雪の向こう
「雪の為、出発時刻を遅らせざるをえません。」
雪が止む見込みが無いという。
海馬は窓から空を見上げた。
雪の夜は妙に明るく、
空を仰いでも時間が良くわからない。
腕時計で時間を確認すると、向こうはまだ起きてそうだった。
今日帰り、明日の昼には久しぶりに顔を見る予定だった。
此処最近すれ違いが多く、まともに顔を合わせていない。
互いの忙しさ、俺は専ら仕事で出張、
遊戯は試験期間に入る為、外には出して貰えなかったのだ。
だが、漸くひと段落つくというので、俺から連絡を入れた。
遊戯は快くそれを受入れて、
それで明日、会う予定になっていたのだ。
出来れば今すぐ帰りたい。
雪如きに邪魔をされるとはな。
忌々しい。
煩いテレビニュースはさっきから同じ映像ばかりを繰り返していて、
「新幹線が止まって帰れない」という家族連れを俺はもうすでに4回みた。
うわ言のように「外出の際は・・・」と同じ注意を繰り返し、
何時止むのかわからないとしか言わない無能なキャスターには腹が立つ。
そもそも雪の映像を見ているとそれだけで体が冷えそうだ。
そらで描けそうな程みた衛星写真から判断すれば自宅の方も雨が降っているらしい。
或いは、雪かもしれない。
遊戯は何をしているのだろう。
ネコのように布団で丸くなっていると思うが、
案外凡骨共と一緒イヌのように雪と戯れているかもしれない。
凡骨の名を思い出しただけで俺は苛立ち、
0時を回っていたが、思わず電話をかけていた。
コールがもどかしい。
プツリ、という音の後に、
甘い声が聞こえる。
『海馬君?』
「遊戯か?」
『勿論だよ。だってボクの携帯だもん。』
「それもそうだな。お前以外が出たらただでは済まさんがな。
こんな時間にすまないな。寝ていたか?」
『全然寝てないよ。布団に包まってゲームしてた。』
その姿は容易に想像できておかしかった。
『でもどうしたの?あれ、お仕事終わった?』
「ああ。」
会えないかと約束をした時のお前の、あの幸せそうな声を思い出すと、
気が重くなる。
だが、伝えないわけにはいかないだろう。
「ただ、雪が酷くて帰るのが遅れそうだ。」
『海馬君のところも雪降ってるんだ。童美野町も凄く降ってるよ。屋根も真っ白。
うちからKC見えないもん。』
寒いね?大丈夫?
温かい言葉が痛かった。
「それで、明日は会えそうもない。」
『雪なら仕方が無いよね。ボクはもう暇だから、海馬君の都合さえ良ければいつでも会えるよ』
「そういう事を聞くと、なおのこと今すぐ帰りたくなる。」
『ダメだよ。わがままなんだから。』
「だが、お前は寂しくないのか?」
『え、んー、寂しいは寂しいけどさ、
キミと同じ雪を見てるんだって思うと、何かちょっと安心したよ。』
離れてても同じ世界に生きてるんだなぁ、ってさ。
その言葉は遊戯が言うと重かった。
あの世へ帰ったという男は、
同じように雪を見ることも出来ないのだから。
ふとした瞬間に遊戯を悲しみへ突き落とすあの男が非常に憎たらしいが、
それを妨げるのが俺の役目だ。
今やヤツは悲しませることしか出来ないが、俺は喜ばせることができる。
「俺は雪をみて喜べるほど出来た人間ではない。
こうして電話をしていても未だ物足りない。
早くお前に会いたい。」
『もー、だからってダメだよ?無理に“構わん、飛ばせ!”とか言って
磯野さん困らせたら。大体さぁ、飛べないのは事故を起さないためじゃないか。
事故になったら、海馬君に会うことも出来ないんだからね。』
俺はお前に会えないだけでこんなに切羽詰っているのに、
俺の心配をしているとはな。
嬉しい一方で、お前の余裕がうらやましいほどだ。
「それもそうだな。それに俺も帰れば暫く出かける仕事は無い。会おうと思えばいつでもあえる。」
『ほんと?えへへ、よかったぁ。』
「一日お預けを食らった分、たっぷり食い尽くしてやるから、覚悟しておけ。」
『え、ちょ、ちょっと、ねぇ、なんでそういうことになるのさ!』
からかえば何時もの反応。
いつもの表情を描けた俺は酷く安心し、からかわれ怒る遊戯を宥めながら、
別れの言葉を告げて切った。
再開が一日伸びるのは辛いが、
その分一日お前の為に、いや、俺の為に時間を取ることにしよう。
テレビに目をやるとさっきの家族のインタビューがまた流されていた。5回目だ。
天気キャスターは同じことしか言っていない。
だが、衛星写真だけは変わっていて、
明日の午後には帰ることができそうだった。
窓の外は相変わらず薄ら明るく、
雪は絶え間なく降り続いていた。
顔さえ合わせられない遠くの恋人を想いはせながら
ただ、早く止むことだけを願った。
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背景素材:
[MONO]
まともな海表。
まとも、だよ・・・ね?(誰かへすがるおもいで)
雪が降るというので、思い立って書いてみただけです。
どうしても王様は出てくるんだよなぁ・・・
台風とか大雪で困る人か、年末年始・長期休暇の旅行者にインタビューしてるけど、
同じ局で本当に何度も同じ映像を流すから、
顔見た瞬間に「ボーナス使ってスノボーに行く人だ」とか、「宮城県に帰る人だ」とか、
あてられるようになったりする。しません?(そんなにテレビを見るな。)
さらに、布団に包まってゲームとか、ごめん遊戯、それはうちだ。
コタツでゲームとか、ポテトチップスは箸で食べるとか、
気づいたら右手で食べながら、左手で町漁りとか、ごめんそれもうちのことだ。(未記述)
(08.2.3)AL41