*座談会お土産駄文
(参加してくださった方はお持ち帰りしていただいてもおkです。
H2A(AL41)とだけ添えていただきたいです。リンクは無しでどうぞ。)


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*原作から5年後?くらい



ハンバーガー攻防戦



「今日はありがとう!」
「それはこっちのセリフだぜ。」


理由なんて何でもよかった、
兎に角顔を合わせて、言葉を交わして、
数分でもいい、独り占めにしたかった。

そんな願いは、最初、とてつもないワガママのようだったのに、
今となっては何も贅沢なことではないし、
無欲のうちに含まれるのだろうとさえ思ってしまう。

今は?

ああ、今は、
もう、手に入れて離したくないほどに、
求めている、欲している、想っている。

その気持ちの強さは、誰にも負ける気がしない。
そう、例え相手が、

兄であるとしても。



そこは高級な店ではない。
いたって普通の、誰でも入れるような店だが、
モクバが遊戯を呼び出した理由はこうだ。

「1人ではいる年齢でもないからさー。」

男は甘い物が嫌いだ、なんていうのは神話といっても過言ではない。
甘い物が好きなものは好きなのだ。

だが、どうにも、17歳の男子高校生が1人で入るのは、少々気兼ねがするらしく、
全額負担する代わりに、恥は折半ということで、
何気なく甘い物好きの遊戯を誘ったのである。
ただ、そんなものは建前で、
本当は遊戯と会いたいが為であった。

「おごりだから気にすんなよ?」
「えー?また驕って貰っちゃうのは何か悪いよ。」
「誘ったのはオレなんだぜ?当然だろ?それに、」
オレの方が収入上だしな!と、愛想よく笑う。
事実、
モクバは一流企業の副社長という立場であり、
どんなに遊戯が頑張ったところで、その財布に勝てるわけがないのだが、
「なんだかボクが年下みたいだ。」
そう、思ってしまうのは仕方が無いことだった。

前は、遊戯の方が辛くも身長では勝っていたのだが、
遊戯もあれから少しは伸びたというものの、
モクバは遊戯などあっさり抜かしてしまい、
高身長の好青年である。
兄を見れば背が高くなりそうなことなど眼に見えていたのだが、
兄とは異なり、愛想のいいお兄さんといえる。

「DNAだよ、DNA。ボクは元々こういうものなんだよ。
じいちゃんだってそんなに身長高くないし。」

モクバはそう不貞腐れる遊戯を見やるが、
コップを銜えている仕草は以前と変わらぬ愛嬌があり、
思わず笑ってしまうのだ、
相変わらず自分のことに気づいていないということに。

「遊戯は、ホントに変わらないな。」
「もう。少しは伸びたって言ったじゃん。」
「そうじゃなくってさ、なんか、こう、もっと根本的なところがさ。」
「それはキミも同じだよ。まぁキミは前よりはずっと大人っぽくなったけど。」

いや、変わってない、
寧ろ、昔よりも子どもっぽくなったかもしれない、
モクバは「変わったね」といわれるたびにそう思う。

昔は、2人で居られれば良かった。
ちょっとのワガママで我慢できた、
兄の想う人を何十分でもいい、独り占めできればよかったのだから。
でも、今は駄目だ。
どんなにあの兄が求めているのかを知りながら、
それでも欲しいと願ってしまう。

まるで、ショーウィンドウの前でダダをこねているガキだ。

タチが悪いのは、
決断さえ出来てしまえば、
そのショーウィンドウの中のものを手に入れられるということだ。
いや、手には入らないかもしれないが、
それを試すことが出来てしまう、手に入る可能性を手に入れられる。

だが、持てぬ勇気があった、それがワガママを許さない。

欲しい、だが、失いたくない。

その欲望の狭間に立っていると感じるとき、
モクバは本当に自分をガキだと心から卑下をする。


モクバは勇気を持てなかった。


遊戯を傍に置くことは高い確率で可能だった。
兄が、遊戯を手に入れればいいのだ。
そうすれば自分は遊戯の義弟として一緒に居られる、
だが、
モクバには、兄の隣で笑う遊戯を平常心で見守る勇気がなかった。

では、遊戯を奪えばいいのか?
兄であれば自分の気持ちを知っても奪うことだろう、
だが、
モクバには、兄の気持ちを裏切る勇気がなかった。

愛するものと尊敬するもの、
それらを秤にかける勇気がなかった。

では、永遠にこのままで居ればいいのではないか。

そう思わないこともなかったが、
こうして、遊戯を前にすれば、
決着をつけたくなる。

「どうしたの?モクバ君?」

首をかしげる紫の瞳に覗かれて、
漸くモクバは目の前にチョコレートパフェが運ばれてきたことに気づいた。

「あ、悪ぃ悪ぃちょっと考え事ってやつ。」
「そうだよね。モクバ君も色々仕事とか悩みとかあるんだよね。」

ボクは何にもないよ、子どもだからね、と情けなさそうに笑いながら、
チーズケーキを口へ運んでゆく。

「んなことないぜ?」
「キミに言われても信憑性がないよ。」
「んー、じゃあ、先輩に相談な?」
「そうだん?」

ボクに答えられるかな?と遊戯は苦めの紅茶を飲みながら、
いいよー、と笑う。

「世界に1つしかないハンバーガーがある。
それは二度と手に入ることがない超レアなんだよ。」
「いいね!」
「で、それが食べたい?」
「もちろんだよ。」
「けど、他にも食べたがってる人が居るんだ。
それを欲しいなって思うよりも前から。」

自分が遊戯を想いはじめるよりも前から、
遊戯を想い続けている。

「そんな時、遊戯ならどうする?」

食べてしまう?
譲ってしまう?

「半分こっていう手は無いの?」

それは、
ずっと今のようにあるということではないのか?
2人で共有しながら、
しかし全ては手に入らない今のように。

「やっぱ、そうなるのもんなのかなー・・・。」

それでいいじゃないか、
それが一番平和じゃないか。

なのに、何故不満なのだ?

少々腑に落ちなさそうなモクバを見て、
遊戯が言葉を続けた。

「けどさ、何で最初から食べたがってる人は、食べちゃわないんだろうね。」
「え?」
「だって、そんなハンバーガーだったらさ、皆、
特にハンバーガー好きは食べたいって思うじゃない。
さっさと食べちゃえば、ばれないのに、なんでだろうね。」

本当に、何故だろうか。

「2人で半分こできたら良いのかもしれないけどさ、
悩んでる間に、3人目の誰かが来て食べちゃうかもしれないし、
悩みすぎてると、ハンバーガーは腐っちゃうかも知れないよ?」

遊戯が、誰かに、
兄でも自分でもない誰かに盗られてしまう?

欲しいのであれば、さっさと奪ってしまえばいいのに、
兄はそれをしなかった。

何故?


そう考えた時、モクバは恐ろしいほどに利己的な解釈へとたどり着いた。


それは兄の過失だ、と。


あの一見完璧な兄の過失。

兄はこの5年間に遊戯を奪うことが出来なかったのだ。
無理やりであればできたのだろうが、
遊戯を大切にするあまり、一手が出なかったのではないか?
いや、出さなかった、出せなかった。

此処までモクバの気持ちが肥大してしまったのは、
一重に兄が手に入れなかったからではないか。


あの人はハンバーガーを眺めていただけだ。
食べる気はあるのか?ないのか?

そんなことわからない。
ただ、

腐る前に食べなければ勿体無い。


「ふーん、そっか、そういえばそうだよな。」
「ボク、役に立った?」
「ああ!すげぇ助かったぜ。」

よかったーと言いながら再びフォークを手に、
チーズケーキを攻め立ててゆく。

「・・・なぁ、遊戯。」
「ん?」

僅かに驚いた様子で視線をあげると、
真面目な顔をしたモクバが眼に入る。

「(モクバ君なら、彼女くらい出来そうなのに。)」

副社長という肩書きがなくたって充分に人気がありそうなモクバが、
いつも自分をこうしてデザートに誘ってくれるのが、
遊戯は口にしないまでも不思議に思っていて、
ふと遺伝なのかな?と思いついては笑いを堪えた。

「?」
「何でもないよ。それで?」
聞きながらチーズケーキを一口。

一口一口幸せそうに食べる、遊戯に、
モクバはもう一度改めて決意した。

「オレさ、予言してもいいか?」
「何を?」

「来年、遊戯には恋人が出来るぜ。」


「んんーっ!?」

思わずむせそうになりそうなほど驚いて、
慌てて紅茶を飲みながら、言及する。

「何言ってるかわかってるの?」
「ああ。」
「もー・・・からかってるんでしょ。」
「違うぜ?本気。」
「本気?ホントに?」
「本気も本気。超本気。マジだぜ?」


1年。
18になるまでに。

モクバは決意したのだ。
この1年で猛攻をかけると。
ハンバーガーを食べようとするアクションを起して、
兄の出方を見てみることにしたのだ。
兄が慌ててハンバーガーにくらいつこうとして、
さらにハンバーガーが兄に食べて欲しそうであれば、諦める。

だが、兄がモクバのアクションに気づかないのであれば、
ハンバーガーが兄に何の感情も抱かないのであれば、

その時は。

「待ってろよ、遊戯。」
「?」
「いや、オレがあと1歳年上だったらなー・・・ってさ。」
「?」

だが、1年の話だ。
長いようだが、
遊戯を手に入れるにはあまりに短い。

しかし諦める気などないのだ、
今まで何に置いても勝てなかった兄に、挑戦する最後のチャンスであり、
絶対に負けられない戦いが始まる。

絶対に負けない。

モクバは人知れず誓った。
チーズケーキを頬張る遊戯の左手に、
1年後の姿を思いながら。





H2A(AL41)

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これが世に言う1年戦sゲフ・・・ガンダムファンから右ストレート。

まぁ、ということで、
座談会で話題になったネタ第二弾。
モク表のつもりだったんですが、
モク→表でした・・・

モクバには典型的な高校生になって欲しい気もしますが、
まぁ無理でしょう(希望はないのか?)
あんな環境じゃなぁ・・・




(08.05.08)AL41