壁越え
遊戯はよく、海馬コーポレーションへ訪れる。
目的は、
本来1つだったが、
最近では2つと言うべきかも知れない。
元々の目的である、海馬瀬人との面会は、
そう思うようにはいかない。
そこで登場するのが、
彼の誇る出来のよい弟である。
「あ、モクバ君!」
遊戯が手を振り駆け寄る先にモクバまた手を振って待っていた。
遊戯の二つ目の目的がこれである。
モクバと遊戯は仲がいい。
人間不信気味だったモクバが最初に心を許したアカの他人、
それが遊戯だったといっても過言ではない。
それには色々と理由や由縁があるのだが、
それは省略しておく。
いずれにせよ、海馬もまたそれを好意的に受け止めていた。
海馬としては、仕事とはいえ遊戯が待ちぼうけになるのは、
少々気が重いが、モクバと遊んでいるのであれば、ある程度有意義といえる。
何より遊戯は自身の恋人であり、
親しくしていく上で、弟と恋人の仲が良い事は悪いことではない。
お陰でモクバは何の疑いなく、遊戯と遊ぶことが許された。
それは、モクバにとっても非常に好ましかった。
「なんだ、何時もよりおせーじゃん。」
「一寸先生に捕まってさー。」
へへへ、と笑いながら頬をかく仕草は、
モクバにとっても非常に魅力的だ。
「遊戯の成績が悪いからじゃねぇの?」
「えー、モクバ君までそんなこと言うの?もう。」
前よりはよくなったんだよ、と言い訳をするのだが、
生憎そんな言葉は聞こえず、
膨れている遊戯にばかり見入ってしまう。
とりあえずモクバは遊戯を自室へ誘う。
事情をしらぬ人が見れば、
小学生が2人歩いているようなものだ。
2人の身長差は11cmはあるものの、
遊戯が鞄を背負っているために、より小学生に見えるのが原因か。
だが、中身は2人とも小学生ではない。
無論1人は一応高校生なのだが、
もう1人は副社長という肩書きを持っている上に、
兄の恋人だと知りながら、
奪い去る機会を見計らうほどの策士である。
彼を部屋に招き入れる時、
モクバは甘い優越感に浸ることが出来る。
兄の仕事が終わるまで、遊戯はモクバのものだった。
「今日は、遊戯にやってみて貰いたいものがあるんだ。」
そう言って不釣合いな机の引き出しからゲームを取り出してくる。
「なに、それ?」
「ライバル社の出したゲームなんだけどよ、やる時間とかなくってさ。」
遊戯はゲームが好きだ。
名前そのものだ。
ゲームと一言言えば、目を輝かせて興味を示す。
「(可愛い顔するよなぁ。)」
・・・小学生に可愛いと思われる高校生というのは、どういうものなのか。
とりあえず取り出して、
遊戯はゲームに釘付けだ。
モクバはその遊戯に釘付けなのだが。
しかし
如何せん、モクバの恋には、グリーンモンスターレベルの障害がある。
兄。
それはモクバが恐らく最も誇るもの。
今までは最高の切り札だったのだが、
今度は障害になってしまった。
グリーンモンスター同様の身長の話ではなく、
全てのステータスで比べたところで、勝っているものなど何もないのだ。
子供の頃の誓いをそのまま実行した兄。
全てを手に入れられる。
兄の下に集結した、金、権力、名声。
最強の壁。
いや、塔とでも言うべきだろうか。
そしてその塔の上最上階に住んでいるのが兄の瀬人。
そう考えると、
モクバにとっては
さながら遊戯は、塔の上のお姫様だ。
見上げて、遊戯が顔を出した時にだけしかあえない、
高窓の令嬢。
モクバの届かぬところで、
兄は遊戯を独占し、愛でているのだ。
そこへ、いきたい。
辿り着かなければ、戦えない。
可能であるか?
ああ、可能だ。
グリーンモンスターにホームランを打ち込む人間が居るのだ。
高さと距離があれば良い。
そう、越えればいい。
あの壁もとい塔を越えてしまえ。
今、絶対的な場所に立つ兄。
兄を目標に定めるということは、
兄を超える覚悟をするということ。
自分にはまだ時間がある、可能性がある。
ジワリジワリと忍び寄れ!
「うかうかしてると、奪われちまうぜ?」
「!?」
「いや、なんでもないぜ!」
突然発せられた独り言に驚く遊戯には適当に言い訳をつけておく。
「で、遊戯、どうだ?」
「んー、そうだなぁ。」
なんでもなかったように遊戯に問えば、向こうも何にもなかったかのように答える。
「悪ぃな、何か使っちゃってるみたいでよ。」
「いいよ、ボクも楽しいし。」
「今度なんか奢るぜ?」
社長が留守の間に。
「一緒に甘いもんでも食べに行こうぜ?」
2人きりで。
「え、ホントに?って、ボク小学生に奢られちゃうの?」
「小学生じゃないぜ、KCの副社長に奢られるんだぜ?」
「ホントだよ、凄いよねー。」
遊戯が如何にそういおうとも、副社長では社長に勝てない。
いつか、社長を越えてやるぜ!
トントンっとドアが叩かれ、
返事をする前に開かれれば、出てくるものは高い壁。
「遊戯、来ていたか。」
「あ。うん。モクバ君が遊んでくれたから。」
「モクバが、か。」
「え?」
「ふっ、お前らしい。」
今は我慢の時。
クスクス笑われて、不思議そうな顔、無論可愛いのだが、
その顔、
それは兄のもの。
オレの前でそんな時間は許さないぜ?
「兄サマ、この間のゲームなんだけど、」
「ああ。・・・今やっていたのか。」
「まぁね。遊戯がやってくれたんだ。後でまとめておくよ。」
「頼んだ。」
それだけ言うと、兄は当たり前のように遊戯を連れて去ってしまう。
遊戯は手を振って消えた。
令嬢の残り香だけが部屋に残る。
「今のうちだぜ?兄サマ。」
初恋は実らない?
そんなのジンクスだって、
オレが証明してやるぜ!
高い壁に挑む。
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コメから生まれた駄文、その2。
海表になってるかなー・・・
そのつもりなんだけどなー・・・(自信0)
グリーンモンスターは、球場のレフトとかにある無駄に高い壁のことです。
アメリカとか、福岡ドームとかで言われたりします。
モクバは若いから可能性が一杯ありますね。
個人的に、
モクバが17歳くらいになってると、非常に美味しいと思います。(?)
きっと兄よりも愛想のよい、そしてより黒い好青年になっているでしょう。
確か5歳差くらいだから、
表は22くらい?
包容力の出てきた17歳モクバに翻弄される22歳遊戯。
社長が居ない時とかを見計らって、色々と策に出るのでしょう。
・・・・・・・・・・・・(゚Д゚)ウマー(アホス)
(08.03.07)AL41