*囁きから生まれた駄文その3?

その癖に、相当趣味が入っているわけですが。

*他の駄文とはだいぶ設定が異なるのでご注意ください。

*社長、表、王様 三角関係・・・?

*王様がストーカーっぽいです
*王様が変態っぽいです
*王様が、一寸大変です
*王様が激しく妄想家です
*王様カコイイ!な方は帰りましょう
読まれた後の責任は一切取れません

*社長と王様がタメで社会人、表は年下






或る少年の物語




ついこの間の話だ。

住んでいるマンションの向かいに立っている団地に、
1人の少年が引っ越してきた。

家族と一緒には暮らしていないらしい。

アテムは執筆中の原稿を他所に、そんなことを考えながら様子を見ていた。



何となく容姿が似ているので目に付いたのが最初だが、
眉を八の字にしながら引越しの業者と話していたのがあまりに印象的だったから、
尚のことよく覚えている。

小柄だが、1人暮らしおそらく高校生だろう。
でなければ、流石に1人暮らしは許されまい。

此処らへんはまだいいが、少し離れたところには少々治安の悪い高校がある。
だが彼が朝走ってゆく方向を考えると、他の高校だと思われる。
ただ、突然の転校だったらしく、制服はどちらの物でもなかった。
案外どちらの高校でもないのかもしれないが。

そんなことを思わず考えてしまうのは、職業病なのだろうか。

基本的にアテムは自由業だ。
そこそこ売れ始めた為に、原稿の量は多いのだが、
それでも余り束縛されていない。

その為生活習慣が乱れ、
日本に住みながらイギリス時間で生活していたこともあった。
お陰で体調を崩し、散々叱られたりもしたのだが。

だが、最近はまるで会社員のような生活をしている。
そうでなければ彼が出かける様子が見られないのだ。

彼が来てから、窓は風景ではなく人を映すようになっていった。

名も無き少年は、毎朝団地前の花壇を覗いていく。
今は丁度黄色い花・・・福寿草か?
生憎判断は出来ないのだが、それらを眺めてから、
水遣りをしている管理人や、イヌの散歩に出ている人とすれ違えば、笑顔で挨拶をする。
声は聞こえないが、
姿同様に、少年らしい声をしている気がした。

まだ声をかけたことも無い少年。

だからこそ、か。
アテムの好奇心と想像力を酷くかきたてた。


例えば、
自分の小説に彼を出すとしたら、どうしようか。

知りえる情報は本当に僅かだが、
そこから彼を作り上げていく。

少年は、高校一年生。
まるで中学生かのような相貌で、
心優しいがそれ故にイジメを受けやすいような少年。
父は海外で仕事をしていたが、病気になり、母やは
持病で心配のある父について行く必要があると思うも、
息子は日本の高校に通いたいという。どうしようか悩んでいたが、
一人っ子で気弱な少年が、自分は1人で生活できるから、
お父さんと一緒に行っていいよ、といってくれた。
少年は1人暮らしを始める。

しかし、

とまぁ、此処からアテムの本職が混ざり、ホラー気味になってしまうわけだが、

1人になってから今まで起きた事などなかったのに、家では怪奇現象が起こり始める。
理由はわからないし、助けを得ることもできずに、
引越しへ至った。

そこで、アテムの家の前の団地へやってくることになる。

だが、引っ込み思案の彼は高校で中々友達が出来ない。
その上、引っ越してきた理由が「怪奇現象」などと知られてしまって、
非常に肩身が狭い。
とはいっても、気のよいクラスメイトが彼を庇ってくれたりして、
そう、例えばオカルト嫌いな生徒は、『それなら引っ越しても仕方がねぇよ』と擁護してくれ、
一方反対にオカルト好きな生徒は、それに興味を持って接するようになっている。

やっと友人が出来て、平穏な生活が戻ってきたと思うのもつかの間、
まるで少年を追うように、妖魔の手は伸びてくる。
それをいうことが出来ない少年は、
友人たちと距離を置こうとするも友人がそれを許さず、
仲間と共に怪奇現象に挑む


・・・と。


子供向けにしたって少々陳腐だが、主人公としては中々ではなかろうか。


原稿に起す気の無い1つの物語がアテムの中に生まれ、
それは1つの世界を持って動き始めた。
書斎から見える窓の中の物語、その世界。

その世界で少年は泣いたり笑ったりしている。


アテムは何故そんなにもあの少年が気になるのかわからなかったが、
生憎そんなことを考える気も起きないほどに、彼を気にしていた。

そして、その意識は、
愛着を越え、執着になっていたのかもしれない。






少年の物語は進むものの、筆が進まない。

ならば、少年の住む世界へ自分も踏み込んでみようでは無いか。

アテムは、自分はきっと、
噂を聞きつけてやってきた売れない小説家なのだろう、と
自分にまで役を作ってしまっては思わず笑った。

昼間、外は割りと閑散としている。

こんな時間に外を歩いていては、無職とでも思われそうだと笑いながら、
まめまめしく働く宅配の青年や、鞄を引きながら歩いている老婦人なんてものを眺めていた。

少年の物語の舞台。
ああ、悪くない。

風景、というのはある程度1つの色を持っている。
だから、異色のものは目立つのだ。

黒塗りの外車。
スモークがかかっている。

彼の中に該当する人物はそれなりに居るのだが、
車のナンバーと車種を見て、予想を立てる。

嫌なやつしか出てこない。

会いたくないので、さっさと去ろうと思ったのだが、
そういう時に限って出会ってしまうのが腐れ縁とでもいうのだろうか。

「やっぱり海馬か。」
「なんだ、そのやっぱりというのは。」

平凡で在り来たりの、しかし少年の住む特別な町に、
異色な男。

海馬瀬人といった。

背は高い、顔は割りと端麗だが、
性格だけはだいぶ酷い。
一流企業の社長を務める海馬と、そこそこの物書きのアテムがであったのは、
もう数年前になるのだが、
舞台はカードゲームの決勝だった。

その時の勝者は。

「こんな町に社長さんが、なんのようだ?」
「別に貴様に再戦を挑むつもりではない。」

アテムに負けてからというものの、海馬は事あるごとに勝負を挑んできた。
無論、アテムはそれを引き受けては負かしていたのだが。

「知り合いがこっちに来ているというから、
丁度時間が空いたので来ただけだ。」

手には缶コーヒーが握られており、
仕事詰めでやっと時間が空いたのだろうということは推測できた。

「海馬の知り合いが、こんな町に住んでるのか、意外だな。」

豪邸に家政婦を何人も雇って生活をしているような男なのだ。
その上、酷い人間不信だった上に、元は孤児というのだから、
知り合いなんてものが居るのかも怪しい。

さては、とうとう女でも出来たのだろうか。

そう思うと言及してやりたくなるが、
こっちも暇じゃないんでな、とさっさと分かれてしまった。
ややこしいことに巻き込まれたくは無いし、


そろそろ、あの少年が帰宅する時間だった。

野菜ジュースを買って自宅へ戻る。

そしていつもの様に書斎から窓を、
少年の物語の世界を覗く。

暫くすると少年は帰って来た。
今日もまた1人だったが、
何時もより足取りが軽いように見える。

学校で楽しいことでもあったのだろうか。

彼の楽しそうな様子は、話をしたこともないアテムでさえも嬉しくさせるような、
不思議なものだ。

窓から見える世界。

自分しか見ていないと、根拠無くそう思っていた。

たしかに、それはアテムの世界だった。
だが、

アテムが介入できる世界ではなかった。


少年はいつもの様に買い物へ行くのだと思っていたのだが、
服装が一寸違う。
よそ行き、であろうか。
シンプルではあったが、よく似合っていた。

団地前まで出てくると道路をキョロキョロしている。
が、ふと鞄をガサゴソと漁ると忘れ物でもしたのだろうか、
一度部屋へ戻ろうとする。

その時に、

黒塗りの外車が。

彼の世界の舞台である、この町の色に不釣合いな。


アテムは、その現実を認めたくは無かった。

車から降りてきた背の高い男、
主人公の少年にさえ名前は無いのに、その男に名前はある。
海馬瀬人。

その存在に気づいた少年は、ふと振り向いて、
それから、
海馬に駆け寄った。

とても、楽しそうに笑っていた。
何時も見せるものではない、本当に、もっと、楽しそうに。

海馬もまた嬉しそうな顔などして、
社長自ら少年を車へ迎え入れる。
少年は少ししりごみをしながらも甘んじて車に乗り込み、
海馬もまた乗り込んで、車は走り去っていった。

アテムの世界。
アテムの見ていた少年の物語の世界。

異色の男が現れて、少年は物語から消えてしまった。
その瞬間に、この世界は色を失ってしまった。


主人公の居ない物語。
白黒の世界。

生憎それはアテムの好みではなかった。
楽しみにしていた物語が途中で打ち切られた気分だ。

再開させるには、

少年が必要だ。



アテムは己の持っていたグラスが欠片となり、
彼の右手に刺さっていることに気づくまで、

白黒になった世界と、消えた黒塗りの外車を睨みつけていた。








-------------------------------------------


書くたびに泥沼なんですが、
一体なんでですか先生。

遊戯って名前すら出て無いぜ。

と、いうことで、頂いたネタで駄文第3弾でした。


王様の妄想壁。

・・・恐るべし。

完全に蛇足なんですが、
アテムの考えていた少年の物語は、
彼が持っていたじいちゃんの形見が異界と繋がっていて、
仲間と共にその異界へ飛び込んでゆく、という話になります。
ファンタジーというか、どちらかといえばラヴクラフト的な。


王様が気持ち悪いって?
え、へへ?
書いてる本人が変態なので許してあげてください。

・・・逃っげろー!



(08.03.12)AL41