちゃった?」
「いや。俺が呼び出したんだからな。」
何時もの笑顔に絆されて、部屋まで辿り着くと、
いつもどおりに綺麗な部屋。
そこでお茶を飲み、まったりするが、遊戯はここぞとばかりに聞いた。
「ねぇ。・・・今日は、どうかしたの?」
「え?」
ほら、だからさー、と、オブラートに包みながらたずねた。
何か、不安なことでもあるのではないかと。
するとアテムはクスクス笑って、
「すまない、余計な心配をさせたな。」
「え?」
「今度、大会に出ることになって、デッキの調整がしたかったんだ。
学校ですると、他のヤツにばれるからな。」
杞憂も杞憂だ。
遊戯は安心したような寂しいような気持ちだと自分を認識していたが、
傍から見れば落胆しているようにしか見えなかった。
「相棒の気持ちは受け取ったぜ。」
「うん・・・。」
「何かあったら、相棒に相談する。約束だ。」
俺にとって、最も信頼できるのは相棒だからな、と付け加えれば、
沈んでいた表情は浮き上がってくるのがわかった。
「それに、デッキの調整にしたって、相棒じゃないと本気で試せないからな。」
「そう言ってもらえると嬉しいけど、プレッシャーだなぁ。」
遊戯も実は、昨夜デッキを組んでみて、ちょっと試したいと思っていたところだった。
2人机に向かい合わせになって、
互いのデッキをシャッフル。
「「決闘!」」
楽しい時間だった。
2人で居れば何でも楽しいのだが、それでも本気でぶつかり合える相手だから、
本気でなければ許されない相手だから。
二回ほどすると、アテムもだいぶイメージが固まったらしく、
「これに決めたぜ。」
「今度の大会、海馬君も出るんだっけ。」
「ああ。負ける気がしないぜ。」
この2人もまた本気でぶつかり合う、絶対的な好敵手。
「ボク、キミたちの決闘好きだよ。緊張感とか。」
「そうだな、気に食わないやつだが、決闘するにはあのくらいでないとつまらないな。」
2人の決闘はまるで戦隊もののようだ。
圧倒的な力で押してくる敵と、窮地に追い込まれてからのコンボで戦況をひっくり返し、
そのまま勝利を収めるヒーロー。
「キミは、ヒーローだね。」
「そうか?」
「そうだよ。ボクはキミの決闘スタイルが好き。」
「それだけか?」
返答の意図に気づくと思わずドキリとして、
もう知らないよ、と恥ずかしがる。
その反応が可愛らしかった。
時計に目をやると、もう7時を回っていて、
2人は適当に夕食を済ませて、ゲームを起動させる。
鞄につめた宿題の存在など、飛ぶだけ飛ばした衛星のようなものだとすると、
2人で過ごす時間は流星か。
時計の針は無言で11時をさしていた。
アテムはベッドに座り、遊戯が戻るのを待った。
「ふー、良いお湯だったよ!」
「そうか。」
戻っていた彼を膝の上へといざなって、“良い湯”で温められた体を引き寄せた。
シャンプーの香りがする。
「?」
「相棒は暖かいな。」
「お風呂のせいだよ。」
「いつもだ。」
「そうかな?」
ボク、平熱は普通だよ?とすっかり勘違いしたままだが、
そんな様子がたまらない。
何だか妙にソワソワしているアテムに違和感を覚えながらも、
その胸へ身を委ねるが、一瞬ヒヤリとして驚いた。
「あ・・・これかぁ・・・。」
アテムが常時身につけているアクセサリー。
カルトゥーシュというらしい。
名前が彫ってあるのだが、鳥やらなにやらで、所謂ヒエログリフだが、遊戯には読めない。
「ねぇ。」
「どうした?」
「これってさ、なんて書いてあるの?」
「なんだろうな。」
「知ってるんでしょ?」
「さぁ。」
あくまでもシラを切るつもりらしいアテムから、
何とか聞き出せないかと試行錯誤する。
だが、ふとアテムが視線をそらし、時計を見やったのをみて、
遊戯も気が逸れた。
「?」
「相棒、」
「何?」
「携帯貸してくれないか?」
「え、いいけど。」
そこに転がしていた携帯電話を取って渡すと、
アテムはその電源を切り、ベッドの端へと放った。
「え、ちょ、」
「相棒。」
「え、・・・今度は何?」
改めて見つめられて、息を呑む。
ふっと顔を近づけてくるのに応じて瞳を閉じると、
唇が触れて、熱い。
最初の驚きなど忘れ去って、舌を絡め、息する暇もないほどに貪りあう。
「・・・んんっ・・・。」
「遊戯。」
名前で呼ばれて驚くと、
男はふっと笑って、耳元で告げた。
「Happy Birthday,遊戯。」
「え?」
慌てて時計を確認すると、12時ジャストだった。
今日は、6月4日。
「本当はこのために呼んだんだぜ?」
誰よりも先に伝えたかった。
誰かがこの時間を邪魔せぬように携帯電話の電源を切って、
自分だけを見て欲しいからキスをした。
「キミってば・・・。」
「俺が最初だぜ。」
「うん・・・。嬉しいよ。」
気遣ってくれたことが、色々計ってくれたことが。
「それで、相棒にプレゼントだ。」
「何かくれるの!?」
アテムは隠し持っていたモノを、遊戯の目の前にぶら下げる。
「あ、これって、キミの!」
カルトゥーシュ。
やっぱり何か刻まれている。
「ありがとう!でも、ねぇこれってなんて書いてあるの?」
「なんだろうな。」
やっぱりシラを切るつもりだろうか。
ぷぅっと膨れていることなど意に介せず、その首にかけた。
折角のプレゼントなのに、笑ってくれないのは寂しい。
「そうだな・・・相棒にとって・・・大切なものだと嬉しい。」
「え?んー、じゃあ、キミのはキミにとって大切なもの?」
「ああ。」
そう言って、アテムは自身のカルトゥーシュにキスを贈る。
思わず嫉妬してしまう。
アテムが遊戯を見やった時、はたまた膨れているので驚いたが、
手に頬に同じように唇を宛がえば、何となくほだされてくれて、
そしてもう一度、互いの唇を合わせる。
場所が場所だからか、さては何となく特別な気持ちだったからか、
互いの熱が恋しくなってきて、遊戯の白い腕がアテムの首を捕らえ、
薄い体をピタリとあわせる。
「んっ・・・はぁ・・・。アテム・・・。」
溶けるような声と瞳に、一瞬理性がぐらついた。
だが、それを牽制するように、何かが引っかかった。
「あ、カルトゥーシュが・・・。」
互いのそれが僅かなでっぱりに引っかかってしまい、
遊戯は慌てて離そうとしたが、アテムはそれを制する。
「何で?」
「絡まったままで良い。」
「離れないから?」
「まぁそれもあるが・・・。」
今の俺たちに似ている、と、呟いた。
「?それって、書いてあることに関係あるの?」
「そうだな。」
「んー・・・バクラ君辺りなら読めそうだよね。聞いてみよう。」
「それは拙いぜ相棒。」
「え?」
「バクラが怒って引きちぎるかもしれないぜ?」
「えー!何で!」
そう体を離した瞬間に絡み合っていたそれは離れてしまったが、
アテムは遊戯のそれをとって、
「正解を言うと、相棒のこれには、俺の名前が彫ってある。
読めるヤツには相棒が俺の者だってわかるだろうな。」
「・・・あー・・・え?・・・あ、じゃあ」
キミのは?
「もう、感づいてるだろう?」
そう言ってもう一度さっきのように。
「相棒、俺は、誰のものだ?」
お前が俺のものなら、俺は誰のものだ?
―俺たちに似ている―
「えっ、あ、あ、あーーーーーーーーー!」
―大切なもの―
答えに気づいた遊戯が長く唸って、それから、
意趣返しの如く、さっきアテムがしたように、自分の首に下げられているそれをとって、
唇を触れさせた。
その時のアテムの顔は、今まで見たことが無いほど赤く染まって、何だか可笑しい。
「石にするくらいなら、俺にしてくれ。」
「それはボクのセリフ。」
だから今度は、もう一度。
熱に浮かれている主の如く、
互いの首に下がる名前は、再び絡み合っていた。
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よくあるカルトゥーシュネタを此処で使用。
闇表が一番長くなってしまった。
そしてキスしすぎです。
キスしてて引っかかることは物理的にないと思いますが、
駄文ではよくあることです(ないです)
バカップルめ!
(08.06.04)AL41 Happy Birthday! YUGI!