甘い微糖
好ましいというべき。
不思議なものだ、
1つ共通点があるだけで、
一緒に行動している。
ある種高嶺の花だと思っていたふしがあるだけに、
バクラは遊戯と一緒に歩いていること自体が妄想のような気がしてならない。
「(ソリッドビジョンじゃねぇよなぁ・・・)」
ネクロフィアがそこに居た方がよっぽど自然な気さえするのだ。
だが、ネクロフィアはソリッドビジョン。
あっちはどっかのデースが作った想像の世界の想像上のもの。
反対に遊戯は現実のものだ。
いやいや、それすら疑わしくなる。
良く見てみろ、
どこの絵本から飛び出してきたんだ?と思わせるのは何が原因だ?
例えば、顔。
バクラにとって特にお気に入りな部位なのだが、
高校生でこれってどうなんだ?
まるで中学生から時が止まってしまったような、
だがそれは顔だけじゃない、心までだ。
蝶が飛んでたらついていってしまいそうとでも言えばいいのか?
しかも、人の気持ちは解るのに、他人からの気持ちには疎いって、
どこのヒロインなんだか・・・。
そう、こう例をあげてわかるように、
遊戯はまるで現実的でない、作られたようなキャラクターだ。
こんなある意味理想像が、現実に居るものか?
寧ろ、実は映像で、
触れることが出来ないとか、そういうんじゃないだろうな!?
と、さえ思える始末。
だが、バクラにはそれを確認する手段がない。
城之内あたりであれば、髪をグシャグシャとかき回してやるのだろうが、
生憎そこまで仲良くはない。
なんせ、まだ話し始めて一ヶ月弱。
せいぜい、
2人だけで一緒に購買まで買いに来るのが限界だ。
以前のように、会話がなく困るということはないのだが、
お陰で遊戯の魅力というものがより一層露になり、
バクラは二度も同じ人物に口説き落とされた気分だ。
「(口説き落とすのは、俺の仕事だろ?)」
こう、2人の時間が出来る度に何かしら行動を起そうと思うのだが、
中々上手くいかない。
「寒いけど、何か喉は渇くよねー。」
「そうだな。理由は知らねぇけど。」
お陰で一緒に買いにこられたのだから、渇く喉に感謝せねばなるまい。
それにしても
「(にこにことまぁ、こっちの都合も考えろよ・・・。)」
笑顔を振り撒く姿を見るたびに、焦る。
何せ、知っている限りでは、
4,5人の人間、それも全員男が、遊戯を狙っているのだ、
楽しんでいる場合じゃない。
何で、男ばかりなのか、わかるようで解らない。
ただ、可愛いからか・・・?
自販機の前まで辿り着くと、
背の低い遊戯は僅かに見上げる形になる。
「(自販機に嫉妬してどうすんだ、俺は・・・。)」
「バクラ君は、何飲むの?」
「あー?珈琲。」
「みんな、珈琲とか、良く飲めるよねー。」
ボクは苦いの苦手だもん、と拗ねるので、
「遊戯がお子様ってことだろ?」
と冷やかす。
より拗ねてくるのだが・・・犯罪級だ。
適当に微糖の珈琲を選んで買っている間、遊戯はココアを買ったらしい。
暖かい缶でぬくぬくしている。
「缶ってさ、結構熱いよね。」
「そうだな。どっかには“ぬるい”ってのがあるらしいな。」
「ホントに?いいなぁ。ボク、熱いの飲むの苦手なんだよね。」
「でもあれだろ、スープとか出されると熱いって解ってんのに、
真っ先に飲んで火傷とかするんだろ?」
図星だったらしく、
また拗ねてくる。
可笑しくってつい笑ってしまう。
「解り易い性格してんなぁ。やっぱりまだお子様だな。」
お子様なところがいいのに、
遊戯は早く大人になりたいらしい。
「お子様じゃないぜ!」
語尾にぜをつけたところで、迫力はないし、
可愛い顔で睨まれたって全然威嚇にもならない。
バクラはまたそれがおかしくて、笑いながら缶を開ける。
「香りが違う!」とかなんとかいう文句をつけて売っているだけのことはあって、
空けた瞬間に一応、珈琲の香りがする。
微糖といっても、そこそこ甘いのだが、
「苦くないの?」
と聞いてくるものだから、
「凄く甘い」と答えてやったのだ。
何時もの癖なだけで、他意はなかった。
お子様認定を打破したい遊戯は、
珈琲を飲むことでちょっと大人びてみたい。
「飲んでみていい?」
普通に聞いて来る遊戯に、何のことなく缶を差し出して、
遊戯のそれを飲んだ反応を考えるだけで笑いそうになるのだが、
その前に気づいた。
遊戯が口をつけたところは、
自分が飲んだところだ。
当然だ、缶なのだから、
同じ場所から飲むほかないのだが、
そんなことすっかり忘れていて。
苦ーい、と渋い顔をする遊戯を直視することも出来ず、
不器用に笑う他無かった。
「嘘つきー、全然甘くないよ。」
遊戯は苦さを中和すべく、
珈琲はバクラに返して、
自身のココアを開けて飲む。
バクラの元に帰って来た珈琲。
それは、バクラが遊戯に渡す前に持っていたものとは違う。
外見に変化はない。
中身の量など殆ど変わっていない。
それでも確かに違うのは、
遊戯がそれに触れたということだ。
あの、非現実的で、実態なのかも疑問なほどの遊戯の、
その子どもみたいな唇が。
バクラの気など知らずに、
遊戯は甘いココアを満足そうに飲んでいる。
いっぽう、突然神聖味帯びてしまったバクラの缶。
どうする?
中身を捨てるか?
いや、遊戯に何と言われることか。
勿体無いので誰かにあげる?
まさか、こんな貴重なものを、敵である奴等に渡すなど。
全てのワガママを通すことは出来ないというのなら、
選ぶは1つだけ。
バクラは、
中身を一気に飲み干した。
無論、缶なのだ。
飲む場所は一箇所しかない。
微糖の珈琲。
甘いといったが、実はそこまで甘くなかった微糖の珈琲。
でも、
零れた感想に嘘はない。
「・・・やっぱり甘ぇよ。」
それはきっと、遊戯が飲んでいるココアよりも、ずっと甘い。
そしてバクラは遊戯が実在の存在だと理解できた。
教室に戻るまで、
バクラは何もなかったかのように、遊戯と話をしつつも、
俄かに、
口に広がった甘さの余韻に浸っていた。
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書いててもうわからない。
コメで頂いたネタです。
巧い具合にかけないなぁ(いつものことですが。)
拍手お礼のバク表よりは、進歩したらしいです。
なにやら初々しいバクラの需要はそこそこあるらしい。
だが、初々しいバクラが書けないという罠
(08.03.06)AL41