Ep.2-02
担任は遊戯を紹介すると職員室へ配布物を取りに行った。
無論、教室は騒がしくなる。
「城之内君と同じクラスで助かったよ。」
「俺もだぜ。あ、紹介しておくと、」
アテムの前に座ってるのが真崎杏子で、
その前に座ってるのが本田ヒロトで、遊び仲間ってとこだな、と紹介する。
遊戯はヨロシク、と笑顔を振りまいて、
アテムとは反応が全く違う。
本田が不思議そうに2人を見比べている。
「こんなに似てて、単なる血縁なのか?」
「ああ。まぁ、よく言われるけどな。」
「でも、なんか、何かが違うわよね、二人。」
「ボクのじいちゃ」
遊戯がそう口を開くと、
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど
という轟音と共に、
悲鳴にも似た叫び声が、廊下の向こうから轟き響き、
教室を通過していった。
生徒のせいではない。
教室は一瞬しんと静まり返った。
暫くして再び雑音に変わる。
流石のアテムも驚いた様子で、廊下の方を見ていたが、
遊戯は眉を潜めていた。
「あ、アテム、遊戯、驚いた?っていうか、知ってる?
この学校、こういう事が多いのよ。」
理由はわからないんだけどね、と杏子が説明してくれる。
彼女の情報は基本的に城之内と変わらなかったが、
それは城之内が杏子から情報を得ているからだった。
新しいこととしては、教師の中にもノイローゼになった人がいるということと、
死者は出ていないということだった。
ただ、重症を負った者は多数いて、まだ入院中の者も少なくは無い。
また治った者も多くが学校を去ったという。
「何でこんな事になっちまったんだろうなぁ。」
「全く、ついて無いぜ。隣のクラスのコクラノとかいうのも全然役にたたねぇしな。」
「コクラノ?」
アテムが珍しく反応を示すと、杏子は考えたくも無い、といった様子であったが話してくれた。
「学校としても、何とかこの状況を打開しようとして、
何でも名の有る陰陽師の血を受け継ぐ生徒を呼んだのよ。一応陰陽師らしいんだけどね。
一応、効果は無いわけじゃなくって、怪異現象が一応収まるんだけど、
これが一向に減らないのよね。」
「陰陽師・・・。」
「ほら、マンガとか映画で話題になる、あれよ。」
丁重な説明を断ることも出来ず、アテムと遊戯はそれを最後まで聞いていたが、
聞き終わると、プロの立場から検討が始まる。
「相棒、どう思う?」
「えー?うーん・・・。ボク、医務室からくる時、一寸図書館を探して校舎をまわってみたんだけど、
鬼門には何も見つからなかったよ。そのコクラノって人が、どの位の人なのか知らないけど、
防ぐっていうよりは、倒すのが専門なのかな?」
「相棒、図書室なんて行って来たのか。」
「うん。何か原因があると思うんだ。図書館なら何かあるんじゃないか、っていうから・・・。今、調べて貰ってる。」
「まぁ、原因がなければこんな事にはならないだろうな。」
そういってアテムは周囲を見渡した。
恐らく城之内や杏子には見えないものを見ているのだろう。
城之内は恐る恐る聞く。
「なぁ、なんかいるか?」
「いや、これと言って特に居ないな。」
「まじで!」
喜んでいると、杏子はコソコソしているのが気に入らないのか、問いただしてくる。
本当なら、「百人力だぜ!」と得意げになりたいところだが、
隠しているのかも知れない。
それで宥めすかすつもりだったのだが、
別にそこまで真剣にかくしているわけでもなかったらしい。
「別に隠してるわけじゃないよ。」
「正確に言えば、隠したいのは隠したいが、隠し切れないだろうな、ってところだ。」
と、正直に言った。
自分たちが、怪異現象解決のために呼ばれたのだ、と。
「え、ほ、本物なの?」
「俺が保証するぜ!」
「城之内の保証じゃ、怪しいぜ。」
「まぁ、隠せないとは分かってるが、出来るだけ内密にして貰いたい。」
3人はそれを快諾してくれたので、アテムは安堵した。
知れ渡らなければ、遊戯が、彼の望むような生活をできるかもしれないのだから。
だが、そうは行かない。
怪異にまみれた学校である。
蛍光灯が、“じいいいいぃぃ”と妙な音をならし、
今まで何の問題もなく光っていたのに、急に点滅しはじめた。
それに気をとられていると、どこからともなく、カツカツという音が聞こえて、
ダンッと窓ガラスにボールがぶつかった音がする。
やばいやばい!と騒ぐ生徒や苛立つ生徒も居たが、
多くのものはうんざりしたように、
身を寄せ合い伏せた。
早く収まって欲しいという願いとは裏腹に、
黒板の横にある花瓶が派手な音を立てて砕け散った。
幸い近くに人が居なかったためけが人は出なかったが、
教室内は気持ちの悪い静けさに包まれる。
正直、今は仕事をする気が起きないが、
何もしないのも問題だ。
アテムが遊戯に目配せすると、遊戯も苦笑いで返す。
机の下でそっと指を二本立て、簡単ではあるが、印を切ろうとした。
「この教室から殺気がするぞ。」
と、
後ろのドアから
いかにも胡散臭い男。と、その後ろには取り巻きらしき女子生徒たち。
これにはアテムもあっけにとられた(遊戯は見入っている)。
男は教室を見渡すと、魑魅魍魎が疼いている!とか何とか叫ぶ。
教室にいた物好きそうな女子が「狐蔵乃様!」と駆け寄り、払うように懇願した。
だが、取り巻きはなんだか偉そうにしていて、魑魅魍魎程度に狐蔵乃様が出る必要は無いとでも言いたげだったが、
狐蔵乃と呼ばれた男は僅かに鼻の下を伸ばしながら、
それが務めだ、と言い放つ。
「臨!兵!闘!者!皆!陣!列!在!前!」
と、気合を入れた声で言いながら、なにやら印を結んでいるのだが、
アテムは最早直視できず、俯き、肩をひくひくさせている。
遊戯は、といえば、言葉を失っていた。
「これでこの教室は我が印に守られた。安心していいぞ。」
「あ、ありがとうございます!」
「しかし、肩が凝ったな・・・。」
「私でよければ、肩たたきをさせてください!」
「それはそれは、ではその言葉に甘えさせて貰おうかな。」
なんという。
その後女子生徒は、取り巻きに混ざり隣の教室へ去っていった。
ドアがしまるなり、アテムは顔をあげ、クツクツ笑いながら
「おもしろいものをみたな。」と感想をもらす。
「あれがコクラノよ。」
「ただの女たらしにしかみえねぇよなぁ。」
と、城之内が本音を言えば、ほかの女子が「何よ、狐蔵乃様のお陰で無事だったのよ。」と反論が出る。
城之内が嫌な顔をしたが、
「まぁ、こんな状況じゃ、何にでもすがりたくなるさ。」
と本田が宥めた。
「アテム、遊戯、あれって、どうなの?」
まだ実力を見ていない杏子は、アテムたちの能力も信じられないで居たが、コクラノよりはマシだと本能的に感じた。
「いや、あれは、酷いな。」
「色々凄かったね。肩とか。」
「肩も酷かったな。アレは凝るだろうな。」
「肩?」
「えーっと、城之内君はゲームとかやる?」
「おう、っても、人んちでだけどな。」
じゃあ、わからないかなぁと言う様子であったが、
「ゴーレムみたいなやつっていって通じる?」
「ああ、岩石の巨兵みたいなやつだろ?」
「城之内君は、M&Wやるのか。」
アテムが食いついた。
「こいつ、よわっちくて、町内大会で8位とかだったよな。」
「う、うるせぇなぁ。」
「へぇ・・・ボク大会とか出たこと無いよ。出る気もあんまりないんだけどね。」
「なんだ、遊戯達もやるのか?」
「ああ。」
で、なんの話だったか。
「そうそう、あの岩石の巨兵みたいなのが、あの人の肩に乗ってるんだ。」
巨、巨兵?
城之内は想像する。
しかも想像に出てくるのはソリッドビジョンの大きさそのままだ。
「お、重てぇ・・・。」
「でしょう?あれじゃあ、肩凝るよね。」
大変だろうなーと完全に他人事の遊戯。
「で、九字だったな。」
「九字って、あの『臨、兵』とか言うやつでしょ?そもそもあれってなに?」
「あれは、魔よけの印だと思えばいい。」
「『臨める兵、闘う者、皆陣をはり列をつくって、前に在り』とかいうので、
悪霊とか物怪に向かって、こっちも戦闘員一杯いるんだから、無駄死にしたくなければ、来るなってことだっけ。」
「まぁ、大体はあってる。一応退治もできる・・・けどな、
さっきのあのマユツバは、印が違う。印っていうのは手の動きのことで、
形をとるだけで神仏の力が得られるっていうくらい重要なもんなんだが、
言葉と印が合って無いから、無効だな。」
無効という事は、
「まだ、いるの?その魑魅魍魎は・・・。」
「いないぜ。ここにははじめから魑魅魍魎なんて居ないからな。丁度通りがかっただけだ。」
「「「え?」」」
一般人3人は驚かざるをえない。
「でも、一応収まったよね。」
「ああ。それは退治したんじゃなくって、あのマユツバがつれて帰ったのさ。」
「お持ち帰り・・・?ってことは、あの生」
「彼は憑かれやすい体質みたい。それで憑いていちゃったんじゃないかな。それで肩が重いんだよ。」
成程、それで解決したようにみえるのか。
「完全にだまされてたぜ!」
「まぁ、見えないもんだからな。信じ易くなるさ。お前みたいなオカルトが苦手なら尚のことだ。
それにしてもよー、未だ戻ってこないのかよ。」
今日は始業式だ。
プリントを配り、掃除をすればさっさと帰る事ができる素敵な日だ。
「先生に何かあったとか?」
「職員室手前で滑って頭でも打ったんじゃね?」
「城之内!」
幾ら敬意のもてない相手であっても、流石にそれは不謹慎である。
気にはなるが、行くほどのことではない。
「職員室のドアが開かないみたい。未だ来ないと思うよ。」
と、
遊戯はニコニコ愛想のよい笑顔を振りまきながら笑っていた。
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