Ep.4-05




「本当に小さな頃から一緒なのね。」
「ああ。俺が相棒に初めて会ったのは4歳の頃だ。」

親離れにちかい感覚を知り、余りに意気消沈していたアテムを何とか蘇らせようと、
仲間達は色々話を聞くこととした。
ようは、気を紛らわせようとしたのだ。

「驚いただろうな。あんなに似てりゃ・・・。」
「ああ。最初は嫌悪したくらいだ。だが、2日目にはすっかり打ち解けた。
今と殆ど変わらないくらいにな。」

あの頃の遊戯は鮮明に覚えているが、今も大して変わっていない。
いや、根幹が全く変わっていない。

遊戯と小さな頃から一緒だということは、アテムにとって誇りににた感覚を抱かせた。

「あの頃の相ぼ・・。」
「どうした?」

アテムがふと外に目をやると、
巨大な瞳がコチラを見ていた。

「はあああああああ????」
「なんだこれ!?」

クラスは嘗てない騒ぎとなった。

とりあえず机の下に隠れて、その目と目が合わぬよう必死になっていた。
「おい、アテム、これは、」
「これは、異界の生き物だ。」
「異界!?」
「俺も、実際に見るのは初めてだ。だから予想でしかないんだが・・・。」

アテムはゆっくりと歩み寄っていく。
本田はそれにびびりつつもついていって、
杏子は失神していた城之内の面倒を見ていた。

「だが、何でだ・・?まさか学校に、時空の狭間が・・・。」
「ジクウのハザマ!?・・・ってなんだ?」
「つまり、この世と別の世界をつなぐ扉だ。扉の先があの世だったり別世界だったりする。」
「あの世って・・・まさか。」
「ああ、もしかしたら、学校の怪異はそれが原因なのか・・・?」

瞳はゆっくりと上昇し、去っていった。
しかし次に、触手のような足がぬるりと窓を探る。

「本田君、窓から離れろ!」

慌てて引き下がると、
すぐに、僅かに開いていた所を見つけて器用に侵入してくる。

「なんだよこれ・・・。」
「多分足だ。」
「いや、そういうことじゃなくってだな・・・。」

侵入をしたそれは、これといって何をするわけでもなく、
ただ一度、窓際の机に触れてから、引っ込んでいった。

そこは遊戯の机だった。

そしてそのまま窓を這い、去ってゆく。

「なんだ・・・??」

さっきから奇妙なことばかりで思考回路が止まった本田を他所に、
あの目を思い出すと胸騒ぎがする、
「相棒が心配だ。」
「ちょ、あ、アテム!?」
突然走り出し、教室を飛び出そうとしていた。
しかし、彼がドアノブに手をやるのと同時に、

「ただいまー!」

ドアが開き、遊戯がそこに立っていた。

「相棒!」
「あ!もう一人のボク。ほら、ボクちゃんと行ってきたよ。」

空のゴミ箱を見せるのだが、
アテムが真っ青になっているのは、違うところに原因があるようだ。
それもそのはず。

完全に肌蹴たシャツ。
頭からびしょ濡れ。
タオルを被っている。
胸に鍵が無い。
右の頬が赤い。
後ろには申し訳なさそうに彼の使い魔が立っている。





「あ、相棒おおおおおおおおおおおおおお!!!!!」



廊下の先まで、アテムの叫び声が響き渡って行った。






直る遊戯。
不機嫌なアテム。



「事情を説明して貰おうか。・・・と言いたいところだが、それよりも先に、
家に帰って風呂に入って体を温めることが先決だ。今は疲れもたまって風邪を引き易いだろう。
だがその前にそんな格好で相棒に外を歩かせられるほど俺は出来た人間じゃない。とりあえず着替え」
「ちょ、一寸待ってよ、落ち着いてよ!」
「俺は落ち着いている。冷静だ。今なら1000ピースのパズルを5分で解けそうなほど落ち着いている。」

確実に落ち着いていないのだが、
遊戯はあまり構うことなく、とりあえず自分の机に向かう、と。
机がびしょ濡れである。
「!?」
「ああ、それは、」
「なんか、さっき良くわかんねぇ水の“足”が“ぶわあああ”って入ってきて“べしゃん!”てな。」

びしょ濡れの机を見ると、キラリと何かが光った。
「これ、ボタン!」
引きちぎられた時のボタンである。

「届けてくれたんだ。」

何も言わぬあの神が、何気なく見せてくれた心遣いに、遊戯の胸は温かくなる。
「良かった。怒ってなかったみたい。」
鍵をみて、ニッコリ笑った。

「そう、アテム、」
「なんだ?早く着替え」
「鎖、切れちゃったの。」

胸に下げられていたはずの鍵、確かに鎖が切れている。
「直してくれると嬉しいな。」
「ああ。何度でも直してやるぜ?だからそれよりもさきに着替えて、」
「着替えるって言ってもボク着替えなんか持ってないよ。」
「なら俺と着替えろ。」
「えー!?そんなことできるわけないじゃないか。」

そんな押し問答をしていると、
ドアギリギリの背丈の男が教室に戻ってきた。
「・・・・一体何があったんだ?」
「あ、海馬く・・・えっ?」
振り向いた一向が目にしたのは、
びしょ濡れになった携帯電話を持ち、微妙に袖が濡れている海馬であった。

「け、携帯電話・・・」
「これは大丈夫だ。防水加工は出来ているし、重要な情報も入っていない。」
「よかったー・・・。」
「さすがKCだな・・・。」

妙なところに感心してしまった。

一方海馬が目に付いたのは、やはり
「どうした、酷いな。」
びしょ濡れの遊戯である。

「そんなんでは風邪を引く。」
「海馬も言ってるぜ?」
「でも、大丈夫だよ!まだ夏だし、暑いし、涼しいくら、くしゅん!」
とダメだと体が訴えている。

「校門のところに迎えを呼んでいる。乗っていけばいい。」
「助かるぜ。」
「でも、悪いよ・・。」

そういいながらも、流石にアテムに抵抗はしていられず、結局乗せて貰うこととなり、
城之内が気づいたことを確認して、二人は海馬の車に乗り自宅へと戻っていった。

「海馬に乗せてもらえてついてたぜ。」
「よかったね!」

海馬の株が上がるのは気に食わなかったが、
濡れたシャツを着た遊戯を公衆の面前に晒すことを回避できたことは大きい。

風呂で温まっている遊戯の為に紅茶を入れながら、
「俺が死ぬかと思ったぜ。相棒は無防備にも程がある・・・。」
独り言を漏らす。

「さて・・・。」

千切れてしまった鍵の鎖を取り替えながら、ソファに深く腰掛けて、一息付く。
これからアテムには遊戯の事情聴取が待っている。
多分そこにも問題と危険が潜んでいるだろうことは解っている。
しかし、それだけではない。

アテムは鞄からあの写真を取り出してきた。
それでたっぷり遊戯をからかってやろうと思うのだ。
今日のような日がこれから続く、精神疲労に満ちた毎日のなかで、
それはかけがえのない息抜きの時間だから、たっぷり甘受してやろう、
笑った。






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