長くなったため、一部を前に追加しました。
大したシーンではないですが、気になる方はどうぞ→03
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地下。

一言に地下といっても、そこは豪邸の下、
「一部を除いて、いまは殆ど使っていない。俺もあまり来たことが無いからな。」
本当にそうなのであろう。
辺りは洋館ならではのカビ臭さがあり、
廊下の暗さと紅い絨毯が、まるでホラーゲームの様に続いている。
「・・・自分の屋敷なのにか?」
城之内の疑問は当然のものだった。
だが、海馬は答えたくなかったようで、濁した。
「俺のものだが・・・そう前の話ではない。」
「どういうことだ?」
「まぁ、今はそれどころではない。」
以前の遊戯の情報から、楽しい話ではないことくらいわかっていたアテムは、
城之内をそれとなく制して、辺りを見回した。

暫くゆくと、開かれた扉の前で1人倒れているのが見える。

「だ、だいじょうぶかよ!?」

慌てて駆け寄り抱き起こすと、なにやら突き飛ばされたらしいことをブツブツと言っており、
とりあえず、人を迎えに寄越した。
「つまり、モクバは此処にいたが、移動した、ということか。」
「そうだね。でも、大丈夫。場所はわかってる。」
「何!?何故だ!?」

遊戯は海馬の問に応じず、またあの屋上のときの様に空に向かって話しかけている。
「それで、何かわかった?・・・そう。うん、大丈夫。」
案内して貰える?

すると遊戯は、何かについていくようにふらふらと、先を行った。

「遊戯!?」
「問題ない。付いて行く。」

アテムは何時ものことだと言わんばかりの冷静さを保っており、
不可解な顔をしている海馬、その後ろに雰囲気に怯える城之内と杏子が続いた。

暫くゆくと、遊戯はある扉の前で立ち止まり、「ありがとう。」と礼を述べた。

扉は半開きで、中の明かりが僅かに漏れているが、
電気という電気をつけていない。
何か、ランプのような明かりであることは推測できた。

「・・・始めるか。」
「うん。」
目を瞑り、何かを瞑想している遊戯の様子が
普段と変わったのが解った。
違う。

何か、

まるで人ではないようだ。

「危険だと判断したら、強制的に俺が割ってはいる。」
「解ってる。」

確りとした返事を聞くと、アテムはくるりと振り返り、
「相棒が部屋で開放している間は、一切相棒の陣に立ち入らないようにしてくれ。
それに、相棒の気が散ったり、相手の気が逸れないよう、大声も出さないようにして欲しい。」
「お、おう。」
「特に海馬、気をつけてくれ。」
「・・・解っている。」

確かに返事を受け取った後で、アテムは再び前に向き直った。

「・・・行くよ。大丈夫、怖くなんかない。」

遊戯は、そっと扉を開けた。
アテムはドアのところで後ろの人間の介入を拒むように、立っているだけだった。





薄暗い部屋。
机の上のランプに明かりがついていて、
床がどうなっているのか判断できない。
だが、

「誰?」

その声は、モクバだった。

遊戯は一歩、また一歩踏み入り、
しかし電気は付けずに、警戒させないよう、そうっと歩み寄る。
机の上のランプをそっと取り上げて、
すぐ近くの床を照らすと、少年の姿があった。

「こんにちは。初めまして、だね。」
「・・・誰?」
「ボクは、遊戯。キミは?」

黒髪少年はゆっくりと顔をあげ、遊戯の顔を見た。
その目には凶暴性などなく、口をモゴモゴさせて言った。

「ヨシュア。」


海馬は思わず声を上げそうになって堪えた。
ヨシュアなどという人物は知らない。

「こんにちはヨシュア。キミは、どうしたの?何故此処にいるの?」

なんでもないようにそう問うと、少年は急に顔を強張らせて叫んだ。

「ユウギ、危険だよ!そんなところじゃあぶない!」
「え、何故?」
「だって、だって来るよ!また。いっぱいね空を覆い尽くすんだ!」
「そっか、それは危険だね。」

何を見ているのだろうか。
ヨシュアの目は見開かれ、怯えている。
唇は真っ青になり、口は動いているが言葉はなかった。

遊戯はランプを机に戻し、今度はそっと、壁を背にうずくまっている少年の下へ歩み寄り、
そっと手を伸ばす。

「じゃあ、安全なところへ行く?」
「ダメだよ!」
「何故?」
「だって、待ってるんだ!約束したんだ!」
「誰を?」
「ママだよ!」
「ママ?」
「うん。なのに、嫌だ!さっきから来るのは兵隊ばっかりだ!」
「兵隊?」
「キミ、知らないの?ぼくは知ってるよ、パパが教えてくれたんだ。
戦車とか戦闘機でカイバなんとかって人が、
それでボクらを皆殺しにする気なんだって!
兵隊はみんな、ボクらを殺そうとしてるんだって!
だから、ママと一緒にこの国を出るんだ!」
「そっか・・・それでママと待ち合わせてるんだね。
でも、ママが来ないの?」
「うん・・・。」
少年は寂しそうに俯いた。


「じゃあ、ボクが呼んであげるよ。」


遊戯は数歩下がって、
それから何かをボソボソと唱えた。
だがそれは、後ろに居た城之内たちにはさっぱり聞こえず、
ただ遊戯の腕の動きに応じて、彼の足元から白い文様が表れたことだけが理解できた。

白い線は淡く光、
部屋は電気などないのに、優しい光に包まれる。

「・・・陣・・・。」
思わず杏子が呟くと、アテムは小声でそうだと言った後、
「時空が歪む。」
と呟いた。

空気がうねる。
それから天井に淡い明かりが姿を現し、
遊戯の体へと、そっと降りてゆく。

それが遊戯の体へと全て入り込んだ瞬間に、
細い体はよろめき、膝をついた。

思わず叫びそうになった城之内は杏子の一撃をくらい黙り込む。

俯き、少し苦しそうな仕草を見せながら、遊戯は目を瞑ったままで、
陣の中で優しく照らされていた少年は、
不安げな顔をして、遊戯の傍へと恐る恐る近寄ってゆく。

「ねぇ、ユウギ、大丈夫・・・?」

それに応じず、黙り込んでいた遊戯が、漸く呟いた言葉、声。

「ジョッシュ・・・。」

それは遊戯のものではなかった。
優しい、女の声・・・?

ゆっくりと上げられた顔、それは優しく、
目は愛でるように笑っていた。

「ママ・・?」
「ジョッシュ、ゴメンね・・・?」
「ママ・・・ママ!!」

少年は駆け寄り、遊戯にきつく抱きついた。

見た目はどう見ても海馬の弟と遊戯である。
だが、それはヨシュアという少年とその母であった。

「ママ・・心配したんだよ。」
「ゴメンね・・・でも、もう大丈夫。1人じゃないからね。」

ママと、いきましょう?

「うん!」

少年は、笑った。
その瞬間に、モクバの体から白い光で溢れ出て、それは人の形を成した。
それは、失った肉体が持っていた、少年の姿であった。
それと繋がるようにして、遊戯の体に入った光もまた抜け出てきて、
女の姿をなし、それは母親なのだろう。
二人はよく似ていた。

『ご迷惑をお掛けしました。』
『ありがとうユウギ!ママと会えたよ!』
「うん。よかったね!お気をつけて。」
『はい。』

いきましょう?ジョッシュ。

去る母に手を引かれ、少年は楽しそうに笑いながら、
一度振り返り、遊戯に手を振った。
『バイバイ、ユウギ。』
「うん。ヨシュア。元気でね!」

遊戯はモクバの体を抱えたまま、手を振り返して、
2人の後姿を見送っていた。
彼等の姿が、天へと昇りきるまで。

すっかり光が消えると、
それに連なるように、床に浮かび上がっていた文様も消えて、

小さな体は、少年の体を庇うようにして倒れた。

「相棒!」

アテムは、駆け寄ろうとするついでに海馬へと指で合図を送り、
海馬もまた弟の身を案じ駆け寄った。

遊戯の体を抱きかかえると、遊戯は大きな瞳を半分だけ開いて、アテムを見ていた。
「相棒?大丈夫か?」
「うん・・・こんなに疲れちゃうのは、久しぶりなせいかな・・・。」
「そうだな。暫く休んだ方がいい。」
「うん・・・。」

そしてそのままゆっくりと瞳を閉じた。


一方。

「モクバ!!」

兄は必死だ。
そうだ当然だ。
その必死さがなければ、助けることは出来なかったのだから。

「モクバ、目を覚ませ!!」
頬をペチペチと叩き、何とか弟の瞳が開かないかと躍起になっていると。
「に、にいさま・・・??」
声がする。
「モクバ!」
眠そうな声。
「あ・・・兄サマ・・・お帰りなさい・・・。オレ、眠くなっちゃったみたいだ・・・。」
「モクバ!!」

それが弟であることはすぐにわかった。
だが、モクバは再び瞳を閉じて、反応を示してはくれない。

「アテム!どうなっている!!」
「落ち着け海馬。」
「落ち着けるとでも思うのか!?」
「モクバは、3週間も他人に体と脳をのっとられていたんだ。
疲労が溜まるに決まっているだろう?」
「後遺症が残るなんてことはないだろうなッ!」
「子どもは柔軟な生き物だ。2日も眠れば元に戻るだろう。
ただ、安静にして精神的な疲労の回復には気を使ったほうがいい。」
「そ、そうか・・・。」

その時の海馬は動揺していた。
犬猿の仲たる城之内にそんな姿を見せれば、いい弱みになったのだろうが。

「城之内!ねぇ城之内!ちょ、ちょっと確りしてよ!!」

霊を見たという現象に、城之内は失神していた。


「モクバを早く休ませた方がいい。ついでに相棒休ませたいんだが。」
「ああ、モクバは部屋で寝かせる。遊戯は俺の部屋を使えばいい。」

丁度その時に、さっき倒れていたメイドの手当てが終わったらしい数人がやってきていたので、
もう無事に済んだことと、
居間に何か飲むものでも用意するよう命じてから、アテムと共に眠る二人を連れて、
部屋へと向かった。





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